キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

詐欺師から偽造摘発の権威に成り上がった男の実話を描いたスピルバーグの傑作

2002年製作  アメリカ  141分

監督

スティーヴン・スピルバーグ

キャスト

レオナルド・ディカプリオ トム・ハンクス クリストファー・ウォーケン エイミー・アダムス エリザベス・バンクス

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク アメリカの銀行 キャデラック パンアメリカン航空 両親離婚 小切手偽造 マイアミ アメリカの空港 FBI アストンマーチン フランス 脱走

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのあらすじ

1963年.フランク・W・アバグネイル, J(レオナルド・ディカプリオ)は父フランクとフランス人母ポーラと共にニューヨーク州郊外で暮らしていた。父フランクは文具店を営んでおりニュー・ロッシェルロータリークラブの永久会員でもあったが事業そのものはあまり上手くいっておらず資金繰りに苦慮していた。

ある日父フランクは息子のフランクジュニアを連れ紳士服店を訪れる。フランクジュニアに背広を着せ運転手をさせチェース・マンハッタン銀行に行くためである。これは運転手付のキャデラックで銀行を訪れ権威を誇示し、銀行からの融資を有利にするための作戦であった。しかし国税局とトラブルを起こしていた父フランクは銀行からの融資を断られてしまった。これにより経済的窮地に追い込まれ仕方なくキャデラックを売却する事にした。ディーラーで車を引き渡す際、ジュニアが「どうして車を持っていかれなきゃならないの?」と聞くと、父フランクは「持っていかれたんじゃない、売ったんだ。うまくやったよ。500ドルも得したぞ」と虚勢を張った。しかし

挙げ句の果てに一家は家屋敷を売り払い小さなアパートへ移らざるを得なくなった。情けなさに涙を流す妻ポーラに「少し狭いけれどいいアパートだ。お前の家事が減るよ」といって誑かした。このように父フランクは日頃から何かにつけ虚勢を張り人をたらし込む癖のある人物であった。

小切手との出会い

16歳の誕生日を迎えたある日ジュニアが自宅でパンケーキを焼いていると父フランクが帰ってきた。父が「何してる?」と聞くと「誕生日の夕食を作っている」とジュニアは答えた。「息子の誕生日にパンケーキじゃ祝えないだろう」とジョークをいいながら父フランクはプレゼントにジュニア名義の50枚綴りの小切手を渡した。自分の名前が書いてある小切手を嬉しそうに見つめながらジュニアは前途洋々の気分に浸っていた。この小切手との出会いが後に自身が引き起こす壮大な小切手詐欺事件の礎となる。

最初の詐取行為

住居を移転したことで学校も変わり、新たな学校でのある初登校の日、前学校の制服に愛着を持っていたジュニアはその制服を着てフランス語の授業に出席するが、場違いな格好をブラッドたち不良生徒らに冷やかされた。憤慨したジュニアは突如黒板の前に立ち自分の名前を大きく誇示し、「静かにしなさい。席に座りなさい」と制圧しその場を仕切った。なんとジュニアはその授業の代理教師に成りすまし自分をからかったブラッドを授業で吊し上げたのだ。途中で遥々やってきた本当の代理教師が現れるが、ジュニアは用無しと言わんばかりにその教師をあしらった。交通費をかけ、臨時教師をして報酬を稼ごうとした者に無駄足を踏ませたジュニアの最初の詐取行為である。

小切手の偽造

ある日ジュニアが家に帰ると家にはカズナーという弁護士が来ていた。父母の離婚を協議するためである。両親の離婚話に困惑し状況を把握しきれないジュニアにカズナー弁護士は父母のどちらに養育権をもたせたいかジュニアに署名を迫った。深い悲しみでそこにいたたまれなくなったジュニアは家を飛び出しニューロシェル駅からマンハッタンにあるグランド・セントラル駅まで向かおうとする。その際切符の購入は父から貰った小切手だった。ジュニアは残高のない自身の小切手を使いホテルを転々とするがその小切手はすぐに不渡りをだしホテルから追い出されてしまう。

この先どうしようとかと考えていたジュニアは小切手の偽造を思いつく。タイプで打った文字を切り貼りして名義を偽り最初の現金を手にする。この手口で様々な銀行を訪れるが「取引のない銀行の小切手は換金できない」と行員に断られる。それでも話をはぐらかせ、嘘八百の理由を並べ何とか現金をだまし取ろうとするが、そこに行員の上司が目の前に立塞がり換金は失敗に終わった。

パンナムパイロットの詐称

小切手の換金を拒否され続けるジュニアだったがある日街を歩いていると数人のCAを従えタクシーから降りるパンナムのパイロットを見かけた。ジュニアはその華やかでナイスガイな様子に一瞬で惹かれパンナムのパイロットになる事を決心し、父フランクにも手紙でその旨を記し、自分の健在ぶりを偽った。しかしそう簡単にパイロットに成れるはずもなく、ジュニアはこの時も詐取行為を犯すことになる。ジュニアは学校新聞の学生記者を装ってパンナム本社へ取材に訪れた。ジュニアはパイロットを取材し飛行ルート、勤務日程のスケジュール、社員証、連邦航空局発行のIDカードについてなど、徹底的に取材を行った。

その甲斐がありジュニアはパイロットから期限切れのIDカードを貰う。そしてジュニアはパンナムの制服購買部に電話をかけホテルに制服をなくされ次のフライトに支障をきたしているという嘘の電話をしパンナムの制服を手に入れる。ここでもジュニアは偽の小切手で決済しようとするが給与天引きになっているので必要ないと言われるとジュニアはほっとした様子でニンマリと笑みを浮かべた。以降、制服を身にまといパンナムのパイロットに成りすましたジュニアは意気揚々と街を歩き子供たちにサインを求められるほどの憧れの存在になっていった。心の高まりを抑えられないジュニアはこの時期再び父に手紙を書き「父さんが無くしたすべてを取り返してあげる」と告げた。

偽パイロットとしての初飛行

パンナムのパイロットに成りすましたジュニアはある日TWAのチェックカウンターで「デッドヘッド」(業務移動)という業界用語を耳にする。デッドヘッドとは航空会社のパイロットやCAなどが、業務における移動のために飛行機に乗客として搭乗する事で、知識がないため係員との会話がかみ合わないジュニアだったが係員の言うまま、マイアミ行きのTWAの便にデッドヘッドとして乗り込むことが出来た。ここでもパイロットと専門的な会話が交わされるがジュニアは当たり障りのない返答でその場を凌ぎジャンプシートに座った。

飛行機が離陸を終えジュニアが落ち着かない様子で機内を歩き回っていると美人で気さくそうなCAマーシに声をかけた。ジュニアはポケットから隠し持っていたペンダントをとりだし、マーシに「これ落とした?キミのじゃない?」とマーシの背後にまわりペンダントを彼女の首に飾付け彼女を口説いた。このペンダントをチラつかせる行為は過去にも銀行で女行員に小切手を換金させる際にも行っておりジュニアの常套手段であった。これは昔、父フランクが交渉事をする際に人の懐に入り込むための手段として使っていたテクニックである。

