ガンシャイ

リーアム・ニーソン&サンドラ・ブロックのラブコメディ

2000年製作  アメリカ  101分

監督

エリック・ブレイクニー

キャスト

リーアム・ニーソン サンドラ・ブロック  オリヴァー・プラット メアリー・マコーマック フランク・ヴィンセント リチャード・シフ  マイケル・ウェザリー

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク 空港 FBI

ガンシャイのあらすじ

過去の潜入捜査でのトラウマに悩む潜入捜査官

18年間覆面捜査官としておとり捜査一筋に働いてきたチャーリー(リーアム・ニーソン)は新たな麻薬組織への潜入捜査のためニューヨークに派遣される事が決まっていたが、前回の潜入捜査でチャーリーは素性がばれてしまい、危うく殺されそうになった。チャーリーはその時のトラウマの恐怖から今回の指令を断り引退を申し出ようとするが上司であるロニーに聞き入れてもらえず仕方なくニューヨークへと向かう。

チャーリーはニューヨークに向かう飛行機の中でも精神的ストレスからくる腹痛に悩まされていた。そんなチャーリーに隣席に座る精神科医が声をかけ、それが縁となりチャーリーはグループセラピーに通う事になる。グループセラピーにはチャーリーの他数人が参加していたが、彼らが抱える悩みはチャーリーにとってどれも取るに足りない悩みに過ぎず、チャーリーが自分の悩みについて話し始めると彼らは悍ましい顔をした。

数日後チャーリーは侵入捜査を開始するが、組織の輩たちと接するにつれ再び激しい腹痛に悩まされる。チャーリーは治療のため病院に行くが、そこには“浣腸の女王”こと、美しく優しい看護師ジュディがいた。ジュディはチャーリーの慢性的な腹痛は“恐れ”からくる精神的ストレスによるものと瞬時に察し、薬に頼らず完治させる方法があると言ってチャーリーの治療を引き受けた。

ジュディの治療法はユーモアと優しさに満ち溢れた独創的な治療法だった。次第にチャーリーはジュディに癒されることで潜入捜査の恐怖に耐えながら犯罪組織の解明に迫っていく。

ガンシャイのレビュー・感想

肩の力を抜いて観ることができる映画

誰しも夢はあるもの。どんなにつらい立場にいたとしても、夢や希望があればそこに向かって頑張れる。そういう“気付き”みたいなものを随所に感じさせてくれる映画。「よし!観るぞ!」と力まなくても肩の力を抜いて観ることができ、それでいて映画としての面白さも、まぁまぁ備わっているという感じ。

サンドラ・ブロックがキャストと制作を兼ねていて、マフィアが絡む潜入捜査という設定でガンアクションもあるが、そのわりにはえげつなさがひとつもなく、コメディにありがちなわざとらしいジョークもないので、飽きることなく最後まで観れる。これは製作にかかわったサンドラ・ブロックの能才なのかもしれない。

サイコ・キラーと呼ばれるフルヴィオ(オリヴァー・プラット)はマフィアのくせにトマト栽培が趣味という茶目ぷりで、可愛く野蛮さがない。

そのフルヴィオが最後にマフィアの世界から足を洗ってイタリアでトマト農家に鞍替えし、赤々と育ったトマトを手に取り満足そうな顔で汗を拭うシーンは、エンディングに流れるBig Kennyの「Under the Sun」のサントラと相まって、とてもいい顔をしている。この清々しいフルヴィオに「お前、夢叶えたな」って思わず言ってしまった。

最強のふたり

真の友情を綴ったフランスの実話

2011年製作  フランス  112分

監督

エリック・トレダノ

キャスト

フランソワ・クリュゼ  オマール・シー  アンヌ・ル・ニ  オドレイ・フルーロ

撮影ロケーション・情景

フランス パリ 大邸宅  身障者 パラグライダー  プライベートジェット

最強のふたりのあらすじ

スラム街育ちの黒人青年と富豪の障害者との出逢い

パリに住む富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は過去パラグライダーで事故を起こし、頸髄損傷により首から下が麻痺し、自分の意思で身体を動かす事ができない障害者生活を強いられていた。

ある日フィリップの介護人を雇うために行われていた面接に黒人青年ドリス(オマール・シー)がやってくる。しかしドリスの目的は雇用ではなく面接を受ける事で継続される失業保険を貰うためのものだった。

そのためドリスはフィリップや秘書であるマガリー(オドレイ・フルーロ)らに敢えてぞんざいな態度で臨み、わざと不合格になるよう努めた。これで不合格になり、それを証明する書類が貰えると思ったドリスだったが、フィリップは事もあろうに他の候補者には目もくれず、飾り気のないドリスを気に入り、試用期間1ヶ月間という条件で彼を雇い入れる。

大邸宅であるフィリップ邸に、住み込みで働くことになったドリスは自分専用の個室を与えられ部屋には大きな風呂、トイレまで完備されるほどの豪華な部屋だった。複雑な家庭環境の中、スラム街での貧祖な暮らしをしてきたドリスは大きな喜びを示した。ドリスの働きぶりはフィリップにとって少々粗雑ではあったが、自分に対し哀れみの目で見ようとせず、一人間として接してくれるドリスにフィリップは心を許していく。

ドリスは身体的な世話もさることながら、フィリップの文通相手と会えるよう勝手にお膳立てをしたり、プライベートジェットで二人で旅行に出かけるなど、二人の友情は日に日に深まっていく。しかしそんなドリスにある日家庭的な問題が起こり、事情を知ったフィリップはドリスの雇用を止め、ドリスを自宅に帰す決心をする。

その後フィリップはドリスがいなくなった生活に心にポッカリ穴があいたようになり、虚しさを感じる日々を送ることになる。

最強のふたりのレビュー・感想

素晴らしい作品を買い付けてくれた配給会社に感謝

男の固い友情を描いたフランスの実話。フィリップとドリス以外の俳優陣たちはウィキにもページが存在していないくらい比較的マイナーな映画かもしれないけれど、こんな素晴らしい作品を買い付けてくれた配給会社に心からありがとうと言いたくなる心温まるいい映画です。

