マディソン郡の橋

イーストウッド監督の感性と素晴らしい脚本が主人公の心の奥底をきめ細やかに描く

1995年製作 アメリカ 134分

監督

クリント・イーストウッド

キャスト

クリント・イーストウッド  メリル・ストリープ

撮影ロケーション・情景

1960年代アメリカアイオワ州マディソン郡  アイオワ州の片田舎

マディソン郡の橋のあらすじ

母フランチェスカ・ジョンソン(メリル・ストリープ)の死去に伴い、遺言信託の手続きをするために実家を訪れた長男のマイケル(ヴィクター・スレザック)と長女キャロリン(アニー・コーリー)はフランチェスカが「死後、遺体は火葬にし、遺灰をローズマン橋に撒いてほしい」と遺言を残している事を知る。そして遺品の中にあった母の日記とその母への想いを綴ったナショ・ジオ(ナショナルジオグラフィック)のカメラマン、ロバート(クリント・イーストウッド)の手紙をみつけ当時の二人の激しい恋を知る事に。

1965年、子牛の品評会に出かけた夫リチャードと子供たちは4日間家を留守にし、ジョンソン家はフランチェスカ一人に。そこへローズマン橋を撮影しに来たカメラマン、ロバートが道に迷い、ジョンソン家を通りがかった時に庭にいたフランチェスカに道を尋ねる。家事もひと段落し、暇を持て余していたフランチェスカは、口頭での道案内ではラチが開かないと判断し、ロバートの車の助手席に座り橋まで案内をする。

道中、フランチェスカに煙草をすすめたり、野の花をつんで手向けたりする優しいロバートの人柄にフランチェスカは好感を抱き夕食に招待する。そこでフランチェスカは、まじめではあるが何の変哲もない夫リチャードとは何か違うものを感じ始めていた。

マディソン郡の橋のレビュー・感想

監督クリント・イーストウッドの感性と視点

数十億ドルを使うような派手なセットはひとつもなく、製作費もわずか2,200万ドル、製作期間が42日間というタイトな状況下で作られた映画ではありますが、監督であるイーストウッドの感性と素晴らしい脚本が主人公の心の奥底をきめ細やかに描いています。

二人が過ごすことのできる最後の4日目の夜二人は結ばれますが、これまで過ごした二人の心の視点が鮮明に描かれているせいか、不思議と不貞さを感じません。

そして「一緒に町を出よう」というロバートの言葉にフランチェスカの心は葛藤しますが「今の気持ちは長続きしない」「夫を捨てたら夫はひとりでは生きてゆけない」「16歳の娘のこれからの人生に悪い影響を与えてしまう」という言葉で理性を保とうとします。

家族を捨てることができないと言い放ったフランチェスカに「これは生涯に一度の確かな愛だ」という言葉を残しロバートは去っていくのですが、終盤、夫リチャードと買い物に来たフランチェスカを、ロバートが雨に打たれながら立ち尽くすように見つめるシーンがあります。

それにはフランチェスカへの心のけじめをつけようとするロバートの切なさと、同様に揺れ動くフランチェスカのロバートへの想いがヒシヒシと伝わってきます。しかし、それが叶わぬ現実であるというフランチェスカの心の葛藤が、夫の運転する車のドアノブに手をかけ開けようとするも、躊躇してしまうというシーンに見事に表れています。

不倫に正当性を唱えるつもりはありませんが、たとえ不貞ではあっても誰かを真剣に愛したことのある人ならば、この4日間の時の流れの無常さに同情を感じる人もいるのではないでしょうか。

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