女性銀行員ルーシーから得た知恵

この頃になるとジュニアは女性を口説くのも上手になっていた。マイアミに滞在していたジュニアはある日、小切手換金のため銀行を訪れた。カウンター席にいた美人行員ルーシー (エリザベス・バンクス)のところへ行き小切手換金の依頼と同時にパンナムの副操縦士を笠に露骨にデートを申し込んだ。世間慣れしていないルーシーはジュニアの誘いにあっさり乗ってしまう。ルーシーを手中に収めたジュニアは行員であるルーシーに小切手換金の流れやシステムについて色々と聞きだし情報を集めた。そして小切手には決済銀行を示す2ケタのルーティングナンバーが記されている事を知りこのルーティングナンバーを遠く離れた銀行の番号に書き換える事で遠隔決済となるため不渡り発覚までに時間を稼げることを知った。これはこれから本格的に小切手詐欺を企てるジュニアにとって、とても有益でかつ重要な情報だった。ジュニアはその悪知恵を働かせ偽小切手を切りまくり荒稼ぎをしていた。

父との久しぶりの再会

多額のお金を手にしたジュニアはある日父フランクを高級レストランに招待した。立派に成長しパイロットになったジュニアを父フランクは抱き誉め称えた。テーブルに着くとジュニアは父にテーブルマナーをも諭し富者らしく振る舞った。そしてジュニアは久しぶりに会う父にプレゼントを用意していた。父がプレゼントのリボンを外し中をそっと開けるとそこには新車の鍵が入っていた。父にキャデラック・コンバーチブルをプレゼントしたのである。ジュニアは「外に停めてあるから帰りに乗って行って母さんとドライブでもすれば」と暖かい言葉をかけた。過去に父フランクが資金繰りの為、泣く泣くキャデラックを売却した事をジュニアは忘れていなかったからだ。しかし父フランクはそんな息子の折角の好意を「キャデラックに乗っている所を国税局に見られたらまずい」と断った。父を心配するジュニアだったが、未だに国税局とトラぶり、妻ポーラとも寄りを戻せていない様子にジュニアは少し落胆した。

FBI捜査官カール・ハンラティとの出会い

そんな一方で、FBIはジュニアの犯す数々の事件捜査を着々と進めていた。捜査の柱となっていたのはFBI捜査官カール・ハンラティ(トム・ハンクス)であった。ハンラティは捜査のため偽小切手が換金された経緯を手掛かりにロサンゼルスに来ていた。

ジュニアが利用したであろうホテルに訪れたハンラティは証拠品である偽小切手を押収するが従業員からジュニアがまだこのホテルに滞在している事を聞かされた。彼の部屋に忍び寄り、早る気持ちを抑えられないハンラティは銃を片手にFBIだと叫び部屋に突入した。パウダールームから出てきたジュニアに銃を構えるハンラティだったがジュニアは自分はシークレットサービスのバリー・アレンであると名乗り、既にシークレットサービスによりジュニアは連行されたと偽った。信用しないハンラティだったがジュニアはハンラティに外を観て確認するよう促した。そこには犯人を車に乗せ護送しようとするシークレットサービスの姿があった。しかしそれは事件とは全く関係のない一般市民が盲目の人を車に乗せようと誘導していただけで、その様子をジュニアは犯人護送に見せかけたのだった。

その場を上手くかわしたジュニアだったが実態を気づかれぬうちに早くこの場から立ち去りたかった。ジュニアは「証拠品を車に運ぶからメイドに部屋をかき回されないよう見張っていてほしい」とハンラティに告げ部屋を出た。ハンラティは最初に部屋に乗り込んだ際、ジュニアに身分証の提示させたが“犯人護送”の様子に気をとられていたため中身を確認せぬままでいた。ジュニアが部屋を出ている間ハンラティは預かっていたジュニアの身分証のホックを開け何気に中を覗き込んだ。すると中から出てきたのは身分証ではなくファストフードのクーポン券だった。とっさに窓外を見るとジュニアはハンラティをあざ笑うかのように小走りに逃げ去っていった。ハンラティの完敗である。

空のジェームズ・ボンド

相変わらず偽パイロットとして世界中を飛び回るジュニアだったがある日自分の犯している“空泥棒”が各航空会社で騒動となっていて“空のジェームズ・ボンド”と称され新聞沙汰にまでなっている事を知る。ジュニアはこのジェームズ・ボンドという響きがとても気に入りショーン・コネリーがシリーズで来ていたスーツのコピーを3着仕立てアストンマーチンまで購入し浮名を流していた。

あるクリスマスの夜、ハンラティはFBIの建物にひとり残り捜査を続けていると一本の電話が入った。ジュニアからである。ジュニアはロサンゼルスでシークレットサービスを偽装しハンラティを誑し込んだことを詫びる。そしてハンラティが「謝る必要はない。会って話そう」というとジュニアはスタイヴサンホテルの3113室にいる事をあっさり教えた。しかしハンラティは前回ジュニアに騙されていたため、その居場所を信用しなかった。しかし実際にジュニアはそこに滞在していたのである。

“バリー・アレン”の解明

ある日、ハンラティはとある喫茶店であるデータを検証していた。それはバリーアレンの名がいくつも記されたリストだった。するとそこにコーヒーを注ぎに来たウエイターがバリーアレンといくつも書かれたリストを見て「コレクターですか?」と尋ねた。

バリーアレンとはアメリカのヒーローコミック「フラッシュ」に出てくる主人公の変身する前の名前である。ハンラティは犯人が漫画を読む少年層で、ゆえに今まで指紋も前科も記録がなかった事に気付く。さらにジュニアが「ヤンキース」を度々口にしていたことも忘れていなかった。ハンラティはすぐに部下に連絡しニューヨーク市警から未成年者の家出人リストを入手するよう指示をした。ハンラティはニューヨーク市警から取り寄せたリストをもとにシラミつぶしに聞き込み調査を行っていた。そしてリストの53番目にあったジュニアの母ポーラの居所を突き止めた。そして息子ジュニアが数々の悪戯を行っている事実をポーラに明かし確固たる証拠をつかむため息子の写真を提示させた。やはりここに写っていたのはハンラティがロスで取り逃がした自称シークレットサービスの“バリー・アレン”だった。それでも母ポーラは事の重大性に気付いておらず、息子の犯した罪をもみ消そうと財布に手をかけるが、ジュニアが犯した小切手偽造の被害額はパートで働くポーラにとってとても弁済できる額ではなく、既に130万ドルという膨大な金額に膨らんでいた。

医師の詐称

ジュニアはしばらく“空泥棒”を休止しフランク・コナーズという偽名を使って医師に扮した。ある病院を訪れ新米看護師ブレンダ(エイミー・アダムス)に言葉巧みに近づき病院勤務へのコネを作る。運よく面接にまでこぎつけたフランクはここでも学歴や職歴などの経歴詐称をし、緊急病棟の主任として採用され6名のインターンと20人いる看護師の管理役を任された。この看護師の中にはブレンダもいてやがて二人は男女の関係を持つようになる。

フランクはある日自転車事故で搬送され脚から血を流す少年の外科手術に立ち会うよう指示される。経験も知識も全くないフランクはそのおぞましい光景に耐えられなくなり、仲間の医師に大ぼらな指示をだしその場を逃げ出した。