ドリスは飾り気のない天真爛漫な性格ですが、面接のときにドリスの人格を見抜いたフィリップの洞察力も鋭いし、素性や過去には囚われないフィリップの寛大さは男として見ていてかっこいい。

フィリップは大富豪だけれど、いくらお金があっても、やはり埋められないものってあるんですね。“物”だけでは決して満たされないものをドリスがフィリップに与えてくれた。フィリップが無精ひげを生やし、ドリスが戻ってきた事を知った時の嬉しそうな顔がとても印象的。フィリップにとってドリスはさぞ、かけがえのない存在だったんでしょう。

自分の利益に関係なく築ける“真の友情”

そして最後に、この映画の主人公であるフィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴと彼の車椅子を押す介護人アブデル・ヤスミン・セローの二人が登場し「彼らは今でも深い絆で結ばれている」というテロップが流れるんですが、この映画が実話というだけに、その映像には深い感動を覚えますね。自分の利益に関係なく築ける真の友情って素晴らしいです。

カジノ

70年代ラスベガスのカジノの裏事情を克明に描いた映画

1995年製作  アメリカ  178分

監督

マーティン・スコセッシ

キャスト

ロバート・デ・ニーロ  シャロン・ストーン  ジョー・ペシ  ジェームズ・ウッズ  ドン・リックルズ  アラン・キング  ケヴィン・ポラック  フランク・ヴィンセント

撮影ロケーション・情景

70年代ラスベガス カジノ マフィア

カジノのあらすじ

“タンジール”の実質的なボスとなるギャンブルの神様

1970年代ラスベガス。当時ラスベガスを裏で支配していたのはトラック運転手年金協会を牛耳っていたマフィアの首領、リモ・ガッジである。彼は年金局長アンディ・ストーン(アラン・キング)と組み、巨大カジノ「タンジール」を建設しようとしていた。そこでカジノの経営責任者に白羽の矢を立てたのがカジノを知り尽くし“ギャンブルの神様”と称されたサム・ロススティーン、通称“エース”( ロバート・デ・ニーロ)である。

ある日、年金局長のストーンがエースに会い、その件を打診するがエースは過去に何度も賭博で検挙された経験があり、賭博免許など取れるはずがないと乗り気ではなかった。

しかしストーンは申請手続きをするだけで営業できるようにするといい、エースの経営方針には誰も口を出させない事も約束した。そうしてエースはタンジールの実質的なボスとして就任する。

運営責任者としてのエースの監視の目は鋭かった。カジノに出入りするイカサマ師を絶対に見逃さず徹底的に痛めつけカジノの大きな損失を防いだ。

その後もエースは絶大な手腕を発揮しタンジールの売り上げを飛躍的に伸ばしていく。

 

カジノのレビュー・感想

個人的な話になりますが、1996年、海外出張で初めてラスベガスへ行った時に感じた、魅惑的で煌びやかな、あの余韻に浸りたくて、このDVDを購入しました。この映画、実話という設定なんですが、映画に描かれるシチエーションが70年代という事で、今のラスベガスとは雰囲気が大分違う印象でしたが、当時のカジノの裏事情がよく解り、面白かったです。

そして綺麗なコーラスで奏でられるオープニングは、ラスベガスの派手派手しい表の顔とは裏腹に、暗黒街的な、別な顔のラスベガスを象徴しているかのようで、かなりシュールな気持ちになります。

エースのように完璧に仕事をこなせば、そりゃボスからの信頼も厚いだろうし、その点は見習うべきところが凄くあるなぁって感じます。エースの用心棒として派遣されたのがニッキー役のジョー・ペシですが、これは演技なのか?と思わせるくらい凶暴で、役によくハマっていますね。仕事をする男なら、ある程度自分の存在を誇示しなくちゃいけないのだろうけど、ニッキーのように“出過ぎた杭”になっちゃうと、最後はやっぱり消されちゃうんですね。普通の会社でも殺されはしませんが、突然“梯子を外される”なんていうのがありますからね。

長編にもかかわらず少しも飽きさせない展開の上手さ

総合的な感想としては、約3時間という長編にもかかわらず、少しも飽きさせない展開の上手さというか、とても面白い映画です。ただ終盤、ニッキーが弟のドミニクと一緒にトウモロコシ畑でリンチされ、殺害されるシーンがありますが、これは残酷すぎて、観ていて吐き気がするほど後味が悪いです。まあ、そこが巨匠マーティン・スコセッシの“味付け”なんでしょうが。

念のため言っておきますが、煌びやかな現代のラスベガスの情景や想い出に浸りたいと思う人が観る映画ではないですよ。

メッセージ・イン・ア・ボトル

脚本、音楽、映像、どれをとっても美しい秀作

1999年製作  アメリカ  131分

監督

ルイス・マンドーキ

キャスト

ケビン・コスナー  ロビン・ライト・ペン  ポール・ニューマン  ジョン・サヴェージ   ロビー・コルトレーン

撮影ロケーション・情景

新聞社 シカゴ マサチューセッツ 海岸 ノースカロライナ 帆船

メッセージ・イン・ア・ボトルのあらすじ

海岸の砂浜で見つけた謎めいた手紙

シカゴの新聞社で熱心な記者として働くテリーサ(ロビン・ライト・ペン)は離婚し息子ジェイソンと二人暮らし。そんなある日休みを取ったテリーサはマサチューセッツのケープコッドで休暇を楽しんでいた。

テリーサが海岸を散歩していると砂浜に埋もれた瓶を見つける。瓶のコルクを抜き中を覗くと、そこには細長く巻かれた手紙が入っていた。“愛するキャサリン”と題された手紙を読んでいくと、ある男性がキャサリンという女性への想いを綴る手紙で、文脈から察するところキャサリンという女性は既に亡くなっている事が窺えた。

休暇を終えてシカゴに戻るテリーサだったが、帰えりの飛行機の中でもその手紙を書いた主のことが気になって仕方がない。手紙を書いた人物の誠実さに心を打たれたテリーサは新聞社に戻ると仲間の記者たちにその手紙を読んで聞かせた。

