アデライン、100年目の恋

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「過去恋愛の回想」なんていう簡単な言葉では片づけられない衝撃の展開

2015年製作  アメリカ  112分

監督

リー・トランド・クリーガー

 

キャスト

ブレイク・ライヴリー  ミキール・ハースマン  ハリソン・フォード  エレン・バースティン  キャシー・ベイカー  アマンダ・クルー  リンダ・ボイド  フルヴィオ・セセラ

 

撮影ロケーション・情景

サンフランシスコ ゴールデンゲートブリッジ イエローキャブ サーブ 過去恋愛の回想 イギリス郊外

 

 

アデライン、100年目の恋のあらすじ

1908年1月1日。サンフランシスコのとある小児病院でアデライン・ボウマン(ブレイク・ライヴリー)は生まれた。両親はフェイとミルトン。兄弟はいなかった。

アデラインが21歳になった1929年6月16日、彼女は母親とゴールデンゲートブリッジの建設工事の見物におとずれていた。その時、彼女の帽子が風で飛ばされ湾に流されそうになり、そこに偶然通りかかった若き技師クラレンスJブレスコットが帽子を拾い彼女に紳士的な気遣いをみせた。

 

それから87日後、二人はサンフランシスコの聖メアリー大聖堂で華やかな結婚式をあげ、それから3年後、アデラインは女の子を出産した。赤子は彼女の父方の祖母の名前からフレミングと名付けられた。

1937年2月17日、ゴールデンゲートブリッジの工事が進められる中、足場の崩落事故が発生し作業員8人が命を落とした。アデラインの夫もその中の一人だった。

夫の死から10か月後、アデラインは両親の海辺の別荘へ車を走らせていた。そこには5歳になった娘フレミングが待っていた。しかしその時、信じられない奇妙なことが起きる。それはまるで魔法のような出来事だった。温暖なカリフォルニアのソノマ郡に雪が降り、雪道に慣れていないアデラインはスリップ事故を起こしまい凍てつくような冷たい川に転落した。あまりの冷たさに彼女の身体は反射的に無酸素状態に陥った。

直ぐに呼吸は止まり、心拍も弱まった。2分もしないうちにアデラインの体温は30.5度まで急落した。そして彼女の心臓は鼓動を止めた。そしてしばらくすると稲妻が走り彼女の車を直撃。その稲妻は5億ボルトもの電気を放ち、6万アンペアという電流が流されたが、それは3つの効果をもたらす結果となった。

まず1つは電気エネルギーで彼女の心臓が復活した。そして2つ目に無酸素状態から解かれ2分後には第一呼吸を引き起こした。そして3つ目は2035年にフォン・レーマン博士によって発見されるDNAの電子圧縮論のとおり、アデラインはこの時点から時間の経過による破壊作用を一切受けない受けない体となり今後一切老いる事のない身体となる。

 

アデラインは年を経ても変わらぬ容貌の理由を「健康的な食事と運動、そして遺伝と運のお蔭」と周囲に説明していた。街で昔のクラスメイトと会っても、誰もがアデラインの変わらぬ若々しい姿に驚き、愛娘フレミングとは姉妹と間違えられるほどの美貌を保っていった。しかし1953年ある事件が起こった。

閑静な住宅街に住むアデラインは些細な交通違反で警官に呼び止められ運転免許証の提示を求められる。免許証に1908年生まれと記載されていた事でどう見ても45歳には見えない実年齢とのギャップに不信を抱いた警官は、免許証を取り上げ出生証明書を署に提出するよう求めた。

自分の正体が暴かれる事を察した彼女は直ちにサンフランシスコへ舞い戻り身を隠すようにジェニー・ラーソンという偽名を使い医科大学の事務職に就いた。彼女は仕事上の立場を利用し、自分の体の状況について懸命に調べていった。一年間調べ上げた結果ジェニーに突き付けられたのは彼女の体の異変は科学では説明のつかないという事実だった。

ある雨の降る夜、二人の男が「アデライン?」と声をかけた。FBIだった。彼女は「私はジェニー・ラーソン、人違いよ」と誤魔化すが、居住記録がないという理由から車に乗せられ連行される。本部へ連行するための飛行機が空港で待機していたが、捜査員2人が車を離れた隙に彼女は車の後部座席を壊しトランクに抜け脱出した。彼女は裸足のまま必死に車から家へと逃げ帰った。「もうここにはいられない」と悟った彼女は手際よく荷物をまとめ愛娘フレミングに別れを告げ逃亡を決心する。

そして彼女は二人の自由と安全のため誓った。その誓いとは、居場所を転々と移す事、名前も住所も容姿も10年毎に変える事、そしてこの事実を決して口外しない事だった。逃亡生活から7週間後、彼女はジェニー・ラーソンの名前を捨て、今度はスーザン・フライシャーという名前を使いオレゴン州の農家に住まいを移した。

以来彼女はたった一度の例外を除いて60年間誓いを守る事になる。

 

 

アデライン、100年目の恋のレビュー・感想

 

歳をとらないで永遠に若くいられるという部分では女性からすれば一見羨ましい話。しかし今後一切老いる事のない現象がもし自分の体に起こり、いつまでも歳をとることが出来ないという立場に立たされた時の苦悩というものがどんなに苦しいものかアデラインが悩む心の動きによく表れています。

アデラインを演じたブレイク・ライヴリーという女優さん、過去に「ゴシップガール」や「HICK ルリ13歳の旅」で見たことはありましたが、正直、図抜けて美人とは思ったことがなかったですが、この作品でのライヴリーは超綺麗で魅力的ですね。

また、この作品はラブストーリーであり、ちょっぴりミステリアスな部分も持つ作品ですが、この非現実的な物語のあらすじをこのサイトに纏める際、初めは描かれる展開のままあらすじを書いていたのですが、過去のプロットと現在の様子とが激しく織り交ざっているので、このままあらすじを書いていってもたぶん物語として話が繋がらなくなってしまうだろうなって思ったため、実際の展開を全く無視して時系列にしてあらすじを纏めてあります。

なので、このあらすじだけを読んでも、大して面白みのないような映画に感じてしまうかもしれませんが、実際には過去の回想と現在とを上手に織り交えて編集されていますので非常に面白いミステリアスな内容に仕上がっています。そう考えると、映画ってホント、作り方次第だなあって、つくずく感心してしまいます。

中盤を過ぎ、ハリソンフォードが出てくるあたりから、単に「過去恋愛の回想」なんていう単純な言葉では片づけられない衝撃の展開が待っています。

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幸せがおカネで買えるワケ

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成功者の“見てくれ”だけを真似ても、決して成功者にはなれない

2009年製作  アメリカ  96分

監督

デリック・ボルテ

 

キャスト

デミ・ムーア  デイヴィッド・ドゥカヴニー  アンバー・ハード  ベン・ホーリングスワース  ゲイリー・コール  グレン・ヘドリー  ローレン・ハットン

 

撮影ロケーション・情景

アメリカ郊外 大豪邸 マルチ商法 アウディ

 

 

幸せがおカネで買えるワケのあらすじ

とある高級住宅街に越してきたジョーンズ一家。 彼らは高価な調度品に修飾された大邸宅に住み、高級車を乗り回し、化粧品や家電、レジャー用品に至るまで身の回りにあるもの全てが高級思考。そんな彼らがここに越してきた理由はただひとつ。このエリアに住む人々の平均所得が10万ドルを超えている事にあった。

一家は住宅から車、日用品に至るまでありとあらゆる製品を販売する企業の販売員で、自分たちの華麗な生活ぶりに憧れを抱かせ、バンドワゴン効果(集団帰属欲)を利用し、自社製品の販売促進を狙うのが目的だった。当然、家族というのはダミーであり全員組織に雇われた販売ユニット仲間である。

 

彼らの狙い目通り、近隣の人々は彼らに憧れを抱き、同様のライフスタイルを送ろうと一家の薦める商品を躊躇なく購入していく。

隣に住むすサイモンズ家の妻サマー(グレン・ヘドリー)はロバスチャン化粧品の販売員をしており夫ラリー(ゲイリー・コール)と二人暮らし。ジョーンズ一家が隣りに越してきた縁で自分のセールスにつなげようと早速ジョーンズ家に引っ越し祝いを持参し挨拶に出向いた。もちろん引っ越し祝いの品はロバスチャン化粧品の新作サンプルである。ジョーンズ一家もカモがきたとばかりに一家総出で出迎え、仲のいい家族を演じた。部屋に通してもらったサマーとラリーだったがサマーはロバスチャン化粧品を売りつけようと美貌の秘訣や肌管理の極意を力説するが、同様に化粧品を扱うジョーンズ一家の面々は“猪口才な”と言わんばかりのシラケ顔で彼女の話を聞き流した。

 

ジョーンズ家の佇まいの豪華さに目を見張るサマーに、スティーヴの偽妻ケイト(デミ・ムーア)は部屋を見てみる?とサマーを案内した。サマーは早速インテリアに興味を持ち憧れを抱き始めていた。

サマーたちも帰り就寝に就こうとスティーヴが寝室に入る。綺麗にベッドメイクされたフカフカのベッドの前に来ると幾重にも並べられていたクッションを床に投げつけ床に入った。寝室もご多分に漏れず見込み客のためのデコレーションであり、実用的でなかったからである。

翌朝一家はきょう一日のスケジュールを確認し合った。娘役ジェニファー(アンバー・ハード)と息子役ミック(ベン・ホーリングスワース)たちは、きょうが高校への初登校。スティーヴはゴルフ、ケイトは美容室とスケジュールを入れていくが、これらはすべて見込み客を作るための行為である。娘ジェニファーは初登校に遅刻。しかしクラスメイトたちとは直ぐに打ち解けた。

スティーヴがゴルフの練習をしているとお隣さんのラリーが通りがかる。一緒にコースを回ろうとラリーはスティーヴを誘った。誘いを受けたスティーヴはいずれラリーにニューモデルのクラブセットを売り込もうと先を目論んでいた。