ブレンダとの結婚話

その頃ハンラティは聞き込み調査の為ジュニアの父アバグネイル・シニアの元を訪れていた。ハンラティは息子の居場所を聞き出そうとするが父は「海兵隊に入り今はベトナムあたりにいる」と嘘の証言をした。息子を“売る”ことは出来なかったのである。しかしハンラティは帰り際、テーブルにあった息子ジュニアからの手紙を目にした。封筒には差出人である息子ジュニアの住所が記されており、ジョージア州アトランタのランドーバー通りにあるリバーベントアパートに住んでいる事を突き止めた。そしてその4時間後ハンラティは仲間たちと合流しジュニアのアパートに乗り込んだ。しかしそこにはジュニアはいなかった。ジュニアはブレンダと別の場所で過ごしていたからだ。ブレンダにはある悩みがあった。ブレンダは過去に父ロジャーのゴルフ仲間といい関係になり子供を身ごもり中絶した経験があった。淫らな娘に激怒した父はブレンダを勘当した。ブレンダはジュニアと結婚するためすぐにでも家族にジュニアを紹介したいと思っているが家族に顔向けできないと涙を流した。

そんなブレンダにジュニアは「一緒に行って僕が結婚の許可をもらうよ」と言ってブレンダを慰めた。

ブレンダの家族との対面

数日後ジュニアはブレンダと共にニュー・オリンズにあるブレンダの実家を訪れた。

ジュニアはブレンダの両親に「医者を辞め弁護士稼業に戻ろうかと思っている」と嘘を並べ立てた。ブレンダの父は司法事務所を営む法律家であったためジュニアに「どこの大学で法律を学んだの」と尋ねるとジュニアは「バークレー」と答えた。バークレーはカリフォルニア大学バークレー校の事で父ロジャーもバークレー校の出身者であった。ロジャーがジュニアにバークレー校の近況を尋ねるとジュニアは適当な嘘で受答え話をはぐらかした。ロジャーはそんな立派な肩書をもつ人物が自分の娘を嫁にしたいというのは何か裏があると疑いジュニアを問い正した。素性がバレタと思ったジュニアは「自分は医者でも、法律家でも、パイロットでもないただの凡人です」と白状してしまった。ここで万事休すかと思われたが純粋に娘に惚れ込んだジュニアの人間性を認め法律家として働けるよう根回しもしてやった。

ヨーロッパへの逃走

一応はまっとうな職に就き堅気の人生を歩みたいと思い始めていたジュニアは再びハンラティに電話をし「足を洗いたい。追われる身ではない普通の人生を歩みたい」と告げた。ハンラティは「ふざけるな。必ずお前を捕まえる」と一蹴した。

ほどなくしてジュニアとブレンダは結婚式の日を迎えた。式の最中にハンラティは義父となるロジャーを呼び出し真相を明かした。ハンラティの存在を知ったジュニアはブレンダの手を取り「2日後10時にマイアミ空港で落ち合おう」と告げ、式場の窓から飛び降り逃走した。

2日が経ち約束通りに二人はマイアミ空港で落ち合った。しかしそこにはハンラティ率いるFBI捜査員たちもジュニアが現れるのを虎視眈々と狙っていた。捜査員たちの気配を感じたジュニアはブレンダが来ている事を知りながらも車から降りず空港を後にした。

ジュニアは再びパンナムのパイロットに成りすまし、見習いCAに機上訓練をさせるという口実でヨーロッパへ向かう事になる。この頃にはマイアミ空港には常にハンラティら捜査員たちがジュニアに“高飛び”をさせまいと張り込んでいたが、ジュニアは捜査員を攪乱させマイアミ空港を後にした。そうとも知らないハンラティらはジュニアの車を取り囲み手を上げ車から降りるよう警告する。しかし車から降りてきたのはジュニアから100ドルで買収されたジュニアの替え玉だった。またしてもジュニアを取り逃がしたハンラティが空を見上げると、ジュニアを乗せたパンナム機が華々しく空を駆け抜けて行った。

フランスでの逃亡生活

それから7か月、ハンラティはジュニアが世界各国で小切手を乱用している情報を掴む。しかし今回は偽装小切手ではなくパンナム社の本物の小切手に精巧な印刷を施したものだった。最後の換金がスペインのマドリッドであったためハンラティらはスペインに飛びある印刷所を訪ねる。そこでハンラティは小切手を見てもらいインクや印刷機の種類からフランスのモントリシャールで印刷されたことを突き止める。

1967年のクリスマス・イブ、ハンラティはモントリシャールにある印刷所を訪ねる。するとそこには機械をフル稼働させ小切手偽装に精をだすジュニアの姿があった。ハンラティは「もう逃げられない。自分で手錠をはめ自首しろ」とジュニアを説得した。隣の教会から讃美歌が流れる中、手錠に繋がれたジュニアはハンラティに連れられ外に出た。そこに地元警察が到着しジュニアは引き渡される。その時ハンラティは「ジュニアは自ら手錠を掛け自首した」と地元警察に釘を刺した。

アメリカへの身柄引き渡し

それから2年後一旦アメリカに戻ったハンラティはFBIにジュニアの身柄を引き渡すため彼が投獄されているマルセイユを訪れアメリカへ連れ戻す手はずを整えた。アメリカに向かう飛行機にジュニア乗せたハンラティであったが、ジュニアは一筋縄ではいかず、アメリカの空港に着陸しようとする直前に機内のトイレから脱走した。

脱走後ジュニアはある雪の降る晩、母が恋しくなり家をこっそり覗き見しにいった。そしてその時張り込んでいたハンラティらに押さえられジュニアは逮捕された。後に裁判でジュニアはアトランタ重罪犯刑務所での12年の禁固刑を言い渡された。

服役中ジュニアの元へハンラティが面会に来た。漫画本を差し入れてやるなどし彼の話し相手にもなってやった。たわいのない会話を二人がしているとジュニアはハンラティのブリーフケースに目が留まった。「どこに行くの」とジュニアが聞くと、ハンラティは小切手偽造犯を捕まえるためにミネソタに行くと答えた。ジュニアが「その小切手見せて」といいハンラティはジュニアにそれを渡した。小切手を一目見たジュニアはその犯人が銀行の窓口係であることを瞬時に見抜いた。長年偽装小切手に手を染めていたジュニアならではの勘であった。この事がきっかけになりジュニアは小切手絡みの事件が起きるたびに重宝がられた。そしてハンラティはジュニアに司法取引をもちかけ晴れてジュニアはFBIの金融犯罪科で働くことになる。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのレビュー・感想

ストーリーがあまりにも奇想天外すぎて断片的にあらすじを書いても話が繋がらなくなってしまうような感じがして、超ネタバレのこのような長いあらすじを書いてしまいました。

感想ですがまずストーリーの展開のさせ方がとても上手いと思います。普通、こんな長いストーリーをこのあらすじのようにただ時系列で並べてしまっては面白みも半減するのでしょうが、あえて物語を時系列で進めず、現在と過去を織り交ぜながら1つのストーリーとしてつなぎ合わせているので観ていて飽きないし面白いです。そのあたりはさすがスピルバーグって感じです。そして何よりこの話が実話であるという事にジュニアという人の桁外れの凄さを感じます。