テリーサの上司であるコラムニストのチャーリー(ロビー・コルトレーン)はその記事をテリーサに内緒でコラムに載せたが、プライベートな手紙を新聞に載せた事は倫理に反するとしチャーリーに抗議した。しかしその記事への世間からの反響は大きく読者からのたくさんの投書が届いた。投書の中身は賛否あったが、その中に同じような手紙を拾ったという読者からの投書があり、その手紙が同封されていた。それによりテリーサは2通の手紙を手にすることになる。

謎めいた手紙に、いても経ってもいられないテリーサは手紙の主に会ってみようと決め、あちらこちらにコネを使い、手紙を書いた主の手掛かりを探そうとする。そこにある情報が入り瓶に使われていたコルクの濡れ具合からして海に浸かっていたのは2年ぐらいであるという事が分かった。更に便箋に印字されている帆船のロゴや使われたタイプライターの機種などの情報を集め、手紙を書いた主がギャレット・ブレイクという男で、ノースカロライナ州アウターバンクス“フォスターレイン18番地”に住んでいる事を突き止める。

アウターバンクスへと向かうテリーサ

テリーサは早速アウターバンクスへと向かった。アウターバンクスについたテリーサはギャレットの家を訪れる。そこには老いた彼の父ドッジ(ポール・ニューマン)がいて、ギャレットは近くの港にいる事を教えた。港に行ってみると帆船を修理するギャレットがいた。二言三言会話を交わす二人だったがギャレットがテリーサに「船に乗ってみるか」と誘った。それから二人は次第に心を通い合わせていくがテリーサは瓶の手紙の事に結局触れらないまま、親密な関係を持ち始めていく。

メッセージ・イン・ア・ボトルのレビュー・感想

派手さはひとつもないが脚本、音楽、映像、どれもが素晴らしいと感じる映画

手紙の主にいくら興味があったとはいえ、のっけから素性の解らない男と一緒の船に乗るという危険な行為は、普通あり得ないし、少し不自然な感じがします。それとテリーサが手紙を拾ったいきさつを、もっと早い場面でギャレットに告げるべきと感じる所はありますが、“真相明かし”を少しずらす方が物語としてはドラマチックになるので仕方ないのでしょう。

最後の嵐のシーンはギャレットが心を開くようになり、テリーサとの人生を歩もうとしていた矢先の事だけに悲しすぎます。テリーサもさることながらギャレットを支え続けてきた父ドッジも、さぞかし無念だったろうと思う。

この映画は大半、テリーサとギャレットの恋愛を描いていますが、もう一つの側面に父と子の絆がテーマに描かれていますね。この二人の関係が実にいい。ギャレットがシカゴに行く時、最寄りのバス停まで父ドッジが車で送るシーンがあるのですが、緊張している息子を父がからかう場面は凄く洒落ていて、アメリカっぽいなあって感じます。

総評として派手さはひとつもないですが、脚本、音楽、映像、どれもが素晴らしいと素直に感じる映画です。

クロッシング・ガード

子供に先立たれた親の気持ちをどう受け止めたらいいのかを深く考えさせられる映画

1995年製作  アメリカ  111分

監督

ショーン・ペン

キャスト

ジャック・ニコルソン  デヴィッド・モース   ロビン・ライト   アンジェリカ・ヒューストン   パイパー・ローリー   ロビー・ロバートソン   ジョン・サヴェージ

撮影ロケーション・情景

ロサンゼルス  刑務所  グループセラピー  セメタリー(霊園)

クロッシング・ガードのあらすじ

愛娘を失い喪失した日々を送る父フレディ

とあるグループセラピーに集う人々の中にひっそりと佇む男と女。男の名はフレディ・ゲイル(ジャック・ニコルソン)女の名はメアリー・マニング(アンジェリカ・ヒューストン)である。二人は6年前に交通事故に巻き込まれこの世を去ったエミリーの父と母。

エミリーは飲酒運転をしたジョン(デヴィッド・モース)の車にはねられ、わずか7年という短い生涯を閉じた。父親フレディは愛娘を失った絶望から立ち直れず、ジョンへの復讐だけを心に秘め、喪失した日々を送っていた。一方ジョンは心の傷が癒えぬまま6年の刑期を終え3日後に出所する。

加害者ジョンへの復讐

出所を迎えた当日、ジョンは迎えに来た父母の車に乗り刑務所を後にする。殺意に燃えジョンの出所を指折り数え待ち望んでいたフレディは、ジョンの眠るトレーラーハウスに忍び込み、ジョンとの対面を果たす。フレディはジョンに銃を向け引き金を引くが弾が入っておらず未遂に終わった。

そんなフレディに対しジョンは沈着冷静な態度で語り始めた。自分の命に代えてでもエミリーを救ってやりたかったこと、一生許してはもらえないほどの罪を犯してしまったことの後悔をフレディに淡々と語り、復讐を考え直すようフレディを諭した。

フレディは「お前に俺の気持ちが解るはずがない」と啖呵を切り「3日後にまた来るから覚悟しておけ」と言い残しその場を去った。フレディは街で仲睦ましい親子を見かけると更にジョンに対し憎悪を深め、一方のジョンは良心の呵責に苛まれながら日々を送る。

そして72時間が経過しジョンを殺めようと心に決めていた3日目の夜、フレディは別れた元妻メアリーを呼び出し何かを告げようとしていた。フレディが口火を切る前にメアリーが話し始めた。それはフレディに対しての愛だった。フレディもそれを真摯に受け止めメアリーを讃えた。しかしフレディの言葉の端々にジョンへの復讐が示唆されたためメアリーはフレディを窘めるが、フレディは突然豹変しメアリーに罵声をあびせた。愛想をつかしたメアリーは席を立ち店を出た。

 

フレディとジョン壮絶な追跡劇

フレディはそこから車を運転しジョンのところに向おうとするが、蛇行運転をしたことでパトカーに止められる。フレディは酒に酔っていた。警官がフレディを逮捕しようとした一瞬をついてフレディは逃亡した。警察のヘリコプターのサーチライトを掻い潜り、フレディはジョンの家の敷地に潜り込んだ。しかしそこには銃を構えたジョンがフレディに銃口を向け待っていた。フレディがすかさず銃を構えるとジョンは銃を捨て走り出す。ジョンを追うフレディ。そこから二人の壮絶な追跡劇が始まるが、ジョンはフレディをどこかに誘おうとするかのように執拗に走り続けた。