一方ケイトは美容室でオーナーのビリーと会話が弾み、ビリーは彼女の容姿端麗さや、一流品を持ち歩く振舞いに直ぐに興味を持った。ビリーはランチパーティーを開いてあげるとケイトにお膳立てをし、ケイトはそこで大がかりなセールスを企んだ。このようにジョーンズ一家のセールスが始まり、彼らは次々と売り上げを伸ばして行く。

ところが、スティーヴに洗脳され次第に浪費がエスカレートしていった隣人ラリーは、ついに経済的困窮に追い込まれ自宅プールで浸水自殺を図る。自責の念に駆られたスティーヴはそこで自分たちの素性を世間に暴露した。スティーヴの裏切りにより司法からの捜査を恐れたスティーヴ以外の3人は次なる街へと逃亡を謀る。

 

 

幸せがおカネで買えるワケのレビュー・感想

 

平均所得が10万ドルを超える高級住宅地という事で設定されているとはいえ、ジョーンズ一家のみならず近隣の豪華な邸宅が連なる風景には日本では考えられないほどの浮世離れした風情を感じます。あんな豪邸に住めるなんて羨ましい限りです。

日本で引っ越しとなると、面倒で煩わしいだけですが、輸送はもとより、家具や調度品のセッティングに至るまで全て業者にやってもらうシーンには、まさに“金があれば何でもできる”という感じですね。

確かにセールスには心理学的なところがあって、洗脳はつきものですが、自宅にお客を招き、ホームパーティをして一度に多くの商品をセールスするというビジネスモデルは、アメリカではある程度メジャーなんでしょうが、サマーがマルチ商法的なビジネスに洗脳され、成功という言葉を呪文のように唱える様子は、アメリカ発祥の某ネットワークビジネスを連想させますね。

ラリーは結局あんな悲惨な結果になってしまいましたが、成功者の“見てくれ”だけを真似ても、決して成功者にはなれないという至極単純な事を、もっと普通に知っていて欲しかったですね。

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激突!

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監督無名時代でも“流石!”と思わせるスピルバーグの手腕

1971年製作  アメリカ  90分

監督

スティーヴン・スピルバーグ

キャスト

デニス・ウィーバー  ジャクリーン・スコット  エディ・ファイアストーン  ルー・フリッゼル  ルシル・ベンソン  キャリー・ロフティン

 

撮影ロケーション・情景

カリフォルニア州の山脈・砂漠 サザン・パシフィック鉄道

 

 

激突!のあらすじ

 

セールスマン、デイヴィッド・マン(デニス・ウィーバー)はクライアントとの契約のため愛車プリムス・ヴァリアントに乗り早朝商談先へと出発した。ハイウエイを抜け、山岳地帯の荒野に差し掛かると前方に大型のタンクローリーがモクモクと煙を吐きながらのろのろ走っていた。撒き散らされる排気ガスにも堪えがたかったが、デイヴィッドは商談に遅れる事を懸念しタンクローリーを追い越した。

するとさっきまでやおらに走っていたタンクローリーは一気に速度を上げ幅寄せするようにデイヴィッドの前に割り込んだ。呆れ顔をするデイヴィッドは、仕方なくまた後に回ったが、タンクローリーは減速し進路の妨害を始めた。よくある嫌がらせと意に介さなかったデイヴィッドは再びタンクローリーを追い抜くと、タンクローリーはものすごい警笛を鳴らし威嚇した。デイヴィッドは相手にせず、そのまま暫くラジオを聞きながら車を走らせた。

 

 

デイヴィッドはほどなくして、給油のためガソリンスタンドに立ち寄った。するとそこにさっきのタンクローリーが入ってきてデイヴィッドの隣の給油レーンに停車した。デイヴィッドは運転手がどんな人物か車窓越しに確かめたが、運転席には既に誰もいなかった。

運転手が気になり、戦々恐々と周囲を見渡すデイヴィッド。するとタンクローリーのタイヤを靴底で蹴りながら空気圧を確かめる運転手らしき者がいた。しかし顔や姿は大きな車両が死角となって知る事は出来なかった。ただ、キャメル色のウエスタンブーツを履いている事だけはわかった。

 

ガソリンスタンドの店主が給油口にノズルを差し込み給油を始まると「エンジンルームも見ておきましょう」といいボンネットを開けた。デイヴィッドはラジエーターホースの傷みを指摘されたが、「知ってるよ。今度でいい」と気に留めなかった。給油をしている間デイヴィッドは妻(ジャクリーン・スコット)に電話をしょうとして店主に両替を頼んだ。するとタンクローリーの運転手が「早くしろ」と言わんばかりに、けたたましくホーンを鳴らした。運転手の気の荒さをデイヴィッドは感じた。

給油を済ませたデイヴィッドはスタンドを後にした。しばらく走りデイヴィッドがルームミラーを覗くと、あのタンクローリーが凄まじい勢いで後を追ってきた。タンクローリーにぴたりと着かれたデイヴィッドは煩わしさを感じ、手招きしタンクローリーに道を譲った。するとタンクローリーはデイヴィッドの車を追い越すとまたも幅寄せをし前に割り込んだ。そのまま走り去ってくれたらいいものを、タンクローリーは再び減速し進路の妨害を繰り返した。「譲ってやったのだから早く行けよ」と呆れ顔をするデイヴィッドだったがタンクローリーは進路の妨害を続けた。

道路が追い越し車線に切り替わった時である。タンクローリーを追い越そうとデイヴィッドが左車線に移ると、タンクローリーも左によってそれを阻み、右に出ようとすれば右に蛇行し追い越しをさせない。このままでは商談に間に合わないとデイヴィッドがやきもきしていると、タンクローリーは先に行けとばかりに窓から手招きをしデイヴィッドを誘った。

 

タンクローリーの運転手が道を譲ってくれたと思ったデイヴィッドが追い越そうとすると対抗車が現れ間一髪のところで対向車をかわし衝突を逃れた。タンクローリーの運転手は前方が見えないカーブに差し掛かった時、敢えて追い越しをさせ、対向車両と正面衝突させる魂胆だった。さすがのデイヴィッドもこれには殺意を感じた。

どうすればこのタンクローリーから離れられるのかデイヴィッドは考えた。すると、少し先に脇道が見えてきた。あの脇道が追い越す唯一のチャンスだとデイヴィッドは睨んだ。脇道に差し掛かるとデイヴィッドは思いっきりアクセルを踏み込んで脇道に逸れ、見事タンクローリーを追い抜く事に成功した。デイヴィッドはハンドルを叩いて喜び、「してやったり」とばかりのドヤ顔をみせ、タンクローリーに手を振った。デイヴィッドはしばらく安堵の表情で車を走らせた。

 

しかし、それもつかの間、タンクローリーは猛スピードでデイヴィッドを追ってきた。ハイパワーのディーゼルエンジンのタンクローリーは、急速にその距離を縮めホーンを鳴らしデイヴィッドを煽る。デイヴィッドはとっさに急ブレーキを踏み空き地に逃げ込んだ。そのはずみでデイヴィッドは車をスピンさせ駐車場フェンスに車を突き当てた。その衝撃でデイヴィッドは首に鞭打ちを負ってしまう。近所の農夫たちが心配そうにデイヴィッドに詰め寄ると、デイヴィッドは「タンクローリーに殺されかけた」と話すが、農夫たちは脳震盪で幻想を見たんだろうと、取るに足りない態度を見せた。

デイヴィッドは車から降りおぼつかない足取りで向かい側にあるレストランに入った。席に着き冷静さを取り戻そうとするデイヴィッド。なぜこんなことになってしまったのか事態を顧みながらトイレの洗面台で顔を洗い頭を冷やす。ケガをしたもののタンクローリーと訣別できたと思ったデイヴィッドは「もう済んだ事。忘れよう」とトイレから戻り席に着こうとした。その時だった。何気に窓から駐車場を見ると、あのタンクローリーが止まっていた。

愕然としたデイヴィッドはレストラン内を見渡し戦々恐々とする。唯一の手掛かりとなるキャメル色のウエスタンブーツも、そこにいるすべての者が一様に同じようなブーツをはいていてデイヴィッドを困惑させた。デイヴィッドは取り敢えず席に着き食事をしながら対策を練ろうとした。年配のウエイトレスに出された水を一気に飲み干すと、デイヴィッドはライ麦パンのチーズサンドを注文し、ついでにもう一杯の水とアスピリンを頼んだ。デイヴィッドは待つ間、色々と考えを巡らせるが、デイヴィッドは努めて都合のいいように解釈した。「別に待ち伏せをしていたわけでなく昼時間なのでたまたまここに立ち寄っただけ。このあたりは他に店もないし。そうだ、そうに決まっている」。デイヴィッドそう信じたかった。

するとウエスタンブーツを履いた客の一人が勘定を済ませ店を出た。デイヴィッドはこの男がタンクローリーの運転手ではと窓越しに目を遣った。男がタンクローリーに向い歩いていく。男はタンクローリーのフロントバンパー辺りを撫でまわしながら運転席側に消えた。「あの男なのか?」と思った瞬間、男はタンクローリーの奥に停めていたピックアップトラックに乗り駐車場から出て行った。彼ではなかった。

デイヴィッドは「一体誰なんだ」と店内を見渡す。すると店の奥で一人ビールを飲みながらサンドイッチを食べている男が目に入った。この男もやはりキャメル色のブーツを履いていた。もはやうつ状態になっていたデイヴィッドは男に近づき、闇雲に「もうやめてくれないか」といった。男は「何を?」と聞き返した。この男が犯人と一方的に思い込んでいるデイヴィッドは男に唐突に詰め寄った。「何の話だ」と意に介さない男の手をデイヴィッドが叩いた瞬間、男のサンドイッチが床に落ちた。