ジュニアの犯す行為は大胆不敵であっぱれのひと言。でも頭脳明晰でありながら時には人間らしい弱さも見せる。少年という事もあるせいかジュニアを少しも憎めません。またハンラティもベテラン刑事だけれどどこか頼りなくお人よしのところがあってこの二人を見ているとさながらルパンと銭形を思い出します。

映画のオープニングもこの作品のテーマらしくクレジット が奇想天外で音楽も謎めいていて面白いですね。

また最後に主人公であるフランク・ウィリアム・アバグネイル, ジュニアのその後の活躍や近況がテロップで流れるんですが、銀行詐欺と偽造摘発の権威になった彼に心から拍手を送りたいです。いつもながらこの手の実話映画の最後に出てくる“追伸テロップ”には、本編とはまた違ったところで感慨深いものを感じます。

ゲーム

“日常に飽きた”と嘆く人には面白い作品

1997年製作  アメリカ  128分

監督

デヴィッド・フィンチャー

キャスト

マイケル・ダグラス  ショーン・ペン  アンナ・カタリーナ  デボラ・カーラ・アンガー  ジェームズ・レブホーン  アーミン・ミューラー=スタール

撮影ロケーション・情景

サンフランシスコ 大邸宅 BMW7シリーズ メキシコ

ゲームのあらすじ

サンフランシスコで投資事業を行っているニコラス・ヴァン・オートン(マイケル・ダグラス)は日々多忙を極める実業家。妻のエリザベス(アンナ・カタリーナ)とは離婚し大豪邸にひとり暮らしていた。

ある朝、ニコラスは一日のスケジュールを秘書に確認していると「社長とランチをご一緒したい」といういたずら電話があったことを聞かされる。その電話の主はニコラスの弟コンラッド・ヴァン・オートン(ショーン・ペン)からの電話であった。ニコラスは秘書に予定していた昼食会をキャンセルさせ弟とのランチを優先させた。

ニコラスは行きつけのレストランで弟コンラッドと3年ぶりに再会する。その日はニコラスの誕生日でコンラッドは誕生日プレゼントとしてCRSという謎めいた会員クラブの招待状をニコラスに贈った。ニコラスはコンラッドに「そのクラブは何だ」と尋ねるも、コンラッドは「退屈な人生が楽しくなる。だから電話して」と意味深げに答えるだけだった。

その夜、帰宅したニコラスは家政婦のイルサが用意してくれたハンバーガーとちんまりとした誕生日ケーキをトレイにのせ、ひとり物寂しい 夕食をとろうとしていた。するとそこに別れたエリザベスから誕生日を祝福する電話が入った。しかしそんな気遣いをするエリザベスにニコラスは虚勢をはり素っ気ない態度で受答えをするが、エリザベスが触れたある話題でニコラスは神妙な面持ちをみせる。それはきょう48歳の誕生日迎えたニコラスと奇しくも同じ歳に屋敷の屋上から身を投げ自ら命をたった父の事だった。ニコラスはじっと目を閉じあの日の凄惨な光景を思い出していた。

翌日ニコラスは商談をするためにあるビルを訪れるが、この時このビルの14階にCRSの会社が入っている事に気付く。興味をそそられCRSのフロントを尋ねたニコラスは対応してくれたデータ分析部長のジム・ファインゴールド(ジェームズ・レブホーン)に「このクラブは何を商売にする会社なのか」と尋ねると、ファインゴールドは「ゲームです。一人一人に合わせてゲームを創ります。人生のバカンスとお考えください。」と答えた。

答えとしては漠然としていたがニコラスは何げに興味を惹かれ入会の手続きをすすめる事に。しかし入会手続きを完了させる事は一筋縄では行かず、心理テストや体力テストなど丸1日を費やしてしまった。

入会はしたものの、実際に「ゲーム」のサービスの提供を受けるかどうか考え悩んでいたニコラスはある日偶然にもCRSについて語る2人の老紳士の会話を耳にする。ニコラスは二人にCRSの体験談を聞こうとするが二人は闇雲に称賛するだけで、事細かな内容についてはお茶を濁しその場を去って行った。

疑心暗鬼のまま数日が経ち、ある晩ニコラスが帰宅すると、不気味なピエロの人形が玄関前に横たわっていた。そのピエロをニコラスは抱きかかえ部屋に入るが、ピエロの口元を観ると何やら赤い紐が出ており、紐を手繰り寄せるとその紐の先にはCRSの鍵が括りつけられていた。

とりあえずピエロをソファーに座らせたニコラスはいつものように株価情報番組をみていた。ニュースを読んでいるキャスターの声に耳を傾ける傍ら、ピエロの顔をじっと眺めていると突然キャスターがニコラス・ヴァン・オートンの名前を口にした。これにはニコラスも驚いたが、もっと驚いたのはキャスターからニコラスの姿、家中の様子が見られている事だった。ニコラスはキャスターに「これはどういう事だ」と聞くと、キャスターは「これがゲームだよ。ようこそ」とニコラスに告げた。そしてキャスターがゲームの基本ルールを説明し始めると突如家政婦のイルサが帰宅を告げに部屋に表れた。それまでニコラスとテレビ越しに会話をしていたキャスターは瞬時に通常のニュース放送に画面が切り替わった。

イルサがいなくなると画面は再びニコラスとの会話にもどり、キャスターはCRSの24時間ホットラインサービスの連絡先をニコラスにメモするように促し、「ゲームの目的を尋ねようとしても無駄だ。その解明こそがこのゲームの目的なのだから」という意味シンな言葉を残し再び通常のニュース放送に切り替えた。

「何かが始まろうとしている」と神妙な面持ちを隠せないニコラスであったが、彼はこれから戦々恐々とした日々を送ることになる。

ゲームのレビュー・感想

この映画の舞台の殆どはサンフランシスコ。ただし、サンフランシスコの景観を楽しもうとこの映画をチョイスしても、あの燦々としたサンフランシスコのイメージは全くありません。シーンの多くは夜の撮影です。

あらすじにもあるようにこの映画の肝は「人生のバカンス」と称する人生ゲーム。観ていて初めはこういうサービスを行う企業があってもいいし、面白いのでは?とも思ったりもしたけれど、ニコラスに仕掛けられるゲームは想像をはるかに超えており、「なるほど、これは面白い」と思わせるリアルな仕掛けもあれば「こんなことされたら訴訟もんだろう」とも思えるような浮世離れした仕掛けなど様々です。

もうどこかでゲームと言える範囲を超越しちゃっているけれど、ただ単純に映画として観るのであればすごく面白いし、「もし自分がこの状況になったら?」と一考しながら観る事が出来るので退屈しません。“日常に飽きた”と嘆く人には面白い作品だと思います。

映画制作で一番偉い人は誰?

監督、製作総指揮、プロデューサー、脚本家、それぞれの役割と地位的序列

DVDやBlu-rayなどのディスクジャケットの裏面を見ると、俳優さんのみならず、監督、製作総指揮、脚本、プロデューサーという具合に色々な肩書の方々を目にすると思いますが、監督、製作総指揮、プロデューサーってそれぞれどんな仕事してんの?「一体誰が一番偉いの?」って思ったりしたことありませんか?

