パーフェクト ワールド

何気ない普段の生活や家族との触れ合いにもっと感謝をするべきと感じさせる映画

1993年製作 アメリカ 138分

監督

クリント・イーストウッド

キャスト

ケヴィン・コスナー クリント・イーストウッド T・J・ローサー ローラ・ダーン

撮影ロケーション・情景

60年代アメリカテキサス州テクサーカナ

パーフェクト ワールドのあらすじ

1960年代初期のアメリカテキサス州が舞台。車泥棒の罪で服役していたブッチ(ケヴィン・コスナー)は同刑務所に収監されていたテリーと一緒に脱獄を図り、途中押し入った民家のひとり息子フィリップ(T・J・ローサー)を人質にとり逃亡する。しかしブッチとテリーは性が合わず、ブッチは途中、フィリップに危害を与えようとしたテリーを銃殺してしまう。

自分を助け正義感溢れるブッチに対し、母子家庭で育ち、父親の存在を知らないフィリップは犯罪者であるブッチにどこか父親像を重ね合わせる事でブッチに親しみを感じ逃亡の手助けをする。

一方ブッチもフィリップと関わりを持つことで父親がいなかった自身の寂しさをフィリップの境遇と重ね合わせ心を開いていく。

そんなブッチは過去に一度だけ父親から絵葉書をもらった事がある。ブッチはそれを今でも大切に持っている。そこに書かれていたのはアラスカから届いた父からのメッセージだった。そしてブッチはフィリップを連れてアラスカを目指す事を決意する。

パーフェクト ワールドのレビュー・感想

父親を知らないフィリップに父親の代り役をしようとするブッチの優しさ

フィリップを人質にとり逃亡を図るブッチですが、自身の子供の頃の父への寂しさがフィリップの父親の存在を知らない境遇と重なり合って、今までフィリップがしたくてもできなかったあらゆる体験をブッチは父親の代り役をするかのようにフィリップに経験させ教訓や真の生き方を教示していくんですね。

ハロウインでの振る舞い方、感謝を持つ心、家族を守ることの重要性、あらゆることをブッチはフィリップに教え込んでいく。このあたりは犯罪者らしからぬ極々普通の優しい父親の顔が垣間見れます。もし、ブッチが犯罪者でなければフィリップの良き父になることが出来たかもしれない。いや、そうなって欲しい。そうすればフィリップは父親の強さと愛情を感じながら違った人生を歩む事も出来ただろうと思います。

僕たちは普段マンネリ化した生活に変化を求め、ついつい不満や愚痴を零してしまうもの。しかしこの映画を観るとそんな普段の何気ない生活や家族との触れ合いに、もっと感謝をするべきだし、それができる事を幸せに思わないといけないという事を痛感させられます。

みんな元気

「親と子」どちらの立場から見ても「家族の幸せは何か」を考えさせられる映画

2009年製作 アメリカ 95分

監督

カーク・ジョーンズ

キャスト

ロバート・デ・ニーロ ドリュー・バリモア ケイト・ベッキンセール サム・ロックウェル

撮影ロケーション・情景

アメリカ東部郊外 ニューヨーク・ソーホー コロラド州デンバー イリノイ州シカゴ ネバダ州ラスベガス

みんな元気のあらすじ

電線の部材となるポリ塩化ビニール製作工場で永年働き定年を迎えたフランク(ロバートデニーロ)は最愛の妻を亡くしおとこやもめの状態に。そんな中唯一の心の支えとなっているのは独立し散り散りに暮らす子供たちへの想い。

ある日、週末に帰省することになった子供たちを喜ばせるために、スーパーで上等の肉やワインなどの食料品を大量に買い込み、バーベキューグリルを組み立てるなどその準備に精を出すフランク。しかしニューヨークで画家を志す次男デイビットがメキシコで麻薬事件を引き起こしその対応に子供たちは追われ「仕事が忙しく急遽帰れなくなったと」フランクに嘘をつく。子供たちに会えないと分かりぽっかりと心に穴が空いたフランクは「ならばこちらから」と自分が子供たちに会いに行く事を決心する。

肺線維症を患っているフランクは飛行機に乗ることができず、鉄道、バスを乗り継いで子供たちの元へ。ニューヨークで画家をしている二男のデイビット、シカゴの広告代理店で働く長女のエイミー、オーケストラの楽団で活躍する長男ロバート、ラスベガスでダンサーとして活躍する次女ロージーのもとを次々と尋ねて行く。