難癖をつけられた上に食事の邪魔をされた男は激怒しデイヴィッドに殴り掛かった。そのまま男は怒って店を出た。殴られ、失墜するデイヴィッドに店主は「出て行ってくれ」と告げると、デイヴィッドは立ち上がり外を見る。怒って店を出て行った男がトラックに乗り走り出す。またしてもタンクローリーではなく違うトラックだった。デイヴィッドは愕然とした。すると突然外でトラックのエンジン音が聞こえた。駐車場に停まっていたあのタンクローリーである。デイヴィッドは店を飛び出し、走り去ろうとするタンクローリーを駆け足で追ったがタンクローリーそのまま走り去った。フラフラの状態で車に戻ったデイヴィッドも再び出発した。

 

しばらく車を走らせ山道に差し掛かると、一台のスクールバスがオーバーヒートを起こし救援を求めていた。デイヴィッドは嫌々ながらもヴァリアントの車体をバスの後ろに充て押してやろうと試みるが、ヴァリアントとスクールバスの車高が合わないためヴァリアントの車体がバスのバンパーの下に挟まりヴァリアントは動けなくなってしまった。デイヴィッドが何とかバスから離そうと試みていると前方にあのタンクローリーが現れた。

どうにかこうにかヴァリアントをバスから切り離すことが出来たデイヴィッドは慌てて車を走らせ足早に逃げた。しばらく車を走らせると踏切があり貨物列車が横断中だった。踏切で停車し列車の通過を待っていると「ゴツン」という音とともに車が揺れた。

ミラーを覗くとあのタンクローリーが踏切内にデイヴィッドの車を押し出そうとしていた。明らかに男はデイヴィッドを殺めようとしていた。デイヴィッドはとっさにギアをバックに入れ替え、タンクローリーに対抗したが、タンクローリーの馬力は相当なもので、危うく列車に巻き込まれそうになったところで踏切の遮断機が開いた。勢いあまりそのはずみでデイヴィッドはすぐそばにある路肩に車を乗り上げた。タンクローリーは不気味な警笛を鳴らし過ぎ去って行った。

 

列車に巻き込まれず命拾いをしたデイヴィッドは胸をなで下ろし再び車を走らせた。デイヴィッドは心身ともに相当疲れ切っていた。そんなデイヴィッドが峠を上り、下り坂に入ろうとした時、前方にタンクローリーが走っていた。上り坂のため前が見えなかったのだ。

命の危険を感じたデイヴィッドは通り沿いにあったドライブインに逃げ込み、公衆電話から警察に助けを求めた。デイヴィッドが公衆電話で警察と話をしていると、タンクローリーは公衆電話めがけ突進した。デイヴィッドはとっさに身をかわすが、タンクローリーは店や飼っている動物小屋もろとも踏み倒し、デイヴィッドの後を執拗に追った。

血眼で逃げるデイヴィッドはとっさにハンドルを切り、鉄道脇の枝道に逃げ込み身を隠した。それに気づかぬタンクローリーはそのまま走り去った。そしてデイヴィッドはタンクローリーとの距離を少しでも離そうと、しばらくそのまま眠り込んだ。

 

眠っていたデイヴィッドだったが、突然大きなホーンが鳴った。あのタンクローリーが再び襲ってきたのかと思いデイヴィッドは飛び起きた。しかしそのホーンはタンクローリーではなく傍を通る貨物列車の警笛だった。タンクローリーのホーンの音が頭から離れず、全てあのホーンに聞こえてしまっていた。それが貨物列車だと知ると極度の安堵でデイヴィッドは大笑いした。

 

気を取り直しデイヴィッドは再びハンドルを握り走り出す。しかし突然デイヴィッドはブレーキを踏み車を止めた。先方にタンクローリーが待っていたからである。

あまりの執拗さにもう逃げきれないと悟ったデイヴィッドは、とうとうタンクローリーとの対決を決意する。シートベルトを締め直し、臨戦態勢に入ったデイヴィッドは、待ち構えるタンクローリーの横を静かに通過し、「ついてこい!」とばかりに挑発してみせた。

 

物凄い勢いでデイヴィッドの後を追うタンクローリー。アクセルをフルに踏み込み猛スピードで逃げるデイヴィッド。タンクローリーとの距離はだいぶ離れていたが、ハイパワーのタンクローリーにその距離を徐々に詰められてしまう。

十数メートルのあたりまで距離を詰められた時、道路は上り坂に差し掛かった。上り坂ではあの巨大なタンクローリーではさすがに追いつかず、デイヴィッドの車が見えなくなるほど距離を離された。ところが安心したのもつかの間、デイヴィッドが後ろを見ると車は大量の煙を放っていた。車のラジエターホースから水が漏れ、オーバーヒート直前の状態だった。ガソリンスタンドでラジエターホースの交換をしなかったことが仇となった。

デイヴィッドの車は悶々と煙をまき散らし、見る見るうちに速度が落ち、エンスト寸前である。もはやこれまでかと思われた時に道路が下り坂に差し掛かかった。デイヴィッドはギアをニュートラルに入れ替え車は坂道を下った。徐々にスピードが上がるが、勢いあまってデイヴィッドはコントロールを失い、壁にぶつかり車が止まった。今にもエンジンが止まりそうな状態だったがデイヴィッドは逃げ続けそのまま峠にある崖へとタンクローリーを誘った。

崖下を背に車を止めたデイヴィッドはタンクローリーが向かってくるのを待った。案の定、タンクローリーはものすごいスピードでデイヴィッドの車に向ってきた。デイヴィッドは助手席にあったアタッシュケースをアクセルに挟み込んだ。そしてタンクローリーめがけて正面衝突を試みる。

アクセルペダルにアタッシュケースをかませ、衝突する直前にデイヴィッドは車から飛び降りた。デイヴィッドの車に凄まじい勢いで激突したタンクローリーは勢いに任せデイヴィッドの車を押しやるが、煙と砂埃に視界を遮られていたため、その先が崖である事に気付くのが遅れた。慌ててタンクローリーはブレーキを踏むが間に合わず、ヴァリアント共々、崖下に転落し大破した。運転手は息絶え、デイヴィッドは死の恐怖からようやく解放された。

 

 

激突!のレビュー・感想

 

この映画は一種のロードムービーに当たるんでしょうが、映し出される景色はアメリカの山間部の荒野がほとんどです。でも巧みなカメラワークで進めていくので全く飽きません。ちなみに昔、僕が1時間半の時間をかけて会社の会議のため車で移動する際、この映画を車中で流していたんですが、乗っていた3人全員がひとりも居眠りすることなく最後まで観入っていました。中途半端な愚作だったら1時間以上も乗っていれば寝てしまうはずですよね。(笑)

そしてこの作品の監督が、監督としてデビューして間もない無名時代のスピルバーグだというから、やっぱり才能ある人って違うんだなあって感心してしまいます。ちなみにこの時のスピルバーグ監督の若かりし姿が、デイヴィッドが警察に通報する公衆電話のガラスになぜか映り込んでいますから「あらまぁ」という感じで面白いです。

この「激突!」は英語でも吹替えでもどちらでも楽しめると思いますが、主人公デイヴィッドの吹替えは過去複数の人がやっていて、かなり前にテレビ朝日系列で放映された時の穂積隆信さんの声がデイヴィッドには一番合っているようで私個人としては好きですね。

それと観る時に注意して欲しいのがタンクローリーのホーンの音がかなり大きいこと。セリフに合わせ音量設定しているとタンクローリーがホーンを鳴らすシーンでは吃驚しちゃいます。なので英語でも日本語吹き替えでもどちらにせよ、字幕を表示させてセリフの音量は小さめにして観てもらった方が観やすいかも。もちろん防音システムを施したシアタールームのような環境下であればその必要はありませんが

またこの映画の最初から終わりまで、常に画面に登場するデイヴィッドの愛車、プリムス・ヴァリアントですが、この時代のアメ車の足回りの弱さとステアリングのか細さが顕著に表れていますね。

車とは不思議なもので見慣れてくるとフロントマスクがおのずと人の顔に見えてくる。このピータービルト社製の、まるで軍用機のような色をしたタンクローリーのフロントマスク。こんなのに追い回されたら恐怖以外の何ものでもないでしょう。

坂道を上り、下り道に入ったところでタンクローリーが待ち伏せしているシーンがあり恐怖でデイヴィッドが急ブレーキを踏むシーンがありますが、その時のカメラワークと効果音がその不気味さと恐怖を解りやすく表現していて、無名時代とはいえさすがにスピルバーグって上手いなあって思います。

セールスの商談のため朝早く家を出た平凡なセールスマンが、ふとしたことから命を脅かされ、最後に敵と一騎打ちをしてこの映画は終わりますが、デイヴィッドがタンクローリーを撒いた後、線路脇で眠ってしまい、列車の警笛をタンクローリーのホーンと勘違いして飛び起き、デイヴィッドが安堵感から大笑いをするシーンがあるのですが、仮にこのシーンあたりでこの映画を終えたとしても、十分に面白い映画として成り立つような繊細なタッチで描かれたいい映画です。まあ、スピルバーグだから当然と言えば当然なんでしょうけれどね。

 

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ターミナル

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人の情や心の繊細さを見事に描いた素晴らしい映画

2004年製作  アメリカ  129分

監督

スティーヴン・スピルバーグ

キャスト

トム・ハンクス  キャサリン・ゼタ=ジョーンズ      スタンリー・トゥッチ  ゾーイ・サルダナ  クマール・パラーナ  ディエゴ・ルナ  バリー・シャバカ・ヘンリー

 

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク 空港  jazz・ナイトクラブ

 

 

 

ターミナルのあらすじ

 

ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港での入国審査で、要注意者として入国拒否をされ足止めを食う一人の男がいた。クラコウジア人のビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)である。彼の母国クラコウジアは彼が空港を飛び立った直後に軍事クーデターが起こり、クラコウジア政府が事実上消滅してしまい彼の持っているパスポート、ビザはすべて無効となってしまっていたからである。それによりビクターは事実上無国籍者となってしまい、クラコウジアの新たな政府が国交を結ぶまでアメリカに入国する事も母国に引き返す事も出来ない状況に陥ってしまった。