丘を駆け上がるとジョンは立ち止まり突然その場にひざまずいた。  一体どうした事かと言わんばかりの顔をするフレディ。何とジョンがひざまずくその場所はエミリーが眠る墓だった。フレディはエミリーを失った当時、絶望から意固地になりエミリーの葬式すら顔を出しておらず状況を把握していなかった。

ひざまずくジョンは墓下に眠るエミリーに向って泣きながら「パパが来たよ。パパを救ってやって欲しい」と告げる。墓の場所、墓石の色、何一つ知ろうとしなかったフレディはその瞬間我に返り、そっとジョンに手を差し延べ涙を流した。

 

クロッシング・ガードのレビュー・感想

親として同じ境遇にあった場合、どう受け止めたらいいのかを考えさせられる映画

このクロッシング・ガードという作品は、誰が観るのかによってだいぶ感想が違ってくるように思います。決して差別発言として取らないで欲しいのですが、子供や家族を持った事がない人と、既に家族があり、同じような娘を持つ父親が観た場合とでは、おのずと感じ方も違ってくるはず。

子供に先立たれたフレディの気持ちというのは実際に当事者になってみなければ分らない部分はいっぱいあるんだろうと思う。加害者を殺めたところでエミリーは帰ってこないし、そんなことはエミリーだって望まないはず。しかしそうは分かっていながらも、子供の仇を打ちたいと思うフレディの気持ちはよく分かります。

この映画の観どころは、やはりジョンがフレディを霊園に誘い「パパが来たよ。パパを救ってやって欲しい」と告げる場面ですね。フレディも苦しんでいたけれどジョンも同じように苦しんでいた。このフレディを自分に置き換えて考えてみると、ジョンの苦悩もさることながら、自分のこれまでの愚かさを痛切に感じ、同じ娘を持つ立場の僕としては涙が止まりませんでした。エミリーの眠る場所すら知らないでいたフレディがエミリーの墓石を見て「墓石の色はピンクだったのか」と少しばかりの安堵を見せるるシーンはとても印象的です。

人は死というものを受け入れられないうちは、何をしでかすかわからない。でも自分なりに死というものを受け入れる事ができた時に、本来の自分の素直さを取り戻せるんだということを教えられたような気がします。もし自分の子供が同じような状況になったとしたなら親としてどう受け止めたらいいのか深く考えさせられる映画です。

蜘蛛女

“”蜘蛛女、獲らえて、逃して、また誘う”のキャッチコピーがピッタリの女マフィア

1993年製作  アメリカ ・イギリス合作 100分

監督

ピーター・メダック

キャスト

ゲイリー・オールドマン レナ・オリン アナベラ・シオラ ジュリエット・ルイス ロイ・シャイダー ジェームズ・クロムウェル デヴィッド・プローヴァル ロン・パールマン

撮影ロケーション・情景

アリゾナ Diner ニューヨーク 汚職警官 アメリカ砂漠地帯 マフィア

蜘蛛女のあらすじ

マフィアと手を組み、賄賂で財を蓄える汚職警官ジャック

アリゾナのレストランでアルバムを見ながら寂しげに過去を振り返る、ある男の回想シーンから物語は始まる。

その男はジャック・グリマルディ(ゲイリー・オールドマン)。ジャックはニューヨーク市警のたたき上げの刑事で巡査部長。年収5万6000ドルの彼にはナタリー(アナベラ・シオラ)という美しい妻がいるが、自分の私利私欲を叶えるため密かにマフィアと手を組み、賄賂で財を蓄える汚職警官である。

 

ある日、FBIがホテルの一室にマフィアの大物ニック・ガザーラ(デニス・ファリーナ)を保護していた。ガザーラがそこで仲間を裏切る証言をするためだった。FBIが用意した豪勢な食事を血なまぐさい会話をしながら旺盛な食欲を見せるガザーラ。

その様子を向かい側のビルの屋上から双眼鏡で盗み見るジャックは組織にガザーラの居場所をタレこみ、郵便局の私書箱から賄賂を受け取った。わずか25セントの電話代で6万5000ドルの報酬である。そんな荒稼ぎをしながらジャックはシェリーという愛人までつくり、悠々自適の生活を送っていた。

 

ロシア系女マフィアに殺害されるガザーラ

ある日ジャックが同僚たちとレストランで食事をしているとガザーラが殺されたとの報告が入った。惨殺な殺し方からしてガザーラを殺めたのはロシア系女マフィアで殺し屋のモナ・デマルコフ(レナ・オリン)だと捜査員たちは睨んだ。モナは殺し屋とは想像もつかぬ程美しく、魅力的な女だった。

市警はモナの口を割らせようとモナに司法取引を持ちかけようと企んでいた。それを聞いたジャックは早速マフィア組織に情報を流した。モナはガザーラを殺した際、彼の口を割らせようとしたFBI捜査官たちをも惨殺するという残忍さをもち、彼女の組織のボスであるドン・ファルコーネ(ロイ・シャイダー)も手を焼くほどで、彼女を煙たがっていた。このためファルコーネはモナを消すため組織の幹部をジャックの元に遣り、モナの情報を提供するよう指示した。

数日後ジャックは、司法取引のため身柄を確保されていたモナをホテルまで護送しFBIに引き渡すよう命じられる。車中のミラー越しに会話をするジャックとモナ。ジャックはこの護送を簡単な任務だと侮っていた。ホテルの部屋にモナを招き入れるとモナはその美貌をチラつかせ20万ドルで取引しようとジャックを誘惑した。モナの色仕掛けに理性を抑えようとするジャックだったが、それに堪えきれなくなったジャックは彼女を弄り(まさぐり)始めた。そしてモナがジャックの上にまたがった所にFBI捜査員たちが部屋に入ってきた。