みんな元気のレビュー・感想

ロードムービーならではの情景が楽しめる

舞台背景が一都市集中型でなくロードムービーのため、旅の途中アメリカの様々な風景を楽しむことができます。

アメリカの住宅事情

男やもめのフランクではありますが、かなり潔癖症で綺麗好き。アメリカ映画でよく出てくる一般住宅ですが、清掃が行き届いており、男やもめのいわゆる“不潔さ”はみじんもありません。優に100坪以上はあるであろう庭の芝生や植木の手入れも怠らず、これがアメリカの中流家庭の暮らしぶりなのかと感心させられます。

一方、長女のエイミーの住宅はおそらく数百平米はあろうかと思われるモダンな大邸宅。日本でいえば超売れっ子芸能人や一流企業の社長でもなき限り到底住めないであろう物件。もし自分の娘がこんな大豪邸に住んでいたら「お前こんな大豪邸建てて大丈夫か?」と心配するところではありますが、この辺りの身分不相応さを感じさせないところがいかにもアメリカらしいです。

「親の目」「子供の目」どちらの目線から見ても家族の幸せは何かという事を考えさせられる映画

親というものは誰しも子供の幸せを願うもの。こうなって欲しい・・・こうあって欲しいと願うものですが、必ずしも親の思うようにはならない。子供は子供で自分なりの生き方や世界観をもっているし、決して親の押し付けで人生を歩ませてはいけないと思います。

でも、親というのは子供がいくら成長しても、小さいころの面影が写りこんでしまうものなのでしょう。そんなさりげない親心の葛藤を地味な演技ではありますが見事に醸し出すあたりはさすがデニーロは上手いですね。

「親の目」そして「子供の目」、どちらの立場からみても家族の幸せは何かという事を考えさせられる映画です。

マディソン郡の橋

イーストウッド監督の感性と素晴らしい脚本が主人公の心の奥底をきめ細やかに描く

1995年製作 アメリカ 134分

監督

クリント・イーストウッド

キャスト

クリント・イーストウッド  メリル・ストリープ

撮影ロケーション・情景

1960年代アメリカアイオワ州マディソン郡  アイオワ州の片田舎

マディソン郡の橋のあらすじ

母フランチェスカ・ジョンソン(メリル・ストリープ)の死去に伴い、遺言信託の手続きをするために実家を訪れた長男のマイケル(ヴィクター・スレザック)と長女キャロリン(アニー・コーリー)はフランチェスカが「死後、遺体は火葬にし、遺灰をローズマン橋に撒いてほしい」と遺言を残している事を知る。そして遺品の中にあった母の日記とその母への想いを綴ったナショ・ジオ(ナショナルジオグラフィック)のカメラマン、ロバート(クリント・イーストウッド)の手紙をみつけ当時の二人の激しい恋を知る事に。

1965年、子牛の品評会に出かけた夫リチャードと子供たちは4日間家を留守にし、ジョンソン家はフランチェスカ一人に。そこへローズマン橋を撮影しに来たカメラマン、ロバートが道に迷い、ジョンソン家を通りがかった時に庭にいたフランチェスカに道を尋ねる。家事もひと段落し、暇を持て余していたフランチェスカは、口頭での道案内ではラチが開かないと判断し、ロバートの車の助手席に座り橋まで案内をする。

道中、フランチェスカに煙草をすすめたり、野の花をつんで手向けたりする優しいロバートの人柄にフランチェスカは好感を抱き夕食に招待する。そこでフランチェスカは、まじめではあるが何の変哲もない夫リチャードとは何か違うものを感じ始めていた。

マディソン郡の橋のレビュー・感想

監督クリント・イーストウッドの感性と視点

数十億ドルを使うような派手なセットはひとつもなく、製作費もわずか2,200万ドル、製作期間が42日間というタイトな状況下で作られた映画ではありますが、監督であるイーストウッドの感性と素晴らしい脚本が主人公の心の奥底をきめ細やかに描いています。

二人が過ごすことのできる最後の4日目の夜二人は結ばれますが、これまで過ごした二人の心の視点が鮮明に描かれているせいか、不思議と不貞さを感じません。

そして「一緒に町を出よう」というロバートの言葉にフランチェスカの心は葛藤しますが「今の気持ちは長続きしない」「夫を捨てたら夫はひとりでは生きてゆけない」「16歳の娘のこれからの人生に悪い影響を与えてしまう」という言葉で理性を保とうとします。

家族を捨てることができないと言い放ったフランチェスカに「これは生涯に一度の確かな愛だ」という言葉を残しロバートは去っていくのですが、終盤、夫リチャードと買い物に来たフランチェスカを、ロバートが雨に打たれながら立ち尽くすように見つめるシーンがあります。