ビクターは税関国境保護局主任のフランク・ディクソン (スタンリー・トゥッチ)に呼び出され、この問題が解決されるまで国際線のトランジェット用ラウンジで過ごす様ディクソンに指示された。ビクターに手渡されたのは食堂で使えるクーポン券、そして15分使えるテレホンカードに保護局職員からの呼び出しの為のポケベルだった。この日からビクターは空港内での生活を始める事になる。

ターミナルから出る事の出来ないビクターはバスローブでラウンジ内をうろついたり、トイレの洗面台を風呂代わりにするなど、なりふり構わずな生活を送っていた。ビクターを監視する保護局主任のディクソンは税関国境保護局の次期局長を狙う男で、もし空港内で問題が起きれば自分の出世に影響する事を懸念し、ビクターに敢えて警備体制の盲点を教え、彼が自ら逃亡を謀るよう嗾けた。しかし真っ正直なビクターは律儀にも空港内に留まる事を止めなかった。

最初に彼を苦しめたのは空腹である。保護局から貰ったわずかなクーポン券も底をついてしまった。ある日ビクターが腹をすかせフードコートに立ち尽くしていると、ひとりの女性が手荷物カートを返しに来た。その様子を見ていたビクターはカートを1台返却すると25セントが戻る事を知った。するとビクターはラウンジ内に散乱するあらゆるカートをかき集め、やっとの想いでハンバーガーを1つゲットした。

ある晩ビクターが改装中の建物内を歩いていると、タグ車に乗ったエンリケ・クルズ(ディエゴ・ルナ)が「話がある」とビクターに声をかけた。エンリケは入国審査官ドロレス・トーレス(ゾーイ・サルダナ)に恋心を抱いており、、彼女の情報をくれたら食事を提供するとビクターにもちかけた。ビクターは当初から入国できない理由を理解できていなかったため、何度もドロレスのもとに入国申請を出しに足を運んでいたからである。

ビクターは早速ドロレスのところに向い彼女からありとある情報を聞きだした。彼女の男性遍歴や元カレと別れた原因など、色々な情報を聞きだしエリンケに伝えた。ビクターはその見返りとしてエリンケからこっそり機内食を分け与えてもらう。

味をしめたビクターはさらに情報を聞き出そうとドロレスの所に足を運ぶが、執拗なビクターの行動に、誰の指示による“サグリ”なのか解明しようとビクターに詰め寄った。

しかし丁度そこでビクターのポケベルが突然鳴った。ビクターが急いでディクソンのいる保護局の事務所に行くと、なぜか豪華なハンバーガーがビクターのために用意されていた。しかし彼の空腹は満たされていたため食べなかった。ディクソンはビクターに「空港から出られるいい方法がある」と切り出した。祖国に戻る事を恐れる外国人は法で保護する事ができ、緊急国外退去措置の対象となって移民局裁判ができるので、その手続きをお膳立てしてやるというものだった。しかも裁判が終わるまでの間、ニューヨークへも自由に行き来できるという。しかし、あまりにも擁護を求める数が多いため、実際には法廷に呼び出されるまでに半年かかるというものだった。

そこでディクソンはビクターに「この質問に適切な回答する事ができれば今夜にでも空港から出られる」と前置きし、「母国に戻るのに恐怖心があるか?」という質問をした。ビクターがそれに「イエス」と答えれば緊急国外退去措置の対象となりビクターを空港から退去させることができるからだ。ビクターが空港から出ていきトラブルを回避できれば次期局長のイスを狙いやすいと考えたからである。しかしビクターは「ノー」と答えた。

 

 

 

ターミナルのレビュー・感想

 

物語のシチュエーションが全て空港内という設定のためか、この映画を絵面(えづら)で観ようとするとたぶんつまらなくて寝てしまうかも知れませんね。

僕がこの映画を初めて観たのがニューヨークに向かう飛行機の中で、眠さのあまり映画に集中できず、面白いとは思わなかったというのが僕の最初の印象でした。

しかしこの映画の監督はというと、あのスティーヴン・スピルバーグ様。伊達に映画を作っちゃいません。ちゃんと観れば、人の情や人間の心の繊細さを見事に描いている素晴らしい作品である事がよく解ります。以来、この映画は何度も観ました。

旅行にせよ、片言の英語のスキルしか持っていない状態で海外に行くと、自分の意図する事が全く通じず、嫌な思いをする事が多いですよね。だから英語なんてほとんど喋れないのに、それを隠そうとして虚勢を張ってしまうという経験が僕にもありましたけど、英語がまともに話せないとどうなるかという描写が上手く表現されていて「そうそう」と思わずうなずいてしまう場面が多々ありました。

ビクターが税関国境保護局の事務所で聴取されるシーンで、担当官がパスポートと航空券の提示を求めようと片手を差し出す場面で、ビクターが握手を求められたものと勘違いし、手を差し出してしまうシーンがあるのですが、英語を理解しているふりをして虚勢を張るとこういう事になるという、人の心を描くのが非常に細かいですね。

冒頭この映画を「絵面」で観てはいけないと言ったのはそういう意味なんです。

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あなたに降る夢

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寛大な心をもつ警官と心優しきウェイトレスの心温まる恋愛ドラマ

1994年製作  アメリカ  101分

監督

アンドリュー・バーグマン

キャスト

ニコラス・ケイジ  ブリジット・フォンダ  ロージー・ペレス  ウェンデル・ピアース  スタンリー・トゥッチ  リチャード・ジェンキンス

 

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク アメリカンポリス 宝くじ ホテル 破産

 

 

あなたに降る夢のあらすじ

宝くじのお告げ

ニューヨークで警官として働くチャーリー・ラング(ニコラス・ケイジ)はとても庶民的で人懐っこく困った人をみれば放っておけない正義感の強い人気者であった。ある日チャーリーが洗面台で髭をそっていると隣でシャワーを浴びる妻ミュリエル(ロージー・ペレス)から「明日宝くじを買ってきて」と頼まれる。ミュリエルは昨晩スロットマシーンでチェリーを3つ並べた夢を見て「これは宝くじが当たるお告げ」と信じ込んでいた。

チャーリーとイボンヌの出会い

翌日チャーリーは相棒のボー(ウェンデル・ピアース)と外回りをしている途中宝くじを買った。そして丁度昼時間であったため近くのレストランで昼食をとる事に。そこにはイボンヌ(ブリジット・フォンダ)がウェイトレスとして働いていた。イボンヌは元夫の金銭トラブルで破産宣告を受けていたが、そんな窮乏した状態でも客に優しく接し、一生懸命に働く美しい女性だった。チャーリーたちが注文を済ませコーヒーを飲んでいると急遽、緊急出動の無線が入った。

コーヒーしか口にしていないチャーリーはお勘定を済ませようとレジに向かうが、財布にお金が入ってなくチップを払えない状況にあった。それを聞いたイボンヌは「チップは結構よ」とチャーリーに言うがチャーリーは宝くじを買ったことを思い出し、宝くじが当たったら当選金の半分をチップとして渡し、当たらなくても明日チップを払いに来るとイボンヌに約束した。イボンヌは冗談半分に話を聞いていたがチャーリーは本気でそう思っていた。

奇跡の高額当選

その夜、テレビを観ていたミュリエルが突然大声をあげた。なんとチャーリーが買った宝くじが400万ドルという大金に当選したのである。大声で叫びながらミュリエルは喜んだがチャーリーは神妙な面持ちだった。イボンヌに当選金の半分を渡す約束を思い出したからである。

チャーリーはミュリエルにその事を打ち明けるとミュリエルは「200万のチップなんてありえない」と憤慨した。それでも生真面目なチャーリーは「約束したんだ」と当選金の半分200万ドルをイボンヌに渡すと言い張った。

翌日チャーリーは相棒のボーに約束を守るべきかチップだけを渡し当たらなかった事にするべきか相談した。するとボーは「君なら正しい事をする」と意味深な事を言い、それを聞いたチャーリーはイボンヌが働くレストランに向かった。イボンヌは「きのうはごめんなさい。人生最悪の日でイライラしていた」とチャーリーに詫びた。チャーリーはイボンヌから破産宣告を受けた話を聞くと、約束通り当選金の半分200万ドルを渡すとイボンヌに告げた。それを聞いたイボンヌは「からかわないで!」と最初不機嫌そうな顔をするが、それが事実だと知ると、喜びと驚きで有頂天になり店内にいるお客全員にアイスクリームを振る舞った。

ニューヨークで一躍時の人に

それから数日後マンハッタンで宝くじの当選授賞式が行われた。当選金の半分をウェイトレスに譲渡したことが話題になりそこにはイボンヌも招かれた。チャーリーはインタビューで見ず知らずの他人に200万ドルも譲渡した事を問われると「約束は約束です」と答え記者たちを驚かせた。この事が翌日の新聞のトップニュースとして取り上げられ、チャーリーとイボンヌは一躍ニューヨークで時の人となる。

億万長者の集い

一方、当選金額は半減したものの200万ドルという大金を手にしたミュリエルはブランド物を買い漁りチャーリーに相談もせず勝手にアパートをリフォームするなど浪費癖がエスカレートしていった。これが彼女の人生を次第に狂わせていく。

ある日チャーリーたちは宝くじミリオネアクラブが主宰する「億万長者の集い」に招かれる。華やかな豪華クルーズ船でのパーティーである。当然そこにはイボンヌも招かれていた。チャーリーはイボンヌが船つき場でタクシーの運転手と釣り銭の事で揉めているのを目撃する。チャーリーはイボンヌに「お釣りは結構です(金持ちだから)というんだ」といって笑った。そうこうしている内にクルーズ船が出港してしまい、船に乗り損ねたチャーリーとイボンヌは二人きりのディナーを楽しみ互いの身の上話しに花を咲かせた。

チャーリーとミュリエルの泥沼離婚劇

チャーリーを残し一人クルーズ船のパーティーで楽しむ妻ミュリエルは参加していた詐欺まがいの投資コンサルタント ジャック・グロス(シーモア・カッセル)に投資の手ほどきを受けていた。お金に欲をかくミュリエルはグロスにとって格好の餌であった。チャーリーとの生活より成金に走るミュリエルは当選金をイボンヌにくれたことに我慢できずチャーリーに離婚を迫る。

