ラスベガスという街をシチュエーションとしているあたりが妙に調和がとれていて面白い
1995年製作 アメリカ 111分
監督
マイク・フィギス
キャスト
ニコラス・ケイジ エリザベス・シュー ジュリアン・サンズ キャリー・ローウェル
撮影ロケーション・情景
ラスベガス ラスベガス・ブルーバード(フラミンゴラスベガス附近) カジノ ネバダ山脈 ロサンゼルス アメリカのbar BMW5シリーズ
リービング・ラスベガスのあらすじ
ベン・サンダーソン(ニコラス・ケイジ)は家庭を持ち、ロサンゼルスで暮らしていたが重度のアルコール依存症が原因で妻子と別れ、勤めていたハリウッドの映画制作会社も解雇されてしまう。
自暴自棄に陥っていたベンは自宅を整理し、家族の写真も焼き捨て、わずかな退職金を手に愛車BMWに乗り眠らぬ街ラスベガスへと向かう。ラスベガスで財力尽きるまで酒を飲み続け、そこで死のうと決めていたからだ。
ラスベガスに着くと安いモーテルを借り、そこを棲家とするベンであったが、相変わらず酒に溺れ、酒瓶片手に夜な夜なラスベガスの街をぶらついていた。そしてある晩、ベンは酒に酔いながら車を運転していて道路を渡ろうとする女性を跳ねそうになる。その女性は高級娼婦のサラ(エリザベス・シュー)だった。サラは「車は赤信号で止まるのよ」とベンを戒めその場を立ち去るが、ベンは注意された事など意に介さず、モンローウオークさながらに歩くサラの後ろ姿にニンマリしてしまう。
その後ベンは毎日酒を片手に車でラスベガスの街を徘徊するのだが、客探しに街をふらついていたサラを偶然見かけ声をかける。相当酔っていたベンは人目もはばからず「俺の部屋に1時間いてくれたら500ドル払う」と自分のモーテルにサラを誘い込んだ。
ところがベンは性的サービスよりも話し相手になってもらう事を望み、延長料金を払ってまでサラとの会話を一晩楽しんだ。しかし、高いお金を払って行為に及ぼうとしないベンの事をサラは不思議に思いベンから事実を聞くことになる。
「ラスベガスには酒で死ぬために来た」と話すベンに対しサラは最初「いったい何日かかるの?お酒で死ぬのに」とあざ笑っていたが、ベンとの関係を続けていくうちに互いに惹かれあい、「お酒を止めろと絶対に言わない」事をサラに約束させベンはサラとの同棲生活を始める。ベンはアル中、サラは娼婦という互いの立場を重々承知しながら暮らしていくはずの二人だったが、愛情が深まるにつれベンのサラへの嫉妬と、ベンの健康を案じはじめたサラの違約的な発言が元で少しずつ二人の関係が壊れ始めていく。
リービング・ラスベガスのレビュー・感想
複雑怪奇な展開など特にない単純なストーリー
エンターテイメントシティ、ラスベガスを舞台に撮影された映画ですが1995年の作品という事でオープニングで登場するストリップ(ラスベガス・ブルーバードというメイン通り)の上空からの風景は今よりだいぶ淋しい感があります。
僕は個人的にこのラスベガスが好きなので何度も繰り返し観ている映画ですが、ストーリー的にはアル中と娼婦のラブロマンスという事だけで特に複雑怪奇な展開などなく単純なストーリーです。
主演男優賞のニコラス・ケイジ さすがに上手い
ただこのベンというアル中を演じるニコラス・ケイジはアカデミー賞主演男優賞を獲得しただけの事はあり、凄くリアルな演技をしてくれます。特にアルコール依存の中毒症状や孤独感に苛まれるシーンの演じ方はさすがに上手いですね。
サラとレストランで食事をする場面があるのですがアル中なので食欲がなく、料理を口元まで持っていこうとしても躊躇して止めてしまいます。それでも酒だけを飲み食事に付き合うふりをするベンの様子からは、かなり病状が悪化している事がナチュラルに伝わってきます。
人生山あり谷ありで、時には誰でも自暴自棄になる事もあるでしょう。一時の感情から判断を誤る事もあるでしょう。しかし生きてさえいればその先には必ず未来が待っています。もっと自分を大切にすべきです。サラがベンとの約束を破り「お願い、お酒をやめてお医者さんに行って」と説得するあたりは男性として観ていて嬉しいし、二人が真っ当な形で暮らしていける事を願うけれど、ベンの健康が既に共なわない状況になってしまった事が非常に残念。
物語のシチュエーションをラスベガスに設定したのがGood!
また、ラスベガスへは個人的に何度か訪れていますが、家族で楽しめるエンターテイメント性を持っている反面、夜ともなればホテル売春を斡旋する輩たちのチラシがあちらこちらで撒かれているという現実を考えると、まさに二面性をもつ街。この映画がハッピーエンドで終わらないという内容であるせいか、このラスベガスという街をシチュエーションとして設定しているあたりは妙に調和がとれていて面白いです。