それにはフランチェスカへの心のけじめをつけようとするロバートの切なさと、同様に揺れ動くフランチェスカのロバートへの想いがヒシヒシと伝わってきます。しかし、それが叶わぬ現実であるというフランチェスカの心の葛藤が、夫の運転する車のドアノブに手をかけ開けようとするも、躊躇してしまうというシーンに見事に表れています。

不倫に正当性を唱えるつもりはありませんが、たとえ不貞ではあっても誰かを真剣に愛したことのある人ならば、この4日間の時の流れの無常さに同情を感じる人もいるのではないでしょうか。

ショーシャンクの空に

誰も想像つかぬであろう綿密な脱獄計画

1994年製作 アメリカ 143分

監督

フランク・ダラボン

キャスト

ティム・ロビンス モーガン・フリーマン ウィリアム・サドラー ボブ・ガントン

撮影ロケーション・情景

1940~1960年代アメリカメイン州 バクストン (オレゴン州) オハイオ州立少年院(ショーシャンク刑務所全景)

ショーシャンクの空にのあらすじ

ティム・ロビンス演じる銀行の若き副頭取、アンディ・デュフレーンは、妻と間男を殺したという冤罪でショーシャンク刑務所に収監されてしまいます。そこで出会ったのが刑務所内での“調達係 ”のレッド(モーガン・フリーマン)。

アンディはレッドに鉱物採集の趣味を復活させたいと言い、ロックハンマーを調達してもらいます。しかし鉱物採集というのは詭弁で、無実の罪で投獄されたアンディはそのハンマーを使って脱獄を計る事を決意します。

ショーシャンクの空にのレビュー・感想

千里の道も一歩から

この映画の観どころは、何んといっても誰も想像がつかないであろう綿密な脱獄計画です。目標を決め、行動を積み重ね、少しずつではありますが成功に向かって突き進む様相はまさに男のロマンを感じます。それと同時に希望を持つことの大切さ尊さをこの映画は教えてくれます。(やることは非合法ですが)

日々わずかな進歩であっても、着実に努力を重ね、いつか必ず成し遂げてみせるという自信と強さがアンディの表情によく表れています。世の中には目標をもっているけれど中々結果が出ないと嘆く人、何らかの壁に立ち塞がれ行動を躊躇してしまっている人もいるかもしれません。そんな人にぜひ、観て頂きたい秀作です。

二人の男の友情

殺人(冤罪ではありますが)→ 刑務所 → 脱獄というシナリオなので冒頭から毛嫌いし観るのをやめてしまう人もいるかもしれませんが、最後にアンディとの約束をレッドが果たしに行くシーンは二人の固い友情と優しさに満ち溢れ、爽快な気分で観終えることができる映画です。

アメリカン・ラプソディ

親子の絆を再確認したくなったらぜひ観るべき映画

2001年製作 アメリカ 108分

監督

エヴァ・ガルドス

キャスト

ナスターシャ・キンスキー スカーレット・ヨハンソン トニー・ゴールドウィン エミー・ロッサム

撮影ロケーション・情景

1950年代冷戦下のブダペスト(ハンガリー)、アメリカ亡命、ハンガリー郡部、60~70年代ロサンゼルス、70年代ブダペスト(ハンガリー)

アメリカン・ラプソディのあらすじ

1950年共産独裁体制のハンガリーから逃れるためにアメリカに政治亡命したある一家の実話です。

この一家には生後間もない娘ジュジーがいるのですがアメリカへ渡るための手続きに手違いが生じ、ジュジーを一緒に亡命させることができず、一時的に里親に預けハンガリーに置いてアメリカへと向かいます。無事にアメリカへと亡命を果たした一家は自由を手に入れますが1人残したジュジーのことだけが気がかりでなりません。

結局一家はジュジーを渡米させることができないまま時が流れ、ジュジーが6歳になった頃、八方手を尽くしアメリカ赤十字社の力を借りてジュジーをハンガリーから呼び寄せることに成功します。しかしやっと再会した時には6年もの年月が経ってしまっていたためジュジーの気持ちは複雑です。

いつかは別れを告げなければならない事は解っていながらも、本当の娘のように6歳まで溺愛し育ててくれた優しい農夫婦をジュジーは真の両親と信じて疑わず、本当の両親に会えたのにもかかわらず「ハンガリーに帰りたい、パパとママに会いたい」と悩み続けます。

そんなジュジーに父は「お前が大きくなって、その時にまだ同じ気持ちでいるならハンガリーに帰ってもいい。ただそれまでは実母をママと呼んでほしい」と告げます。そしてジュジーが16歳になった時、それが現実となり故郷のハンガリーに里親と再会する旅に出るのです。