一方イボンヌは当選金の半分をもらったことを元夫に知られ金の無心をされる。チャーリーとイボンヌは共に家を出て、居場所を求ホテルへ移そうとするが奇遇にも二人は同じホテルで遭遇する。二人は意気投合し自然と結ばれた。

数日後チャーリーはミュリエルとの離婚協議のため、とあるオフィスを訪れていた。ミュリエルに雇われた敏腕弁護士は、当選金の既得権は全てミュリエルにあると主張した。そんな主張にチャーリーは「金はいらない。いざこざは嫌だ」といい、相手の要望をそっくりのんだ。しかしミュリエルの要求はそれだけではなかった。なんと、イボンヌに渡した200万ドルも返還するよう要求したのだ。これにはさすがのチャーリーも酷すぎると抗弁した。数日後裁判が行われた。ミュリエルの弁護士はチャーリーとイボンヌが不倫関係にあったと結論付け、陪審員への心証を悪くしたチャーリーは敗訴した。

それにより、もらった200万ドルを返還するはめになったイボンヌは開業したばかりのレストランも人手に渡る事となり、居たたまれなくなった彼女は裁判所を飛び出した。チャーリーはイボンヌを追うがチャーリーを不幸にしてしまった事に自責の念に駆られるイボンヌはチャーリーに「もう会わないほうがいい」と提言するがチャーリーのイボンヌに対する愛は変わらなかった。

それぞれの人生

無一文になっても二人の心は豊かさに溢れ、誰に対しても優しく接した。そんなある日、ホームレスが腹をすかせ二人に物乞いをすると、イボンヌたちは暖かいスープをふるまってやった。実はそのホームレスに扮した人物こそ、チャーリーたちを取材していたニューヨークポストの記者カメラマンであった。チャーリーとイボンヌの優しさを目の当たりにした記者は「ふたりの苦悩の日々」というコラムを掲載した。これにより二人の苦悩と優しさがニューヨーク市民に拡散され、二人には基金財団を通じニューヨーク市民から集めたチップが毎日のように届けられた。その総額はなんと60万ドルにも達していた。

その後チャーリーは怪我の為休職していた警官に復職しイボンヌは店を取り戻した。

一方ミュリエルは投資コンサルタントグロスと結婚するが、グロスはミュリエルの全財産を奪って逃亡した。

 

あなたに降る夢のレビュー・感想

 

大金を持った事のない人が大金を掴むとこうなっちゃうって事をミュリエルの結末がよく物語っているという感じですね。

結局最後に幸運を掴んだのは善人警官のチャーリーと心優しきイボンヌで、金に目が眩んだミュリエルは不幸のどん底にって事なんでしょう。

よく「お金がすべてじゃない」とか「愛があってもお金がなければ生きて行けない」とか色々言われますが、今回の場合は最後に愛が勝ったって事かな。

宝くじで高額当てるのも凄いけれど、その半分を単なる口約束であげちゃうところもまた凄い。でも、もっと凄いのがこの話が実話であるという事。多少なりとも脚色されているんでしょうけれど、宝くじに当たった事、イボンヌに半分上げた事、ミュリエルがグロスに騙されたことは事実なんでしょうから。

この映画25年以上前に作られたわけだから、実際の出来事はもう少し前になるんだろうけど、チャーリーにしてもイボンヌにしてもミュリエルにしても、この世のどこかにいる (亡くなっていたらごめんなさい)んだろうと思うと、それぞれが今、何を思い、どんな暮らしをしているのかがとても興味ありますね。

イボンヌみたいな美人さんじゃなくてもお金あげたの?ってな事も聞いてみたい(笑)

総合的に心温まるいい映画です。自分はチャーリーのような寛大さはないですが、でも、人に優しく、真面目にコツコツやっていれば、いつかきっといいことが起こるかもと素直に思いたくなる映画です。

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マイレージ、マイライフ

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マイラーに人生をかける独身男のコミカルドラマ

2009年製作  アメリカ  109分

監督

ジェイソン・ライトマン

キャスト

ジョージ・クルーニー  アナ・ケンドリック ヴェラ・ファーミガ  ジェイソン・ベイトマン  メラニー・リンスキー  ダニー・マクブライド  ザック・ガリフィアナキス  J・K・シモンズ

 

撮影ロケーション・情景

解雇通告 出張  空港  自己啓発セミナー  マイラー  アメリカン航空  ネブラスカ州オマハ  ヒルトンホテル  マイアミ  デトロイト  ミルウォーキー  シカゴ

 

 

マイレージ、マイライフのあらすじ

CTC社で働くライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は1年の大半を出張で過ごし全米中を飛び回るという超多忙な独身サラリーマン。彼の仕事は企業がリストラを行う際、相手の逆上を恐れ社員の首を切れない雇用主に代わり解雇を言い渡す事である。

月に数日しか自宅に帰らない彼は「空港が我が家」と公言して憚らず、この仕事をとても気に入っていた。移動は全て会社経費でビジネスクラス。ライアンはそんな特権を利用しマイレージを貯めアメリカン航空の1000万マイルの史上最年少達成者となる事を目標にしていた。

そんなある日、出張先のダラスのホテルでくつろいでいると、彼同様のマイラーアレックス(ヴェラ・ファーミガ)が隣席に座っていた。ライアンとアレックスはマイル貯めの極意について語り合っているうちに意気投合し男女の関係になる。

それから数日後、出張中だったライアンは社長グレゴリー(ジェイソン・ベイトマン)から急遽召集をかけられる。グレゴリーはアメリカ経済が史上最悪の不況にある中、自分のビジネスに更なる拍車がかかる事を見込んで、新たなビジネスモデルを画策していた。それはコーネル大学から才女として招かれたナタリー・キーナー(アナ・ケンドリック)の発案によるもので、年間250日以上を越える出張をチャットによる遠隔解雇システムに切り替える事で、経費を85%削減するという画期的な案件であった。

これにより解雇を言い渡すためわざわざ全米を飛び回る必要がなくなり、より多くのエリアで短時間で解雇通告を行う事が可能になるというもの。航空機を使う出張の恩恵でマイレージを貯めていたライアンにとって、これはお節介な発案であった。

この遠隔解雇システムの導入を決めていた社長グレゴリーに対し、ライアンは「この仕事の現実を分かっていない」と抗議した。するとそこにナタリーがやってきた。「私のアイデアいかがです?」と意気揚々とするナタリーにライアンは「チャットで俺をクビニしてみろ」とけしかけた。ナタリーの解雇シュミレーションにライアンは理路整然と反論し、ナタリーの解雇通告を論破した。甲斐なく落ち込むナタリーに対してライアンは「心理作戦を要する解雇通告の仕事はチャットでは不可能。本当にこの仕事を分かっているのか」とナタリーに駄目出しした。

その様子を見ていた社長グレゴリーは「出張を続けたいならナタリーを連れて実地教育をしろ」とライアンに命じ、ライアンは数日後ナタリーを連れてセントルイスへと向かう。

マイレージ、マイライフのレビュー・感想

 

オープニングで出てくる全米各地の風景を写した映像が面白く、この映画のテーマを簡潔に表現している感じでとてもマッチしてますね。

マイル貯めもあれだけ徹底すれば面白いんだろうとも思うし、この映画を観てマイル貯めに走る人が増えそう。

でもマイラーに人生をかけて最後に何が残ったのかといえば、それは単に“孤独”という寂しい二文字。ライアンはマイルそのものを貯める事が目的で、貯まったマイルを自分のためにどう使おうかという楽しみ方を知らなかったのが彼の悲劇ですね(最後は妹夫婦にプレゼントしましたが)

そしてライアンは結婚や家族というものに全く価値を見いだしていなかったけれど、ライアンがクビを切ってきた人たちの背景にはいつも家族がいて、アレックスにしても自分と同じ独身主義者だと思っていたら彼女にも家族がいて、さすがのライアンもこの時ばかりは孤独という寂しさに心をヘシ折れちゃったわけです。やっぱり人間て一人では生きていけない動物なんですね。

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アンフィニッシュ・ライフ

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アメリカの大自然を満喫できる素晴らしいロケーション

2005年製作  アメリカ  104分

監督

ラッセ・ハルストレム

キャスト

ジェニファー・ロペス  ロバート・レッドフォード  モーガン・フリーマン  ジョシュ・ルーカス  ダミアン・ルイス  カムリン・マンハイム  リンダ・ボイド

 

撮影ロケーション・情景

アメリカの片田舎  ワイオミング州  trailways bus アメリカ山脈 熊 牧場 保安官

 

 

アンフィニッシュ・ライフのあらすじ

 

日頃から恋人ゲイリー(ダミアン・ルイス)からDVを受けていたジーン(ジェニファー・ロペス)はゲイリーの凶暴さに堪えきれず一人娘グリフを連れて家を飛び出した。

宛てもないまま車を走らせるジーンであったが途中エンジンが故障し車は全く動かなくなった。

 

そこに通りがかったバイクの青年の助けを借りサウスダコタ州スーフォールズまで乗せてもらう。スーフォールズで降ろされた二人は地図を広げこの先どこに行こうか悩んでいたがジーンはワイオミングへ行くことをグリフに告げた。ワイオミングは今は亡きグリフの父グリフィンの生まれ故郷であり、グリフィンの父アイナー・ギルキソン(ロバート・レッドフォード)が牧場を営んでいたからである。

 

しかしジーンはギルキソン家とは疎遠になっていてグリフには祖父アイリーの存在を知らせていなかった。牧場に着くとジーンはアイナーに「あなたの孫よ」とグリフを紹介した。しかしアイナーは「何しに来た」と言わんばかりに二人を歓迎しなかった。アイナーは愛息子グリフィンを交通事故で亡くしておりその時運転していたジーンに怒りの矛先を向けしこりを残していたからである。歓迎されていないことを分かっていたジーンであったが、お金も底をつき切羽詰まったジーンは1ヶ月だけという約束でアイナーに頼み込み牧場で暮らす事になる。

 