有名な映画でバック・トゥ・ザ・フューチャーという作品があります。ご存知ですよね。この作品の場合、

監督:ロバート・ゼメキス

製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ

とあります。

監督だからゼメキスさんも偉いんだろうけど、スピルバーグって聞いちゃうと何となくそちらの方のほうが偉いんだろうなとも思うし、もっとわからないのは

製作総指揮:ジョージ・ルーカス

監督:スティーブン・スピルバーグ

というパターン。

スティーブン・スピルバーグもジョージ・ルーカスもいわずと知れた超大物。

なので本章ではそれら監督、製作総指揮、プロデューサー、そして脚本家も含めそれぞれの役割地位的序列についてまとめてみました。

それぞれの役割と偉い順番は以下です。偉い順にいうと

①製作総指揮

英語でいうと「エグゼクティブプロデユーサー」という位置づけで、この中では一番偉い地位の方。ただ一般のイベントなどもそうですが「イベント総責任者」という肩書の人の下に「イベント運営責任者(実行責任者)」⇒「イベント集客責任者」みたいな人がいて、実際に個々のかじ取りを行うのは「運営責任者(実行責任者)」や「集客責任者」が行うのと同様に製作総指揮といってもその人が何をするというわけではないようです。

ただ、現実的に大物陣を冠に迎える事でいい脚本が集まりやすいのも事実ですし、また資金調達を有利に行うためになんていう事もあるようです。たとえば将来を期待されるほどの有望な若手監督がいたとしても、お金がなければ映画自体作れない。そんな場合に彼らを開花させようと資金調達をしてくれる大物監督やらを「製作総指揮」という立場で監督の上に置き、冠作品を作るという事も結構あるようです。(特にハリウッド映画)

②プロデューサー

映画全体の企画の立案から作品の制作完了までを仕切る人で、監督の起用にも決定権をもっています。また映画製作における進捗スケジュールの管理や、製作費用の運用や管理を主として仕事を行います。

③監督(演出)

監督は映画製作においては演出と同じ位置づけで称されることもありますが、映画の品質に特化した最も重要な役目です。現場で撮影されるシーンのカットは監督が全て「OK」か「NG」かを判断します。キャストの演技やカメラワークなどレンズを通してみるものすべてに注文を付け、映画品質そのものを向上させます。

映画ストーリーの肝ともなる脚本の選定や俳優陣の選任、そして使用する音楽や効果音など、あらゆる場面で決断を下さなければならない立場にいます。「監督の感性で作品の良し悪しが決まる」とよくいわれるのはそのためです。

ちなみに使用する音楽と編集方法の違いに(そこに携わる人の感性)によって、映画そのものの趣きが全く変わってしまうという事をジャック・ニコルソン主演の「アバウト・シュミット」という作品の特典映像を観るとよく解ります。

④脚本家

監督の要請で、物語となるあらすじを脚本として書きおろす仕事を担います。脚本ひとつで観る者を引き込ませるストーリーの展開や、演じる人のセリフや言い回しでその人の心情や情景が大きく変わってしまいます。

いい俳優を使っていて、写っている景色や街並みも素晴らしいのに、脚本がショボいため途中で観る気が失せてしまうことがたまにあります。映画そのものがわざとらしく思えてしまうというか・・・。

脚本は映画が光るか否かを大きく左右すると言っても決して過言ではないですね。

キャスト・アウェイ

トム・ハンクスの役作りの凄さと観る者を飽きさせないストーリー展開

2000年製作  アメリカ  144分

監督

ロバート・ゼメキス

キャスト

トム・ハンクス  ヘレン・ハント  ニック・サーシー

撮影ロケーション・情景

航空貨物 テネシー州メンフィス アメリカの片田舎 メンフィス国際空港 航空機事故 モスクワ 南太平洋クック諸島  過去恋愛の回想

キャスト・アウェイのあらすじ

チャック・ノーランド(トム・ハンクス)はテネシー州メンフィスを拠点とする物流サービス企業フェデックスで物流システムエンジニアとして世界を飛び回っていた。チャックにはケリー(ヘレン・ハント)という恋人がいて、いずれプロポーズをする事も考えていた。

あるクリスマスの夜、ケリーを招き親族一同で食事をしていると、チャックのポケベルが鳴り急遽マレーシアへの出張命令が下された。このため二人はクリスマスプレゼントを渡すタイミングを失い、チャックを空港まで送って行く車中で互いにプレゼントを渡し合った。ケリーからのプレゼントは祖父の形見である懐中時計で、そこにはケリーの写真が焼き付けられていた。一方チャックからは日記帳とポケベル、それにハンドタオルが贈られたが、ハンドタオルはおふざけで、彼はそっとポケットから本命であるプロポーズ用の指輪を出しケリーに渡した。本当は年末の大晦日に渡そうと準備していたものだったが、なぜかこの場で渡すことになり、チャックはマレーシアへと旅発った。

しかし、不運にもチャックを乗せたフェデックスの貨物便は、悪天候により航路をだいぶ逸れ、コントロールを失った挙句、南太平洋に墜落してしまう。膨大な量の海水が機体に浸水し、沈みゆく機体から海へと投げ出されたチャックは必死に緊急用救命ボートにしがみ付き困難に立ち向かうが、そのまま意識を失ってしまう。一夜が明け、意識を取り戻すとチャックはある島に漂流していた。墜落した衝撃で機体から放り出された多くの宅配物が海に散らばり、哀しげに砂浜に打ち寄せられる。起きた現実をまだ理解できないチャックは、朦朧としながらも生業とする大切な荷物を必死に拾いながら大声で叫び救助を求めるが、そこは人ひとりいない、淋しい無人島であった。その日から4年に及ぶ、チャックの孤独で過酷なサバイバルが始まる事になる。

チャックは直に喉の渇き、空腹に苦しめられるようになり、拾い集めたフェデックスの荷物を手当たり次第に開け、飢えに備えるための道具に使えるよう知恵を絞った。スケート靴の刃の部分を使いヤシの実を割ったり、布きれを足に撒いて靴の代用をしたりチャックは必死に現実と向き合った。次第に魚を獲る技術も覚え飢えには何とか対処できるようになったがチャックを最も苦しめたのは猛烈な孤独感であった。

チャックはある日火を起こそうとして手に傷を負ってしまう。手からは血が流れ、怒ったチャックは傍においていた荷物のひとつであるウイルソン製のバレーボールにあたり放り投げてしまう。ところが、その真っ白なバレーボールには怪我をしたチャックの血痕で手形がつき、不思議とボールは人の顔のような様相になった。チャックはその手形に目を入れ、鼻を書き、口を書くなどして人の顔に見立て、ウイルソンという名前まで付けた。チャックは日々ウイルソンに話しかけるようになり、以来そのボールがチャックの唯一の心の拠り所になっていった。

キャスト・アウェイのレビュー・感想

ストーリーの半分以上をトム・ハンクス一人で演じているのに観ている者を飽きさせない

このキャスト・アウェイという映画ですが、シチュエーションの柱となっているのが実在するフェデックスという企業である事や、ストーリーがそれほど複雑ではないのに映画化された事、そしてその単純なストーリーにもかかわらず情景が凄くリアルに描かれているという点から、一瞬、実話?と思わせるような作品です。でも調べてみるとこの作品、全てフィクションという事らしいです。