捜査員たちが呆れ顔をする中、罠にハマり愕然とするジャックをモナは大声であざ笑った。

モナはFBIに身柄を引き渡されるはずだったが、モナが捜査官の銃を奪い逃走してしまったため、ジャックがマフィアに流した情報に矛盾が生じモナを消し損ねた。ガセネタに多大な賄賂を渡した組織のドン、ファルコーネは激怒しジャックを呼びつけた。しくじったジャックは一旦もらった金をファルコーネに返そうとするが、返す代わりにモナを殺めるようジャックに命じた。殺しは嫌だと断るジャックだったがモナを消さなければジャック本人はおろか、妻、愛人共々惨殺すると脅されジャックはとんでもない窮地に追い込まれてしまう。

蜘蛛女のレビュー・感想

編集テクニックが上手く「観るぞ!」という気にさせてくれる

この映画が日本で上映された1994年当時、通勤途中のマイカーでこの作品のCMをよく耳にしました。そのコピーが確か「蜘蛛女、獲らえて、逃して、また誘う・・」というものだったと思うのですが、そのコピーのとおりこの蜘蛛女の“モナ”が凄まじい周到ぶりで恐ろしい女マフィアを演じている様子がまさに蜘蛛女という名前にぴったりという感じです。

そして「回想シーン」で始まるオープニングの中で、多少のネタバレをしておきながら「今のは観なかったことにしてくれ」というナレーションと共に映像が現在に戻るという編集テクニックは、ハッ!とするような興味をそそり、本編に一気に引き込まれるセールスレターのリード文章みたいで、上手いなぁって思います。

そういった部分に雄大なアリゾナの風景が折り交ざって、絵面的に「観るぞ!」という気にさせてくれます。

警官の汚職は他の映画でも頻繁に出てきますが、アメリカ警官の汚職の場合、結局命まで狙われてしまうというのが常みたいですね。またこのマフィアのドン、ファルコーネの人を殺めるために他人を説得する大義というか持論が凄い。ある意味説得力がありますね。(でも最後は悲惨な結末を迎えますが)

とにかく僕個人としてはストーリーもさることながら、最初と最後に映し出されるアリゾナのDinerの景色がたまりません。アメリカ西部の情景が恋しくなった人には特に目でも楽しんでもらえる作品かと思います。

そして最後にDinerに現れるナタリーの幻想に、ジャックが嬉しそうな顔をするシーンがあるのですが、自分をジャックに置き換えて考えると切なさのあまり思わず泣けてきます。蜘蛛女という映画はそんな作品です。

ランダム・ハーツ

純粋でピュアな大人の恋愛映画

1999年製作  アメリカ  133分

監督

シドニー・ポラック

キャスト

ハリソン・フォード  クリスティン・スコット・トーマス  チャールズ・S・ダットン  ボニー・ハント  デニス・ヘイスバート  シドニー・ポラック  リチャード・ジェンキンス   ディラン・ベイカー  ポール・ギルフォイル  ピーター・コヨーテ  スザンナ・トンプソン  ビル・コッブス  ケイト・マーラ

撮影ロケーション・情景

ワシントンD.C. ワシントン郊外  アメリカンポリス  アメリカの葬儀  空港  航空機事故 選挙活動  アメリカの葬儀  マイアミ  チェサピーク湾  Lincoln

ランダム・ハーツのあらすじ

ワシントン郊外に暮らすダッチ・ヴァン・デン・ブロック(ハリソン・フォード )はワシントン市警の巡査部長で妻ペイトン(スザンナ・トンプソン)と平凡でありながらも幸せな生活を送っていた。週末のある金曜日ダッチはその晩、ペイトンと食事をしようと約束し仕事に向かう。ダッチは仕事の合間に電気店に寄り天気予報付のラジオを買った。ペイトンの父へのプレゼントである。

するとその電気店に陳列してあるテレビから、マイアミ行きのサザン航空437便の墜落事故のニュースが流れた。その事をさほど気にも留めなかったダッチはそのまま職場へと向かう。職場に着き現場に向おうとすると、ペイトンから食事のキャンセルの電話が入った事を同僚から聞かされた。妻の帰りが遅くなると察したダッチはまっすぐ家に帰らず、行きつけの店で一杯やっていた。するとそこでもサザン航空の墜落事故のニュースが流れていた。

ダッチは家に電話し妻からのメッセージが入っていないか確かめると、そこにはマイアミでのカタログ撮影でトラブルになり、急遽マイアミに行かなければならなくなったというペイトンからのメッセージが入っていた。妻の身を案じたダッチは航空会社に連絡をし、墜落機にペイトンが搭乗していたか否かを確認するが、その便にペイトンの名前は見当たらないと告げられると、ダッチは「きっと別の便に乗ったんだろう」とホッとして胸をなでおろした。

しかし他のマイアミ行きの便のスケジュールを聞くと、どれもペイトンが出かけた時間とはつじつまの合わない時間帯だったため不審に思ったダッチは、妻の職場へと向かい上司に状況を確認した。するとカタログ撮影はシーズンオフのため現在行われておらず、ペイトンのマイアミ行きは社の出張ではないと知らされる。

ペイトンが帰らぬまま数日が経った。するとダッチのところへ墜落したサザン航空の職員が訪ねてきた。職員は改めてペイトン・ヴァン・デン・ブロックという人の搭乗記録はなかったと告げるが、ダッチは職場に嘘をついてまで出かけた事に妻の不貞を感じ始めていた。ダッチは職員に乗客名簿の提示を求めた。規則で見せられないと一度断られるが、執拗に迫るダッチに職員は根負けし搭乗者名簿を手渡すと現場で妻の遺体の確認をするようダッチに求めた。

一方、ダッチ同様に遺体の身元確認を促された人物がいた。墜落した航空機に搭乗していたカレン・チャンドラー(ピーター・コヨーテ)の妻ケイ・チャンドラー(クリスティン・スコット・トーマス)である。ケイは下院議員で次期選挙に向けて再選活動中であり多忙な日々を送っていた。ケイはサザン航空の職員に対し、夫はマイアミなど行かずニューヨークに出張に出かけていると事実を否定するが、搭乗者名簿で夫カレンの名前が確認されたと告げられると素直に遺体確認に応じた。遺体の安置所となる海軍基地には納体袋に収められた遺体が所狭しと並ぶ。モニター越しに遺体を確認するダッチとケイ。