アイナーの家には友人ミッチ・ブラッドリー(モーガン・フリーマン)が居候として一緒に暮らしていた。ミッチは一年前アイナーの仔牛を襲っている凶暴なヒグマを追い払おうとして大怪我を負ってしまい不自由な身体になってしまっていた。ある朝アイナーからミッチのところに朝食を届けるよう頼まれたグリフはミッチの痛々しい姿に初めは直視できないほどでいたが、ミッチはやさしかったためすぐに打ち解けることが出来た。

一方アイナーは、可愛い孫娘ができたというのに息子グリフィンの死を未だにジーンのせいにし恨んでおり中々二人に心を開こうとしなかった。

 

アンフィニッシュ・ライフのレビュー・感想

 

ワイオミングの大自然の中での撮影という事もあって、とにかく映像が綺麗。周辺にはスーパーやコンビニなどはもちろん皆無で、日々の生活をするうえでは不便な場所なんでしょうが、アメリカの片田舎に憧れる私にとって移り住むとは言わないまでも一日・二日ここで暮らしてみてもいいかなぁって思ってしまうほどの素晴らしいロケーションです。

ロバート・レッドフォードもこの時80歳近い年齢ですが、さすがはアメリカ人。ジーンズ姿がよく似合い歳を感じさせません。

ロバート・レッドフォードが演じるアイナーは子供に先立たれ未練な気持ちを引きずる父親を演じますが、アイナーがレストランでウエートレスに粗暴を振るう不良たちにフォークを突きつけ「人生は一瞬で変わるぜ」と言ったセリフがアイナーの今の気持ちをうまく表現していていいセリフだなあと思いました。そしてその後、「分かったか?!」と言って若造の帽子を払い飛ばすシーンがありますが、その立ち回りが演技とは思えないほどリアルで観ていて気持ちいいです。

モーガン・フリーマンはこの映画では主役ではないけれど、なんていうか、いつも冷静に客観的な目をもって主人公を戒飭する役が多いのですが、こういう役をやらせるとやっぱりフリーマンは上手で説得力がありますね。熊にあれほどの大怪我をさせられても「本能だから仕方がない」と言わんばかりに熊をどこかで許している所が実に寛大で器が大きい。

ロバート・レッドフォードが演じるアイナーにしても息子を嫁に殺されたと思い込んでいてジーンを中々許そうとしないんですが、それでも一生懸命に自分を変えようと努力している。誰かを責める事は簡単ですが、“許す” 術を養うことも人生ではすごく大事だなあって思います。

また特典映像に「静止画集」と称した95枚の撮影風景が盛り込まれています。先述したように映像(画像)がとても綺麗でアメリカの大自然を満喫できます。

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カンパニー・メン

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失業の怖さ。“隣の芝生”が青く見えはじめた人に観てもらいたい映画

2011年製作  アメリカ  113分

監督

ジョン・ウェルズ

 

キャスト

ベン・アフレック  ケビン・コスナー  クリス・クーパー  トミー・リー・ジョーンズ  ローズマリー・デウィット  マリア・ベロ

 

撮影ロケーション・情景

ボストン インテグレイション企業  リストラ アメリカ郊外  ポルシェ 就活・起業

 

カンパニー・メンのあらすじ

GTX社解雇

ボストンに暮らすボビー・ウォーカー (ベン・アフレック)は年商120億ドル規模のインテグレイション企業GTXで販売部長として働いていた。ボビーは37歳という若さであるが年収は12万ドル。郊外には噴水付きの真っ白な豪邸を構え、愛車ポルシェで会社に通うというような華々しいし生活を送っていた。しかし2008年に起きたリーマン・ショックの影響でGTX社内の造船部門の業績が悪化し、大規模なリストラが敢行されボビーは解雇を言い渡されてしまう。

 

“リストラ空気”は瞬く間に社内に広がり、わが身を案じて戦々恐々とする雰囲気に社内は包まれていた。その中のひとりにフィル・ウッドワード (クリス・クーパー)がいた。フィルにはまだ学費のかかる子供が2人おり年齢的にも潰しのきく状況ではなかった。フィルは副社長であるジーン・マクラリー (トミー・リー・ジョーンズ)に「30年も勤めてクビニなるならここで銃を乱射してやる」と凄んだがボビーが解雇された事をジーンは知らされておらず、リストラは社長ジェームズ・サリンジャー -(クレイグ・T・ネルソン)の独断で行われたものだった。

 

翌日ジーンは社長ジェームズに「なぜ私に黙ってリストラを行ったんだ」と詰め寄った。ジェームズは「社員より株主に対して責任がある」と更なるリストラ敢行を示唆した。失業中のボビーは再就職支援センターに通い、職を探す日々を送っていたがボビーはすぐに再就職できるものと高を括っていて支援センターでのレクチャーにも本腰を入れなかった。

ある日そんなボビーの元をジーンが訪ねる。ボビーは今までもジーンに目を掛けられ可愛がられていた。ボビーのリストラを阻止できなかったジーンは済まなそうな顔をし「私は反対(解雇に)したがどうにもならなかった」と言い、代わりにロックヒード社とレイシオン社の面接のコネを作ってやった。しかしボビーはそんなジーンの気遣いを蹴りその場を立ち去った。

 

ウォーカー家の財政難

家に帰ると妻マギー(ローズマリー・デウィット)が家計のやり繰りに頭を悩ませていた。ボビーの収入が途絶えてしまった今、住宅ローン、矯正歯科医への支払い、夏に予定している旅行代金、ポルシェのローンなど、家計は苦しかった。マギーは再び病院で看護師のパートの仕事を始める覚悟でいたが、ボビーは現実を直視しようとせず、妻の職場復帰には賛成しなかった。

それから数日後ボビーは3M社という企業の面接を受ける。しかし前職と同じ販売部長の役職ではGTX社で貰っていた年収の半分くらいになってしまうため、ボビーはマーケティング部門長を希望した。しかしマーケティング部門長のポストは適任者の応募が多くそこに就く事は難しいと担当者が難色を示されると、ボビーは「僕こそ適任者だ!」と尻を捲りその場から立ち去ってしまう。またもや再就職支援センターに通う事になるボビーであったがボビーの希望に合致する仕事は中々見つからない。

 

ある日ボビーは妻マギーの兄ジャック(ケビン・コスナー)邸のパーティーに招待された。ジャックは建築業を営み職人を数名使っていた。ジャックがボビーに「仕事は順調か?」と聞くとボビーは「順調だよ」と答え見栄を張った。しかしジャックはGTX社の業績不振にまつわる記事を新聞で読んでいてボビーの失業は薄々察していた。ウォーカー家の身を案じたジャックは「困ったら俺が雇ってやる」と助け舟を出すも、過去の栄光を忘れられないボビーは「釘を打つ自分は想像できない」と折角の好意を無下にした。

 

社長ジェームズと副社長ジーンとの確執

社長ジェームズと副社長ジーンを柱とするGTX社経営陣たちは会社の立て直しに必死だった。ジーンはジェームズに建設中の新社屋と医療部門の売却を勧めるがジェームズは聞く耳を持たず再びリストラを敢行する方針を示し、次なる解雇者のリストを作るよう人事担当者に指示した。ジェームズの独裁的な采配に我慢ならなくなったジーンは「リストラは間違っている」とジェームズに警告するもジェームズは考えを変えようとしなかった。そんな中次なるリストラの候補として挙がったのが部長のフィル・ウッドワード (クリス・クーパー)であった。

フィルにはまだ学費のかかる子供が2人いて、年齢的にも潰しのきく状況ではなかった。ボビーの解雇を発端に社内に“リストラ空気”が広がり始めた時から、フィルはわが身を案じ戦々恐々とする日々を送り、ジーンに「30年も勤めてクビニなるならここで銃を乱射してやる」と凄んだ男である。

 

フィルとジーンの解雇

ボビーが職探しを始めて3カ月が過ぎた時の事である。ボビーはある人物からの推薦で、とあるベンチャー企業の面接をうけた。年収9万ドル+賞与という好条件で北東部の販売部長としてのポストを掴みかけたが、結局他の応募者にその座を奪われ、数日後内定取り消しの連絡がもらった。がっくり肩を落とすボビー。彼は遂に愛車ポルシェを売却した。

そんな中第2弾となるリストラ計画は着々と進められ遂にフィルも解雇された。ジーンはフィルの解雇を通告した人事部のサリー(マリア・ベロ)を呼び出し解雇を取り消すようサリー詰め寄った。サリーはジーンの愛人である。ジーンはフィルがリストラの候補として挙がった時からサリーに根回しをしていたがサリーは私情を挟まずフィルの解雇を敢行した。そしてサリーは社長ジェームズから預かった1枚の書類をジーンに見せた。それはジーン自身への解雇通告書であった。ジェームズにとって反目したジーンはもはや目の上のたんこぶに過ぎなかったのである。

数日後ボビーが通う再就職支援センターへGTX社を解雇された者たちが次々とやってきた。もちろんその中にはフィルもいた。フィルもボビー同様インストラクターから再就職のためのレクチャーを受けるが、高飛車に接するインストラクターに堪えきれなかった。

 

義兄ジャックの支え

一方ボビーは、住宅ローンの支払いにも事を欠く状況になっていた。ボビーはどんなことがあっても家を手放す事だけはしたくないと思っていたが背に腹は代えられず家を売却しボビーの実家に移り住むことになる。更に「釘を打つ自分は想像できない」と一度は断った大工仕事を義兄ジャックを再び訪ね雇ってほしいと頼み込んだ。本当に来たかというような顔をしながらもジャックはボビーを受け入れた。右も左もわからない畑違いの仕事にボビーは戸惑いながらもひたむきに取り組もうとするが、義弟とはいえジャックはボビーに厳しかった。ここからボビーの過酷な肉体労働の日々が始まる。

 

ボビーは少しずつ大工仕事に慣れ働きぶりも様になってきたある日、ジャックから初給料を貰った。封筒の中身を見ると少し余分に入っていた。ボビーがジャックに「200ドル多い」というとジャックは「計算ミスかな?」ととぼけた。彼の優しさである。