この映画の上映時間は2時間24分なんですが、そのうちの約1時間15分はトム・ハンクス一人で演じています。それでも全く観ている者を飽きさせないストーリー展開というか情景を一こま一こま上手に描いるところが見事です。

そして何よりトム・ハンクスの役作りが凄い。漂流する前は少しブヨブヨとした体系をしていたチャックですが、サバイバルをしていくうちに段々と痩せ細っていく姿は実にリアルです。事実、この役を演じ切るために22.7kg減量したそうなので役者魂とはいえ凄いですね。

宗教が存在する理由が何となく理解できる

僕はこの映画の中で特に印象に残っているのがウイルソン製のバレーボールに人の顔を書いて、それにウイルソンという名前を付けボールを崇めるシーンです。ところがある日暴風雨に襲われウィルソンは海に落ち消えて行ってしまうのですが、チャックが必死にウイルソンを助けようとするんですね。これは大切なわが子を救おうとする場合の親心と一緒です。唯一の心の拠り所となっていたウイルソンは単なるボールではなくチャックの友達になっていたのでしょう。

形がどうあれ自分の心の支えとなるものがあり、それに縋ろうとする人の心。何となく宗教というものがこの世に存在する理由が理解できるような気がします。

時間の残酷さ

それと時間というものの残酷さを感じます。漂流する前まではチャックはケリーと結婚するはずだった。ケリーもチャックはきっとどこかで生きていると思っていたはず。しかし4年という時間はあまりにも長く、頑なに決めていた人の心をも変えてしまうんですね。ケリーは別の男性と結婚し子供にも恵まれ仲睦ましく暮らしていた。

チャックの存在はもう単なる過去の出来事のひとつに過ぎないのかもしれません。しかしチャックが生きていたことを知り、全て過去へと追いやっていたはずの時間が巻き戻され、ケリーは卒倒してしまいます。そして4年ぶりにチャックはケリーと再会しますが、長い歳月があの時とは全く違う現実を作ってしまいました。チャックはケリーに貰った懐中時計を返そうとしますが、ケリーは「あなたにあげたのだから持ってて」とチャックに言います。

今でもチャックを愛していたケリーは二人の人生が全く変わってしまた今、その言葉しか見つからなかったのでしょう。しかしチャックは「家族の宝は家族が持っているべきだよ」と断わりケリーの元を離れていきます。

土砂降りの雨の中、ケリーはチャックの後を追い、二人は互いに抱き合い愛が変わっていない事を確認するのですが、このまま二人で一緒に逃げる事もできたでしょう。しかしチャックはケリーに家庭を壊して欲しくないという想いからケリーを諦め別れを告げるんです。本当の愛ってこういうものなのかもしれません。時間の残酷さをつくづく感じます。

レスラー

一見スポ根ぽいけれど、実は疎遠になっていた父と娘の心の隙間を描いた物語

2008年製作  アメリカ  115分

監督

ダーレン・アロノフスキー

キャスト

ミッキー・ローク   マリサ・トメイ    エヴァン・レイチェル・ウッド

撮影ロケーション・情景

アメリカンプロレス トレーラーハウス ストリップクラブ ニュージャージー州オーシャンシティ アメリカのスーパーマーケット ダッジラムバン

レスラーのあらすじ

80年代全米中を轟かせていた伝説のプロレスラー ランディ・“ザ・ラム”(ミッキーローク)は年月の経過とともに体力も衰えはじめ、今ではスーパーでの仕事を掛け持ちしながら辛うじてレスラー生活を続け生計を立てていた。彼には結婚歴があり一人娘ステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)もいたがプロレスで全米を飛び回り家庭を顧みない行動が災いして彼女が幼い頃家庭は破綻した。

そんな孤独でいじましい生活を送るランディの唯一の楽しみはストリップクラブで働くダンサーのキャシディ(マリサ・トメイ)に会いに行く事だった。ランディは毎日のようにプロレス巡業から帰るとキャシディに会うため店を訪れていた。

そんなランディがある日巡業先の試合中心臓発作を起こし倒れてしまう。原因はランディが過去、長期にわたり使用していたステロイド剤だった。手術を担当した主治医からは「もうプロレスは無理、すぐに止めるべき」と勧告されてしまう。ランディはそのことを真っ先にキャシディに伝えに行くが、キャシディは「疎遠になっている一人娘ステファニーに会ってそのことを伝えるべき」と窘めた。

ステファニーに会う事を決めたランディは日頃から肌身離さず持ち歩いる幼少のころのステファニーの写真の裏に書いてある連絡先を元に電話をかけるが一向に繋がらず、ついにランディはアポなしで彼女の家を訪れた。

ようやくステファニーに会う事ができたランディであったが、案の定彼女は冷ややかで今まで家族を大切にしなかった父ランディをすぐには許すことは出来なかったが、ランディは父親らしさを取り戻すためにステファニーにプレゼントを贈るなどして、徐々に二人の関係に修復が見え始めた。ランディは昔親子で訪れた思い出の場所へステファニーと共にでかけ楽しい時間を過ごすが、自責の念にかられていたランディは自分の犯した過去の過ちをステファニーに詫び涙を流す。

レスラーのレビュー・感想

はじめは何となくプロレスラーのスポ根もの?って思って正直あまり期待していなかったんですが、観ると全く違っていて、自分の人生、生き方、家族とのつながりを描く物語で、すごくいい映画を観たなぁって思いました。僕は普段、アカデミー賞何たらというものは全く気に留めず映画を観るんですが、後々調べてみると、この作品、ヴェネツィア映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ主演男優賞を獲っていて「なるほど、いい映画なわけだ」って思いましたね。

ランディ扮するミッキーロークですがナインハーフの頃の超イケメンだった面影は全くありません。顔を整形して失敗したという話ですが、初めは観ていてとても痛々しい感じでした。でも一回りも二回りも体は肥大化していますが、元ボクサーという事もあり、この年齢でこの身体、よく鍛え上げられているなあと感心します。

疎遠になっていた父と娘。長い間寂しい思いをしたステファニーの心の隙間はすぐには埋められないのでしょうが、思い出の場所でダンスを踊る父と娘、父が娘の肩を抱きかかえながら仲良く散歩するシーンはとても幸せな気持ちになるし、この時間がずっと流れていてほしい、二人を引き裂かないでほしいと観ていて願わずにはいられません。

もしも、娘さんと何らかの理由で疎遠になってしまっていて、気持ちにわだかまりがあるお父さんがいたとするなら、ぜひこの映画を観てください。僕はその点ではこの映画に救われました。

そして、何といってもランディの生き方がカッコいい。歳を老いても身体を張って頑張るオヤジって、観ていて勇気もらえます。

日本語字幕と吹替字幕ってどう違う

あれ?字幕が全然出てこない

DVDなどの洋画を観る際、設定メニューにある「字幕」という項目の中で「日本語字幕」というのと「吹替字幕」という何とも判断しにくいボタンがあるのをご存知かもしれませんが「吹替字幕」に設定して観ようとしたら「あれ?字幕が全然出てこないぞ」という経験をした人も多いのではないでしょうか。本章ではこの「日本語字幕」と「吹替字幕」の違いについて解説してみたいと思います。