ダッチはそれから墜落事故犠牲者リストをもとに妻の隣りの席に座っていたカレン・チャンドラーの存在を知り、ペイトンとの関係を解明しようとカレンの妻ケイを訪ねた。

ランダム・ハーツのレビュー・感想

この作品の主人公がハリソン・フォード。彼が生まれたのが1942年で1999年の映画だから撮影当時彼は57歳。還暦直前の歳で純粋な男の恋心を演じきれるのはハリソンくらいではないでしょうか。特にあの目力というか、眼光の鋭さというか、物凄い純粋さを感じてしまいます。

ちなみに同世代の俳優さんにロバート・デ・ニーロやマイケル・ダグラスがいるけれど、大人の恋、純粋な恋愛を演じさせたらハリソンはぴったりとハマりますね。僕はこの3人を良く比較してしまうのですが、同じ刑事役をやるにしてもロバート・デ・ニーロとハリソン・フォードでは全くタイプが違って映るし、マイケル・ダグラスは刑事役というよりビジネスマンや投資家みたいな役の方が似合うし、とにかく青年ぽさ、純粋さという点ならハリソンが群を抜いていますね。

でも、それぞれ違う個性があるからこそ、俳優さんという職業が成り立っているのでしょうが。

 

まあ、俳優同士の比較なんて、一流ギタリスト同士を比較して、どっちが上手い?なんて言っている次元と一緒で、あまり意味ありませんが。・・(笑)

作品での感想ですが、不倫をテーマにした作品はたくさんあるけれど、同じ航空機に偽名を使って搭乗し、事故に遭って不倫がばれるという設定は意外にありそうでなかったと思うし、逆にそれが妙に現実めいていて、物語の展開としては面白かったです。クリスティン・スコット・トーマスも20年も前だから色気もあるし魅力的ですね。

ただ普通に考えて、不倫していた妻や夫の配偶者同士が恋愛関係に発展するというのはちょっと考えにくいですが、堅物同志の二人だからこそ、その意外性のある展開にこのストーリーとしての面白さがあるのでしょう。

それと、ダッチの職業が警察官という設定のためか、暴力シーンや銃撃戦のようなシーンがいくつかでてきますが、少し残念なのは、あれらのシーンは退屈さを感じさせるのでカットしてもよかったのではないかと思います。この物語に銃や暴力は似合いません。

マイ・ビューティフル・ジョー

ロードムービーならではのアメリカの情景が随所に登場

2000年製作  アメリカ  98分

監督

スティーヴン・メトカーフ

キャスト

シャロン・ストーン  ビリー・コノリー  ギル・ベローズ  ジャーニー・スモレット      イアン・ホルム  ダン・フロレク  ロジャー・クロス

撮影ロケーション・情景

NYブロンクス アメリカの競馬場  アメリカのbar  アメリカの片田舎  ラスベガス  カジノ  マフィア(ギャング)  サンフランシスコ

マイ・ビューティフル・ジョーのあらすじ

ブロンクスで花屋を営むジョー(ビリー・コノリー)はここ最近、頭痛に悩まされていた。病院で診てもらうと脳腫瘍と診断され、薬の投与だけでは治らず手術を必要とするほどの病であったが、技術的にこの手術は難しく、主治医も頭を抱えてしまう。

そんなジョーは手術を2ヶ月先に延ばしてもらい放浪の旅に出ようと考えていた。ある日、頭痛に堪えきれず仕事先から早めに帰宅したジョーは妻が自宅で修理業者と浮気をしている現場を目撃。現場を見られた妻は開き直り、ジョーに離婚を切り出す。やさしいジョーは妻を責める事なく離婚を承諾した。

競馬場で大穴を当てたジョーと擦り寄るハッシュ

数日後ジョーは競馬場で大穴を当てた。するとそこにいた元ストリッパーのハッシュ(シャロン・ストーン)がジョーをカモろうと声をかけてきた。ハッシュは無類のギャンブル好きでマフィアのボスにまで借金をしていた。ハッシュはジョーに「配当金は何に使うの?」と訊ねるとジョーは「所詮あぶく銭」と割り切り、傍で寄付を募る修道女に全額寄付をした。“金ない者”に用は無いと判断したハッシュはジョーの元を去って行った。

ハッシュのクラブの名刺を手がかりに店を訪れるジョー

数日後ジョーはハッシュが落としていったクラブの名刺を手がかりにハッシュの店を訪れる。店にはハッシュに借金の取り立てをしようとマフィアの手下であるエルトン(ギル・ベローズ)が来ていた。ハッシュはジョーを見かけると「美女と泥レスしてみない?」と持ちかけ、ジョーが美女たちと格闘している間に更衣室に潜り込みジョーの財布を盗みエルトンに渡した。

しかし返済額が足りずエルトンがハッシュの顔を殴ったことで二人は言い争いを起こす。そこにジョーがやってきた。ハッシュはどさくさまぎれに「あいつがあなたの財布を盗ったのよ」と嘘をついたがジョーはハッシュが盗んだことを気付いていた。それでもジョーはハッシュをかばいエルトンが消え去ると、ハッシュは自分の素性をジョーに打ち明けた。

 

所持金を取られ行くあてのないジョーはハッシュの家に泊めてもらう事になるが、真面目なジョーはハッシュからの夜の誘いを断わりハッシュはプライドを傷つけられ、ジョーを部屋から追い出した。ジョーは一人リビングで一夜を開ける。朝目覚めると、そこにハッシュの子供ビビアンとリーがいた。子供たちが腹をすかせている事を知ると、ジョーは材料を買ってきて子供たちにパンケーキを焼いてやった。こうして子供たちは次第にジョーに馴染んでいく。