一方役員を解任され解雇になったジーンはこの先の身の振り方について息子に相談したりもしたが息子は「コンサルタント会社を起業してアドバイスでも売ったら」とおちゃらかした。笑い飛ばすジーンであったが実際は妻が家の売却を考えるほど深刻であった。

ジーンは自分のこともさることながらフィルの事も気遣っていた。心配したジーンはフィルを慰めようと彼に会いに行くがフィルは相当参っており、就職支援センターへも行かず昼間から外で酒に溺れる日々を送っていた。解雇が近所にバレぬよう妻から6時まで家に帰るなと言われていたからである。

ある日ボビーの元にシカゴのヘッドハンターからオファーが舞い込む。輸送業務の販売部長のポストである。ボストンからシカゴへは850マイルも離れているが今の生活から1日も早く抜け出したかったボビーは二つ返事で承諾した。意気揚々と面接を受けにシカゴに飛んだボビーであったがアポの日にちを1週間間違えていた。遠方のため出直せないので待たせて欲しいと告げるがダラスに出張中なので来週まで帰らないといわれた。肩すかしを喰らったボビーはシカゴの街で途方に暮れた。

 

フィルの自殺

フィルはある人物のツテである企業の海外担当の重役ポストに就こうと根回しをしていた。しかし海外出張の多いポストのため30歳以下の若者でないと難しいと断られ、「君を推薦したら会社で笑いものになる」とまで言われた。フィルは自分の不甲斐なさに失望した。

収入を閉ざされたままのフィルは娘の授業料や住宅ローンの支払いに迫られ自暴自棄に陥っていた。どうにでもなれとばかりに飲酒運転をし古巣のGTX社に汚い言葉を吐きながら石を投げつけるなどの悪態も着いた。そしてフィルは自宅のガレージで排ガス自殺をし命を絶った。

 

ボビーとジーンの新たな人生の始まり

ある日ジーンはGTX社に出向き社長ジェームズに声をかける。「元気にしてたか」と偽善者ぶるジェームズにジーンは「フィルの葬儀で会えると思った」とあげつらい、共に働いた仲間のクビを簡単に切る薄情さを訴えた。ジェームズが「慈善事業じゃない。仕方ない」というと、ジーンは「会社が傾きかけているのに未だ年収2200万ドルを得て保身に走るのはおかしい」と傲慢さを抗議したがジェームズは考えを変えなかった。ジーンはボビーを誘い海運事業の起業を決心する。フィルの死を無駄にしたくなかったからである。ジーンに誘われたボビーはこのままジャックの仕事を手伝おうか、ジーンについていくべきかジャックに相談した。ジーンからのオファーは報酬8万ドルでGTX社時代の半分である。ジャックはボビーに「その仕事に就け。君は大工に向かない」とボビーの背中を押した。そしてボビーとジーンの新たな人生が始まった。

 

カンパニー・メンのレビュー・感想

“隣の芝生”が青く見えはじめた人に観てもらいたい映画

人は誰でも仕事に慣れるとその仕事に就いた喜びや有難さを忘れてしまうもの。そしていつしかそれがおごりとなってプライドが先行し自分を過大評価してしまう。しかし自分を評価するのはあくまでも他人。自分が思う「自分」と他人が思う「自分」は必ずしも合致しないという事をこの映画は教えてくれます。

もし今の職場で“隣の芝生”が青く見えはじめ、安易な理由で転職を考えている人がいるとしたなら、そういう人にぜひ見てもらいたい作品です。

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ラスト・ムービースター

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ヘタな恋愛ドラマを観るよりも本当の愛が何かということを理解させてくれる

2017年製作  アメリカ  103分

監督

アダム・リフキン

キャスト

バート・レイノルズ  アリエル・ウィンター  ニッキー・ブロンスキー  チェビー・チェイス

 

撮影ロケーション・情景

ハリウッド メルセデスベンツ  ロサンゼルス国際空港  ナッシュビル モーテルデラックスホテル 老人ホーム  トランザム  加齢・年輪  過去恋愛の回想

 

 

ラスト・ムービースターのあらすじ

 

かつて大人気を博したハリウッドの稀代スター、ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)は昔の勢いも鳴りを潜め、ハリウッドにある大邸宅に愛犬スクワントとひっそりと暮らしていた。

ある日スクワントを獣医師の元に連れて行ったヴィックは高齢スクワントの腎臓障害を聞かされ安楽死を勧められる。長年連れ添ったスクワントとの別れは辛かったが体に毒素がたまり苦しむスクワントの事を考えると安楽死を受け入れるしかなかった。

自宅に帰りスクワントのペットクッションを見つめながら心寂しく酒を飲むヴィック。

 

それから数日たったある日、ヴィックの元に国際ナッシュビル映画祭での特別功労賞の招待状が届く。過去の受賞者としてロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、クリント・イーストウッドなど錚々たる名優たちの名前が列記されていたが、映画の街ではないナッシュビルでの開催にヴィックは胡散臭さに難色を示したが俳優仲間のソニー(チェビー・チェイス)に強く勧められ渋々ナッシュビルへ向かう事を決心する。

出発の日、空港で搭乗手続きをしようとファーストクラスのカウンターに並んでいたヴィックはカウンタ職員に隣の列に移るよう指示された。映画祭から同封されていたエアチケットはエコノミーのチケットだったのである。かつての大スターヴィックにとってエコノミーでの移動は惨めそのものだった。

ナッシュビル空港に到着し、ターミナルの出口で主催者の迎えを待っていると一台の白いリムジンが横付けされた。これで少しはデラックスな気分に浸れると期待したヴィックだったがそのリムジンは既に別のお客が乗車していて肩透かしを食らう。するとそこに1台のポンコツセダンが止まり運転席から若い女性が降りてきた。ヴィックを迎えに来たリル(アリエル・ウィンター)である。

 

彼女はインチキ映画祭主催者ダグの妹で、リルはヘソだしのショートパンツに鼻ピアスという奇抜な風貌だった。

リルはヴィックを強引に車に乗せホテルに向かうがリルの運転は非常に乱暴でハンドルを握りながらケータイでメールを打ち対向車と衝突しそうになる。かつて数々のカーチェイスを演じてきたヴィックでもさすがに気が気ではなかった。やっとの思いでヴィックはホテルに着いたが一流ホテルを用意すると聞かされていたヴィックは目を疑った。そこはハイウエイ沿いにある一流ホテルとはかけ離れたしがないしがないモーテルだった。騙された事を確信したヴィックは「話が違う。すぐ空港に引き返せ」とリルに詰め寄るが「私は運転手を頼まれただけ」と取り合おうとしない。

散々な思いをしたヴィックは友人ソニーに電話をかけ愚痴をこぼすがソニーからは「せっかくの映画祭だ。デ・ニーロやイーストウッドのように楽しんで来い」といわれそのまま居残る事にした。疑心暗鬼のままリルに連れられ映画祭会場に着くとそこは“マクドゥーガルズ”というバーだった。中には“ようこそヴィック・エドワーズ”という垂れ幕が下がっており主催者ダグらはヴィックを歓迎したが、ここは案じたとおり映画祭とは名ばかりの単なるヴィックのファンクラブの集まりであった。

 

しかしヴィックはいかさまの映画祭とは分っていながらも自分をファンだといって讃えてくれる若者たちに精いっぱいの愛想を振りまき次第に彼らちと打ち解けていく。

 

 

ラスト・ムービースターのレビュー・感想

 

バート・レイノルズ最後の主演作品

「ラスト・ムービースター」というタイトルのとおり、この映画収録の約1年後にバート・レイノルズは亡くなってしまいました。渾身の力で演じきった彼の最後の主演作品なので非常に感慨深いものを感じます。このストーリーはかつての大スターが紆余曲折しながら人生を歩んできた彼自身のセルフパロディとして描かれています。

僕自身、バート・レイノルズといえば真っ先に浮かぶのが「トランザム7000VS激突パトカー軍団」や「キャノンボール」などのカーアクション。本編の中でヴィックがリルにノックスビルに向かわせようと無理強いし、キレたリルが過激にハンドル操作をするシーンがあるのですが、リルの顔が突然「トランザム7000・・」のバンディットの顔に切り替わり荒々しい運転をするバンディットにヴィックがスピードを落とすよう窘める場面があるんですが、このカットを作ってくれた事が凄くうれしいというか懐かしくなっちゃいます。(同じ人物でもこんなに変わってしまうものかと)・・・

 

またヴィックがリルを連れ一流ホテルに泊まろうとしたときフロントの女性にシビアな対応され「クリント・イーストウッドが来ても追い返すのか?」と言い返すシーンがあるのですが「クリント・イーストウッド」を引合いにだしたセリフが別のシーンでも何度か出てくるのでイーストウッドを結構意識していたんでしょうか。

 

愛が何かということを理解させてくれる作品

終盤、ヴィックが別れた妻シュルマンを訪ね、彼女を大切にしなかったことや、家庭を顧みず壊してしまった傲慢さを詫びる場面があるのですが、この時のヴィックの姿がすごく自然で、ヘタな恋愛ドラマを観るよりも愛が何かということを理解させてくれるし、遥かにピュアで美しいですよ。凄く清らかな気持ちで観終える事のできる作品です。バート・レイノルズよ安らかに~

 

 

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グラン・トリノ

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「遠い親戚より近くの他人」の象徴を見せられる

2008年製作  アメリカ  117分

監督

クリント・イーストウッド

 

キャスト

クリント・イーストウッド  ビー・ヴァン  アーニー・ハー  クリストファー・カーリー  ジョン・キャロル・リンチ  スコット・イーストウッド ドリーマ・ウォーカー

 

撮影ロケーション・情景

デトロイト グラントリノ アメリカの郊外 フォードF250 アメリカの葬儀

 

 

グラン・トリノのあらすじ

頑固で頭の固いウォルト・コワルスキー (クリント・イーストウッド)は長年勤めたフォードの工場を引退し妻ドロシーとデトロイトに暮らしていたが不幸にも妻が他界。場面は亡き妻ドロシーの葬儀のシーンから始まる。