日本語字幕とは

まず「日本語字幕」ですがこの設定にすると演じている俳優陣のセリフ、電話での会話(相手のセリフは斜体)テレビから流れる音声(この場合も斜体)手紙を書いている場面での内容を記すナレーション お店の看板等、状況を説明するのに必要なものすべてを日本語に直し字幕として映し出します。

吹替字幕とは

吹替字幕は俳優陣のセリフ、電話での会話(相手のセリフも含め)テレビから流れる音声 手紙の内容を記すナレーション等には字幕は登場しません。ただ道路標識やお店の看板等、状況を把握するための字幕は表示されます。

日本語字幕と吹替字幕2種類の字幕が存在する理由

ではなぜそのような日本語字幕と吹替字幕の2種類で区分けがされるのかというと、たとえば音声を日本語設定にし字幕をoffにして映画を観る場合、俳優陣のセリフは日本語ですから問題ありませんが、映画の箇所々に出てくる標識やお店の看板などは英語表記のままなので理解できないという事になります。

じゃあ、音声も日本語で字幕も日本語字幕にすればという事になりますが、その場合日本語でセリフが語られているのに、それに合わせて日本語の字幕も見せられることになりますのでちょっとウザイとなるわけです。

吹替字幕というのは正しくは「日本語吹替え用字幕」といって、その名の通り「日本語吹替えで観る場合」の字幕設定というわけです。

長々書きましたが要するに「俳優陣たちのセリフに字幕が付くか付かないか」の違いですね。

ハリウッド映画とは

ハリウッド映画の中枢を担う大手映画制作会社

アメリカのハリウッド(カリフォルニア州ロサンゼルス市)には多くの映画制作会社の拠点があり、その地区を拠点とする会社に作られた映画がハリウッド映画とよばれるものです。中でも下記の6社がその中枢を担う大手映画制作会社です。

①ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント

有名作品:007 スカイフォール メン・イン・ブラックシリーズ

年間売上:約1400億円


②ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ

主な作品:美女と野獣 パイレーツ・オブ・カリビアン

年間売上:約1185億円


③ワーナーブラザーズ

主な作品:ダーティハリーシリーズ ハリー・ポッターシリーズ

年間売上:約1135億円


④ユニバーサル・ピクチャーズ

主な作品:ジョーズシリーズ ツイスター

年間売上:約970億円


⑤20世紀フォックス

主な作品:タイタニック スター・ウォーズシリーズ

年間売上:770億円


⑥パラマウント・ピクチャーズ

主な作品:インディ・ジョーンズシリーズ ゴッドファーザーシリーズ

640億円

映画「制作会社」と「配給会社」の違いは?

映画を観ようとすると冒頭オープニングで複数の会社のロゴや社名が表示され、「これって何?」と思う人もいるのではないでしょうか。

でも何となくこれらの会社、この映画を製作している会社か、あるいはDVDなどのメディァを作っているもしくは配給している会社という事は察しがつくのですが、この「制作会社」と「配給会社」いまひとつ違いがピンときません。ですので、映画における「制作会社」「配給会社」の違いについて調べてみました。

一番最初に表示されるのが「制作会社」でその次に出るのが「配給会社」

映画制作会社はその名の通り映画をつくる会社で、映画製作に必要な資金を確保するためにスポンサーをみつけ、そして資金が調ったら脚本を買い、監督や俳優陣を雇って映画を製作します。

配給会社は製作された、もしくはこれから製作される映画を買い付けて、映画館やDVDなどのメディアやテレビ放送するための権利を買う会社です。配給会社は購入した映画での興業収入を上げるために写真集やサウンドトラックなどを商品化したり、主演男優や主演女優などを来日させ、宣伝イベントを行うなどをしています。

たとえるなら「トヨタ自動車株式会社」が制作会社で「ネッツトヨタ○○」が配給会社という感じでしょうか。ただ近年、製作、配給ともに同じ会社で行っているというケースもあるようです。

ちなみにレオナルド・ディカプリオ主演の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」という作品は製作会社はスティーヴン・スピルバーグが設立したアンブリン・エンターテインメントという会社で、配給はドリームワークスというアメリカの映画製作会社が行っていたりします。

よくDVDを見始めると会社のロゴマークみたいなものが2つくらい出てきて「これらの会社の関係は何?」と思ったりしますが、一番最初にでるのが制作会社で次に出るロゴマークが配給会社のようです。

アバウト・シュミット

老紳士の疎外感を巧みな脚本が見事に表現

2002年製作  アメリカ  125分

監督

アレクサンダー・ペイン

キャスト

ジャック・ニコルソン キャシー・ベイツ ホープ・デイヴィス ダーモット・マローニー ジューン・スキッブ レン・キャリオー

撮影ロケーション・情景

アメリカネブラスカ州オマハ  定年退職 キャンピングカー アメリカの葬儀 エプリー・エアフィールド(オマハの空港) ミッドウェスト航空 キャデラックコンコース ネブラスカ州グランドアイランド郊外 ネブラスカ州ホールドレッジ ネブラスカ州カーニー コロラド州デンバー アメリカの結婚式

アバウト・シュミットのあらすじ

ネブラスカ州オマハに住むウォーレン・シュミット(ジャック・ニコルソン)は永年ウッドメンという保険会社で保険数理士として働いていたが、いよいよ引退の日を迎える事に。

これからは妻ヘレン(ジューン・スキッブ)と余生を楽しみ全米中を妻と一緒に旅しようと大きなキャンピングカーを購入した。シュミット夫妻にはジーニーという一人娘がいるが彼女は結婚式準備のため嫁ぎ先であるデンバーに滞在していた。そんな楽しい余生が待っているはずだったが、実際に引退してみると毎朝決まって7:00には目を覚ましてしまい、心にポッカリ穴があいたような 満たされない生活であった。

ある日ウォーレンが自宅でテレビを見ていると飢餓に苦しむ世界中の子供たちへの支援団体「チャイルドリーチ」からの義援金を募るコマーシャルが目に留まった。それがきっかけでウォーレンは6歳のンドゥグという少年の養父になる事を決心する。そして金銭的援助に留まらず、ンドゥグへ手紙を書き自身の生活ぶりや家族について綴ったりしていた。

数日後、郵便局に出かけたウォーレンが用事を済ませ自宅に戻ってみると、妻ヘレンが心臓発作で倒れており帰らぬ人となってしまった。今まで生活の全てをヘレンに任せていたウォーレンは、以来、掃除も片付けもできず、足のふみ場もない程だらしない生活を送るようになってしまった。

独りぼっちになり益々満たされない生活を送っていたウォーレンは、ある深夜、突然目を覚まし「俺はオマハデ何をしてるんだ。家族は一緒にいるべきだ」という想いに駆り立てられ一人キャンピングカーに乗り娘の住むデンバーを目指す決心をする。

アバウト・シュミットのレビュー・感想

些細なところにアメリカと日本の差を感じる

「保険数理人」という職業がある事を僕は知りませんでしたが、一般的にはアクチュアリーと呼ばれているらしく、生命保険や損害保険などの金融商品を設計する仕事らしいですね。

そういったいわゆるエリート畑で仕事をしてきたからなのでしょうが、ウォーレンは在職中リンカーンをマイカーとして所有し、定年退職後も豪華なキャンピングカーを購入するなど、私たち日本人が定年退職して余生を送るイメージと比べると、やはりアメリカはスケールが違うなあという感じです。