ジョーはハッシュに取られた財布を返してもらいにギャングたちの所に乗り込もうと提案する。ハッシュは「無駄なこと」と笑い飛ばすがジョーは至って真面目だった。

マフィアのボスも一目置くジョーの正体

ジョーは早速ボスである“変態ジョージ”ことホリマン(イアン・ホルム)を訪ねた。ホリマンに会う早々、ジョーはホリマンの育てる花々やホリマンの装うファッションに触れた。するとホリマンは我に返ったようにジョーに一目置き、手荒い事もせず、すんなり財布を返した。実は巷のマフィアの世界ではアイルランド系ギャングで“伝説の殺し屋”の異名をとるビューティフル・ジョーの存在が大きく、ビューティフル・ジョーがファッション通で花に詳しいという特徴からホリマンはジョーがその人物であると信じたからだ。

それからジョーはマフィアたちの手がハッシュへに及ばぬようハッシュと二人の子供たちを連れて逃亡旅に出る。

 

マイ・ビューティフル・ジョーのレビュー・感想

ロードムービーならではの楽しさ

ジョーの包容力と愛情には脱帽っていう感じですね。ジョーのような男になれたならと心が癒されます。でもジョーは財布を盗まれたのを分かっていながら、あれだけ優しくできるのに、ハッシュは傲慢で我がまま(徐々に人間らしさを取り戻していきますが・・)。ハッシュがよほどの美人で、ジョーが並はずれたお調子者でもない限り繋がらない話ではありますが・・。

映画のストーリーとしてはすごく単純ですが、ジョーがハッシュと二人の子供たちを連れて逃亡旅に出る辺りから、映画的な醍醐味が出てきて面白くなるという感じです。

サンフランシスコやラスベガスなど、それ以外にもロードムービーならではのアメリカの情景が随所に登場しますので、アメリカ好きという人にとっては観ていて楽しい作品かと思います。

イントゥ・ザ・ワイルド

“自由”という定義を改めて考えさせられる実話映画

2007年製作  アメリカ  148分

監督

ショーン・ペン

キャスト

エミール・ハーシュ  マーシャ・ゲイ・ハーデン  ウィリアム・ハート  ジェナ・マローン  キャサリン・キーナー  ヴィンス・ヴォーン  クリステン・スチュワート  ハル・ホルブルック  ザック・ガリフィアナキス

撮影ロケーション・情景

アラスカ アトランタ、 アリゾナ メキシコ 荒野・砂漠  バックパッカー(ヒッチハイカー)  サウスダコタ カヤック(川下り)コロラド川  ロサンゼルス ソルトン・シティ

イントゥ・ザ・ワイルドのあらすじ

ある晩ビリー・マッキャンドレス(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は息子クリストファー(エミール・ハーシュ)の夢にうなされ目を覚ます。ビリーは夫ウォルト(ウィリアム・ハート)に「クリスの声が聞こえた」と告げた。ビリーがクリスの夢にうなされたのはクリスが両親に反発し、家出をしてしまっていたからである。

クリスはアトランタのエモリー大学を優秀な成績で卒業したもの、「文明に毒されるのが嫌」という独特の思想をもち、残った学費2万4500ドルを全額寄付し自由気ままな放浪の旅にでる。

「文明に毒されない」という信条をもち一路アラスカへ

クリスはオンボロのダットサン・サニーに乗り、取り敢えず西へと向かった。途中クリスは車中で仮眠をとっているところを、大雨の影響による鉄砲水に突然見舞われ、あわや間一髪というところで難を逃れた。浸水した車は動かなくなり、クリスは「文明に毒されない」という信条通り、そこに車を捨て、所持金もすべてライターで燃やしヒッチハイクをしながら一路アラスカを目指し旅を続ける。

アラスカのフェアバンクスについたクリスは雪積もる森の中に捨てられていた一台の古びたバスを見つけ、そこで「荒野暮らし」を始めるが、そこにはクリスにとって思いもよらぬ壮絶な結末が待っていた。

イントゥ・ザ・ワイルドのレビュー・感想

ショーン・ペンが独特の感性で映画化した実話

クリストファー・マッキャンドレスという人の壮絶な人生をショーン・ペンの独特の感性で映画化した実話です。

冒頭から随所に、クリスの妹であるカリーンの兄への想いがナレーションで綴られています。クリスにしてみれば、いろんな考えがあっての家出なのでしょうが、兄妹の立場としてのカリーンのナレーションにはクリス自身の主張や権利が美化され過ぎているのではと感じてしまいます。

昔、誰かが言っていたのを思い出しました。「自由とは自分の両腕を思い存分振り回す事の出来る権利。ただし、その腕の中には誰も存在しない事」っていうのを・・。

自由になる事を夢みるのは悪い事ではないけれど、誰かに迷惑をかけるような自由なら、もはやそれは“自由”とは言えないと思う。その迷惑の矛先が親であるからなお悲しい。

自分も散々親には心配をかけてきましたが、自分が親になればそれがどういうことなのかよく解るはず。公衆電話で小銭が切れそうになった老人に、クリスが小銭を恵んでやるシーンがありますが、あんな風に他人には優しくできるのに、なぜか自分の親となると素直になれない。

終盤、父ウォルトがさ迷いながらクリスを探すのですが、どうにもならない現実に泣き崩れる場面があります。あの姿に親心の全てが集約されているように思います。結局は、クリス自身も孤独には勝てないと悟り、改心した矢先の最期であるだけに、本人もさることながら、ご両親の無念さは察するに余りある。

エンド・ロールが始まった直後にバスにもたれかかり写真に納まるクリストファーの実写が登場しますが、これはとても衝撃的。

彼の尊厳を汚すつもりはないけれど、写真に向って言ってやりたい。「何が自由だ!お前は大バカ者だ!」「お前の亡骸を引き取りに来たカリーンの気持ちを考えてみろ!」とね。

アデライン、100年目の恋

「過去恋愛の回想」などという簡単な言葉では片づけられない衝撃の展開

2015年製作  アメリカ  112分

監督

リー・トランド・クリーガー

キャスト

ブレイク・ライヴリー  ミキール・ハースマン  ハリソン・フォード  エレン・バースティン  キャシー・ベイカー  アマンダ・クルー  リンダ・ボイド  フルヴィオ・セセラ