アメリカン・ラプソディのレビュー・感想

この映画を観終わって知ったのがこの作品の監督エヴァ・ガルドスという人がジュジー本人であるという事。幼少期のジュジーがたった一人飛行機に乗ってアメリカに旅立つ場面があるのですが、ジュジーにとって、どんなに不安で心細かった事か、これが自分の子供だったらと思うと涙が止まりません。

そんな辛い思い出が蘇るであろうに、実体験を映画にする事は心情的に簡単ではないはず。どんなに悲しい記憶でも仕事とはいえ目をそむけないで再現しなければならない中、いったいどんな想いでこのシーンを撮っていたのでしょう。最後のクレジットと一緒にに映し出されるジュジーと母親の再会を果たした時の実写真が一層涙を誘いますね。

赤ん坊を祖国に置き去りにしてしまった親と、本当の娘のように育てた親。どちらの立場に立たされたとしても双方の気持ちが痛いほど分かるいい映画です。親子の絆を再確認したくなったらぜひ観て欲しい作品のひとつです。

最高の人生の見つけ方

死ぬ前にやり残したことを実現する“”棺桶リスト”の旅

2007年製作 アメリカ 97分

監督

ロブ・ライナー

キャスト

ジャック・ニコルソン モーガン・フリーマン ショーン・ヘイズ ビヴァリー・トッド ロブ・モロー

撮影ロケーション・情景

棺桶リスト、ロサンゼルス、スカイダイビング、プライベートジェット、アフリカ、エジプト、インド、ヒマヤラ、香港、フューネラル・ホーム

最高の人生の見つけ方のあらすじ

共に死を宣告された二人の男が、死ぬ前にやり残したことを実現するために冒険の旅に出るという物語。妻、子供を養うために真正直に働き続けてきたモーガン・フリーマン演じる自動車修理工カーターは、ある日突然妻からの病院検査の報告を受け自分が病に侵されている事を知る。また一方、ジャック・ニコルソン演じる大富豪エドワードも、自身の経営する病院経営に伴う裁判の途中吐血し、エドワードが経営する病院に入院することになる。その同じ病室で二人は出会います。

共に死を宣告された二人の男が、死ぬ前にやり残したことを実現するために冒険の旅に出るという物語。妻、子供を養うために真正直に働き続けてきたモーガン・フリーマンが演じる自動車修理工カーターにある日突然妻からの病院検査の報告を受け自分が病に侵されている事を知る。また一方、ジャック・ニコルソン演じる大富豪エドワードも自身の経営する病院経営に伴う裁判の途中吐血し、エドワードが経営する病院に入院することになる。その同じ病室で二人は出会います。

最高の人生の見つけ方のレビュー・感想

アメリカの葬儀と日本の葬儀の格差

映画終盤、先に旅立ったカーター(モーガン・フリーマン)の葬儀で、エドワード(ジャック・ニコルソン)が彼について思い出や彼の事を式壇で語るシーンがあります。 よくアメリカ映画ではこういったシーンを見かけますがアメリカの葬儀でこれを「シェア」というそうです。文字通り、故人の思い出を参列者が“共有”するというものらしいのですが、そこに集まった親しい人たちが式壇に登壇し、故人に対する思い出や感謝の言葉を語るのだそうです。そんな風に故人を偲び、いなくなってしまった事の悲しみや故人への感謝等、そうして、喜怒哀楽を出し合うことで、各々が新たなステップを踏む足がかりになるのだそうです。確かにこういう機会がなければ前を向いて生きようとする新しい自分を見つけられません。 エドワードが、カーターとの思い出を語るその姿には、残された己の人生を全うしようとする決意がよく表れています。その点を考えると、お経中心の日本の葬儀はそういったものが少し忘れられているような気がします。

格言「正直は一生の宝」

この映画の“肝”である「死ぬ前にやり残したことを実現する【棺桶リスト】」。そのリストに「世界一の美女にキスをする」という目標をエドワードは勝手に加えてしまうのですが、何不自由なく生きてきたようなエドワードにも永年埋める事のできない心の葛藤があってその「世界一の美女にキスをする」という目標を思いもよらぬ形で最後に成し遂げるシーンはとても洒落ていてジーンときます。 たとえ家族であっても(他人であっても)しばし人は些細なことで確執を作ってしまうもの。しかし原因はどうあれ、自分の気持ちに正直でいる事がいかにすばらしい結果をもたらすかという事をこの映画は教えてくれます。肝に銘じよう。「正直は一生の宝」。