葬儀には長男次男夫婦、またそれぞれの子供たちが参列しドロシーを弔う。しかし参列した孫たちは“ヘソ出し”の格好で現れたり、礼拝する際下ネタの呪文を唱えたり、ミサの最中携帯をいじったりと無礼千万を極めていた。ウォルトはそんな礼儀知らずの孫たちを嘆かわしいとばかりに睨み付けた。葬儀中不機嫌な顔を露骨に見せるウォルトに気付いた長男と次男であったが二人はそんな堅物のウォルトを日頃から毛嫌いしており、葬儀の最中にもかかわらず父ウォルトのこの先の面倒を互いに押し付け合っていた。

 

 

葬儀も無事終わり親戚たちが一同揃って会食をしている中、孫たちがウォルト邸の地下室で界隈を物色していると大きな箱の中から1952年当時のウォルトの朝鮮戦争時代の写真と勲章を見つけた。するとそこにウォルトが椅子を取りにやってきた。孫たちはあわてて箱のふたを閉めたたが孫たちが何かを物色している様子を感じたウォルトは言葉も掛けず不機嫌そうな顔をし椅子を抱え地下室から出て行った。また一方では“ヘソ出し”の孫娘カレンがガレージで煙草を吸っていると半分シートをかぶったビンテージカーに気付いた。ウォルトの愛車1972年製のグラン・トリノである。そこにウォルト現れた。カレンはとっさに煙草を投げ捨て「おじいちゃんこんな凄い車いつ買ったの?」と媚を売るも「1972年だ」とそっけない返事をしカレンが捨てた煙草を足で踏み消した。このようにウォルトは孫たちに対し慈しみをもって接しようとはしなかった。

 

ある日、隣りに住むモン族のタオ(ビー・ヴァン)がウォルトにジャンプケーブルを借りに行くと「そんなもの持ってない!礼儀をわきまえろ。うちは喪中だ」と一蹴し取り合おうとしなかった。このようにウォルトは身内のみならず、近隣にとっても、近寄り難い存在であった。ウォルトがこんな意固地な性分になってしまったのは朝鮮戦争で17歳の少年を銃剣で殺してしまった自責の念に呵責まれていたからである。

ある日タオが自宅で庭の手入れをしているとモン族のギャングたちが現れ仲間になれと強要しタオを誘い入れウォルトの愛車であるグラン・トリノを盗めとタオをけしかける。逆らうことが出来ないタオは言われるままガレージに忍び込んだ。物音に気付き誰かが車を盗みに来たと察したウォルトは銃を片手にガレージへ向かい銃を構えるがウォルトが足元につまずき倒れ込んだため、タオは間一髪のところで逃れた。辺りが暗かったため盗人がタオであることはウォルトは気付いていなかった。

車を盗み損ねたタオだったがそれから彼のもとへ更に悪事に手を染めさせようとモン族のギャングたちは頻繁に姿を現すようになる。ある晩無理やりタオを連れ出そうとモン族のギャングたちと庭でもみ合っていると自分の庭にまで入り込んで騒ぎを起こしているギャングたちに我慢しきれなくなったウォルトが銃をかまえ家から出てきた。ギャングたちに少しも怯む様子をみせず「俺の芝生から出て行け」と銃を構え威嚇した。ウォルトの威勢に観念したギャングたちは「覚えとけよ。この借りは返すからな」といって引き退がった。タオの姉スー(アーニー・ハー)がウォルトに「タオを助けてくれてありがとう」と礼をいったがウォルトはまたもや「俺の芝生から出て行け」と言い放ち家の中に戻った。相変わらずの意固地ぶりである。

 

翌日ウォルトが家にいると玄関先で何やら物音がした。ドアを開けると食べ物などが玄関先に届けられていた。タオの家族や親族たちがタオを助けたウォルトを英雄視し、お礼として頻繁に貢物を届けるようになっていたのだ。そんな一家にウォルトは「助けたつもりはない。ただ自分の庭からゴロツキどもを追い出しただけだ」とつれない態度で一家をあしらおうとした。するとタオが「車を盗もうとしたのは自分だ」とウォルトに打ち明けた。怒りを隠しきれないウォルトは「もう一度偲びこんだら命はないぞ」と警告した。

 

それから数日後、タオの姉スーがボーイフレンドのトレイ(スコット・イーストウッド)と街を歩いていると3人の黒人の不良たちが絡んできた。トレイはスーを辱めようとからかう不良たちからスーを助け守ろうともしない臆病者だった。そこに偶然ウォルトが車で通りかかる。ウォルトはスーを助け不良たちを蹴散らした。ウォルトは悪さをする不良たちは元より、スーを助けようとしなかった臆病者のトレイに腹が立った。スーを車に乗せたウォルトは「あんなヘナちょこのボーイフレンドはやめとけ」と苦言した。

 

ある日ウォルトが自宅のポーチでくつろいでいると向かいの家の主婦が車から大量の荷物に手をやき困っている光景を目にした。そこに3人の若者が通りかかるが誰一人手を貸す者がいない様子にウォルトは失望する。しかしそこに一人の青年が現れた。タオである。タオは「大丈夫ですか。手伝いますよ」といって散らばった荷物を拾い荷物を運んでやった。それを見ていたウォルトは感心した。

数日後、ウォルトが自宅のポーチで缶ビールを飲んでいるとそこにスーが現れた。一人淋しく飲んでいるウォルトに「家でバーベキューをやるから来ない」と誘った。ウォルトは「ここで飲んでいる方がいい」と断ったが丁度クーラーボックスのビールが底をついたためスーの好意を受けた。招かれたウォルトはモン族の習慣や文化の違いに少し戸惑ったがすぐに彼らと打ち解けることが出来た。おしゃべりに花を咲かせているとスーは地下室にウォルトを誘った。そこにでは若者たちだけのパーティーが行われていた。当然そこにはタオもいた。スーがウォルトに「私の弟よ」とタオを指さすとウォルトは「グラントリノを盗み損ねた“トロ助”だ」と侮った。内気なタオは仲間たちに馴染め切れておらず一人ぽつんと孤立していた。ウォルトはタオに車を盗み損ねた間抜けさを引合いにだし、女友達とも口をきけないほどの不甲斐なさを叱咤した。以来、ウォルトはタオを“トロ助”と呼ぶようになる。

 

ある日タオとスーたちがウォルトの帰りを玄関先で待っていた。ウォルトが「どうした?」と事情を聴くとスーが「タオに車を盗もうとした償いをさせて欲しい」と申し入れた。一旦は申し入れを断ったウォルトであったが強引な申し出にさすがのウォルトも押し通されてしまった。翌日からタオはウォルトの家で奉公をする事になるがこの日を機にウォルトはタオを一人前の男に仕込んでいく。

 

 

 

グラン・トリノのレビュー・感想

 

老いても凛々しいクリント・イーストウッド

マディソン郡の橋”あたりから少しずつ老け込みをみせ始めたクリント・イーストウッドですが、特にこのグラントリノあたりからはかつての若かりし頃のイーストウッドのイメージとはまるで別人のようです。

でも生まれながらの上背で背筋をピント伸ばした雄々しい姿はやはりシャレているし、もし自分がその歳になったらあんな風に振る舞えるかといえばかなり疑問。イーストウッドはこのグラントリノから10年後に撮影された「運び屋」でも更に老いた主人公を演じていますが、同じ“老人役”でもグラントリノと運び屋では全くタイプが違い、グラントリノでは内向的で頑固な役柄、運び屋では外交的でコミニュケーションに長けた犯罪者役。

僕としてはやはりイーストウッドといえば口数が少なく、少し内向的なほうがイーストウッドらしくて個人的には好きですね。この映画の主役はもちろんクリント・イーストウッドなんですが、他のキャストはほとんど無名の役者さん。そんな状況でもこんなに感慨深い映画になっちゃうっていうところがクリント・イーストウッドの凄さというか、ど偉いオーラを感じます。

 

遠い親戚より近くの他人

グラン・トリノの感想ですが朝鮮戦争のトラウマから意固地な性分が形成された人物という設定になっていますが、それだけでなくウォルトの生まれ持った性格が多分に影響しているのだと思います。ウォルトと息子たちとの年齢的な環境が丁度僕の境遇にマッチしていて色々と考えさせられる場面も多かったんですが、少なくとも互いに理解し合おうとする努力が欲しかったですね。

ウォルトがタオを一人前の男にしようと奉公させていくうちにタオを認め始めたのはタオの実直さもあるのでしょうが自分の子供たちとの距離というか心の隙間をタオという青年を重ね合わせることで充たしたかったのではないかと思います。

よく「遠い親戚より近くの他人」って言いますが、本来このウォルトという老いた者の心に、子供や孫たちが寄り添うべきだったのでしょうけれど、結果的にこのタオという青年がウォルトに手を差し伸べ救い手となったわけです。

ウォルトの身体を病が蝕み始め吐血した時に、ウォルトがほんの少し憶病になり子供たちに電話を入れるシーンがありましたが、これこそが親子の自然な姿のはず。しかし結局親身に理解しようとしたのはタオという他人だったというところが少し悲しいです。

ウォルトが死に、愛車グラン・トリノを誰に相続するかという遺言書が読み上げられる場面で「愛車グラン・トリノをタオに譲る」と聞かされた時の孫娘カレンのがっかりした顔がとても印象的です。まさに「遠い親戚より近くの他人」の象徴を見せられた感じです。

 

「獅子はわが子を千尋の谷に落とす」

黒人に絡まれ怖気付く意気地のないトレイ役を演じたのがクリント・イーストウッドの息子スコット・イーストウッド。  後にも先にも彼が出てくるのはこの絡まれるシーンのみ。「父クリントよ、もう少しましな役で出演させてやっもいいんじゃないの?」って思ったりもするけれど、でも逆にそれがクリントの愛情というか、息子だからといって決して甘やかさない、まさに「獅子はわが子を千尋の谷に落とす」っていう事なんでしょう。

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