撮影ロケーション・情景

サンフランシスコ ゴールデンゲートブリッジ イエローキャブ サーブ 過去恋愛の回想 イギリス郊外

アデライン、100年目の恋のあらすじ

1908年1月1日。サンフランシスコのとある小児病院でアデライン・ボウマン(ブレイク・ライヴリー)は生まれた。両親はフェイとミルトン。兄弟はいなかった。

アデラインが21歳になった1929年6月16日、彼女は母親とゴールデンゲートブリッジの建設工事の見物におとずれていた。その時、彼女の帽子が風で飛ばされ湾に流されそうになり、そこに偶然通りかかった若き技師クラレンスJブレスコットが帽子を拾い彼女に紳士的な気遣いをみせた。

それから87日後、二人はサンフランシスコの聖メアリー大聖堂で華やかな結婚式を挙げ、それから3年後、アデラインは女の子を出産した。赤子は彼女の父方の祖母の名前からフレミングと名付けられた。

1937年2月17日、ゴールデンゲートブリッジの工事が進められる中、足場の崩落事故が発生し作業員8人が命を落とした。アデラインの夫もその中の一人だった。

スリップ事故を機にアデラインに奇妙な現象が

夫の死から10か月後、アデラインは両親の海辺の別荘へ車を走らせていた。そこには5歳になった娘フレミングが待っていた。しかしその時、信じられない奇妙なことが起きる。それはまるで魔法のような出来事だった。温暖なカリフォルニアのソノマ郡に雪が降り、雪道に慣れていないアデラインはスリップ事故を起こしまい凍てつくような冷たい川に転落した。あまりの冷たさに彼女の身体は反射的に無酸素状態に陥った。

直ぐに呼吸は止まり、心拍も弱まった。2分もしないうちにアデラインの体温は30.5度まで急落した。そして彼女の心臓は鼓動を止めた。そしてしばらくすると稲妻が走り彼女の車を直撃。その稲妻は5億ボルトもの電気を放ち、6万アンペアという電流が流されたが、それは3つの効果をもたらす結果となった。

まず1つは電気エネルギーで彼女の心臓が復活した。そして2つ目に無酸素状態から解かれ、2分後には第一呼吸を引き起こした。そして3つ目は2035年にフォン・レーマン博士によって発見されるDNAの電子圧縮論のとおり、アデラインはこの時点から時間の経過による破壊作用を一切受けない受けない体となり、今後一切老いる事のない身体となる。

アデラインは年を経ても変わらぬ容貌の理由を「健康的な食事と運動、そして遺伝と運のお蔭」と周囲に説明していた。街で昔のクラスメイトと会っても、誰もがアデラインの変わらぬ若々しい姿に驚き、愛娘フレミングとは姉妹と間違えられるほどの美貌を保っていった。しかし1953年ある事件が起こった。

閑静な住宅街に住むアデラインは些細な交通違反で警官に呼び止められ運転免許証の提示を求められる。免許証に1908年生まれと記載されていた事でどう見ても45歳には見えない実年齢とのギャップに不信を抱いた警官は、免許証を取り上げ出生証明書を署に提出するよう求めた。

自分の正体が暴かれる事を察した彼女は直ちにサンフランシスコへ舞い戻り、身を隠すようにジェニー・ラーソンという偽名を使って医科大学の事務職に就いた。彼女は仕事上の立場を利用し、自分の体の状況について懸命に調べていった。一年間調べ上げた結果、ジェニーに突き付けられたのは彼女の体の異変は科学では説明のつかないという事実だった。

ある雨の降る夜、二人の男が「アデライン?」と声をかけた。FBIだった。彼女は「私はジェニー・ラーソン、人違いよ」と誤魔化すが、居住記録がないという理由から車に乗せられ連行される。本部へ連行するための飛行機が空港で待機していたが、捜査員2人が車を離れた隙に、彼女は車の後部座席を壊しトランクルームに抜け脱出した。彼女は裸足のまま必死に車から家へと逃げ帰った。「もうここにはいられない」と悟った彼女は手際よく荷物をまとめ、愛娘フレミングに別れを告げ逃亡を決心する。

そして彼女は二人の自由と安全のため誓った。その誓いとは、居場所を転々と移す事、名前も住所も容姿も10年毎に変える事、そしてこの事実を決して口外しない事だった。

逃亡生活から7週間後、彼女はジェニー・ラーソンの名前を捨て、今度はスーザン・フライシャーという名前を使いオレゴン州の農家に住まいを移した。以来彼女はたった一度の例外を除いて60年間誓いを守る事になる。

アデライン、100年目の恋のレビュー・感想

歳をとらないで永遠に若くいられるというのは女性からすれば一見羨ましい話。しかし今後一切老いる事のない現象がもし自分の体に起こり、いつまでも歳をとることが出来ないという立場に立たされた時の苦悩というものが、どんなに苦しいものかアデラインが悩む心の動きによく表れています。

アデラインを演じたブレイク・ライヴリーという女優さん、過去に「ゴシップガール」や「HICK ルリ13歳の旅」で見たことはありましたが、正直、図抜けて美人とは感じたことがなかったですが、この作品でのライヴリーは超綺麗で魅力的ですね。

また、この作品はラブストーリーであり、ちょっぴりミステリアスな部分も持つ作品ですが、この非現実的な物語のあらすじをこのサイトに纏める際、初めは描かれる展開のままあらすじを書いていたのですが、過去のプロットと現在の様子とが激しく織り交ざっているので、このままあらすじを書いていってもたぶん物語として話が繋がらなくなってしまうだろうなって思ったため、実際の展開を全く無視して、時系列であらすじを纏めた次第です。

なので、このあらすじだけを読んでも、大して面白みのないような映画に思えてしまうかもしれませんが、実際は過去の回想と現在とを上手に織り交えて編集されていますので、とても面白いミステリアスな内容に仕上がっています。そう考えると、映画ってホント、作り方次第だなあって、つくずく考えさせられてしまいます。

中盤を過ぎ、ハリソンフォードが出てくるあたりから、単に「過去恋愛の回想」などという、単純な言葉では片づけられない衝撃の展開が待っています。