もちろん日本だって戦後、高度経済成長を遂げ経済大国となったわけですし、それらの比較が全てではありませんが、そんな些細な部分でも冷静に見ると、子供の頃、アメリカのホームドラマをみて「こんな豪勢な生活してるの?!アメリカってすげ~え!」と感じたあの気持ちが蘇りますね。

さて映画の中身ですが、退職後すぐウォーレンは自分のいなくなった職場が気になり、ウッドメンに立ち寄るシーンがあります。“自分がいなくなって会社は回るのか?”という一種の思い上がりですね。(笑)

20年以上勤めた会社を辞めた経験が僕にもあるのでその気持ちよく解ります。でも現実は、自分一人くらい会社を抜けても立派に回るものなんですよね。ほとんどの場合。(笑)「あなたがいなくてもちゃんと会社は機能していますよ」という事をウォーレンを傷つけないように窘める後任者の振る舞いが上手に描かれています。

ロードムービーならではのアメリカのローカルな風景が楽しめる

また、デンバーにいる一人娘ジーニーへ会いに行くまでの道中が結構描かれていますのでロードムービーならではのアメリカのローカルな風景が楽しめます。それと脚本がいいと映画ってやっぱり光りますね。ンドゥグへの手紙に綴られる言葉、妻や娘と交わす言葉、そしてこの映画の本質ともいえる老紳士の疎外感を巧みな脚本が言い表しています。

見逃さないで欲しい特典映像

そして絶対に見逃さないで欲しいのが特典映像ですね。コンテンツがすごく面白いです。

監督が編集担当者のスキルアップのために、本編とは違う別の風景をセカンドカメラマンに撮らせ、それを使い仮想のオープニングとして作らせた映像です。

ウッドメンビルと、うら寂しいオマハの風景を使い、複数の編集担当と音楽担当がタッグを組み仮想のオープニングを5パターン製作したわけですが、情景はほとんど同じなのに使用する音楽と編集方法の違いによって映画の趣きが全く変わってしまうのが面白いというか不思議です。映画ってこんな風に作られていくのかと感心させられますよ。

リービング・ラスベガス

ラスベガスという街をシチュエーションとしているあたりが妙に調和がとれていて面白い

1995年製作  アメリカ  111分

監督

マイク・フィギス

キャスト

ニコラス・ケイジ エリザベス・シュー ジュリアン・サンズ キャリー・ローウェル

撮影ロケーション・情景

ラスベガス ラスベガス・ブルーバード(フラミンゴラスベガス附近) カジノ ネバダ山脈 ロサンゼルス アメリカのbar BMW5シリーズ

リービング・ラスベガスのあらすじ

ベン・サンダーソン(ニコラス・ケイジ)は家庭を持ち、ロサンゼルスで暮らしていたが重度のアルコール依存症が原因で妻子と別れ、勤めていたハリウッドの映画制作会社も解雇されてしまう。

自暴自棄に陥っていたベンは自宅を整理し、家族の写真も焼き捨て、わずかな退職金を手に愛車BMWに乗り眠らぬ街ラスベガスへと向かう。ラスベガスで財力尽きるまで酒を飲み続け、そこで死のうと決めていたからだ。

ラスベガスに着くと安いモーテルを借り、そこを棲家とするベンであったが、相変わらず酒に溺れ、酒瓶片手に夜な夜なラスベガスの街をぶらついていた。そしてある晩、ベンは酒に酔いながら車を運転していて道路を渡ろうとする女性を跳ねそうになる。その女性は高級娼婦のサラ(エリザベス・シュー)だった。サラは「車は赤信号で止まるのよ」とベンを戒めその場を立ち去るが、ベンは注意された事など意に介さず、モンローウオークさながらに歩くサラの後ろ姿にニンマリしてしまう。

その後ベンは毎日酒を片手に車でラスベガスの街を徘徊するのだが、客探しに街をふらついていたサラを偶然見かけ声をかける。相当酔っていたベンは人目もはばからず「俺の部屋に1時間いてくれたら500ドル払う」と自分のモーテルにサラを誘い込んだ。

ところがベンは性的サービスよりも話し相手になってもらう事を望み、延長料金を払ってまでサラとの会話を一晩楽しんだ。しかし、高いお金を払って行為に及ぼうとしないベンの事をサラは不思議に思いベンから事実を聞くことになる。

「ラスベガスには酒で死ぬために来た」と話すベンに対しサラは最初「いったい何日かかるの?お酒で死ぬのに」とあざ笑っていたが、ベンとの関係を続けていくうちに互いに惹かれあい、「お酒を止めろと絶対に言わない」事をサラに約束させベンはサラとの同棲生活を始める。ベンはアル中、サラは娼婦という互いの立場を重々承知しながら暮らしていくはずの二人だったが、愛情が深まるにつれベンのサラへの嫉妬と、ベンの健康を案じはじめたサラの違約的な発言が元で少しずつ二人の関係が壊れ始めていく。

リービング・ラスベガスのレビュー・感想

複雑怪奇な展開など特にない単純なストーリー

エンターテイメントシティ、ラスベガスを舞台に撮影された映画ですが1995年の作品という事でオープニングで登場するストリップ(ラスベガス・ブルーバードというメイン通り)の上空からの風景は今よりだいぶ淋しい感があります。

僕は個人的にこのラスベガスが好きなので何度も繰り返し観ている映画ですが、ストーリー的にはアル中と娼婦のラブロマンスという事だけで特に複雑怪奇な展開などなく単純なストーリーです。

主演男優賞のニコラス・ケイジ さすがに上手い

ただこのベンというアル中を演じるニコラス・ケイジはアカデミー賞主演男優賞を獲得しただけの事はあり、凄くリアルな演技をしてくれます。特にアルコール依存の中毒症状や孤独感に苛まれるシーンの演じ方はさすがに上手いですね。

サラとレストランで食事をする場面があるのですがアル中なので食欲がなく、料理を口元まで持っていこうとしても躊躇して止めてしまいます。それでも酒だけを飲み食事に付き合うふりをするベンの様子からは、かなり病状が悪化している事がナチュラルに伝わってきます。

人生山あり谷ありで、時には誰でも自暴自棄になる事もあるでしょう。一時の感情から判断を誤る事もあるでしょう。しかし生きてさえいればその先には必ず未来が待っています。もっと自分を大切にすべきです。サラがベンとの約束を破り「お願い、お酒をやめてお医者さんに行って」と説得するあたりは男性として観ていて嬉しいし、二人が真っ当な形で暮らしていける事を願うけれど、ベンの健康が既に共なわない状況になってしまった事が非常に残念。

物語のシチュエーションをラスベガスに設定したのがGood!

また、ラスベガスへは個人的に何度か訪れていますが、家族で楽しめるエンターテイメント性を持っている反面、夜ともなればホテル売春を斡旋する輩たちのチラシがあちらこちらで撒かれているという現実を考えると、まさに二面性をもつ街。この映画がハッピーエンドで終わらないという内容であるせいか、このラスベガスという街をシチュエーションとして設定しているあたりは妙に調和がとれていて面白いです。