レスラー

一見スポ根ぽいけれど、実は疎遠になっていた父と娘の心の隙間を描いた物語

2008年製作  アメリカ  115分

監督

ダーレン・アロノフスキー

キャスト

ミッキー・ローク   マリサ・トメイ    エヴァン・レイチェル・ウッド

撮影ロケーション・情景

アメリカンプロレス トレーラーハウス ストリップクラブ ニュージャージー州オーシャンシティ アメリカのスーパーマーケット ダッジラムバン

レスラーのあらすじ

80年代全米中を轟かせていた伝説のプロレスラー ランディ・“ザ・ラム”(ミッキーローク)は年月の経過とともに体力も衰えはじめ、今ではスーパーでの仕事を掛け持ちしながら辛うじてレスラー生活を続け生計を立てていた。彼には結婚歴があり一人娘ステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)もいたがプロレスで全米を飛び回り家庭を顧みない行動が災いして彼女が幼い頃家庭は破綻した。

そんな孤独でいじましい生活を送るランディの唯一の楽しみはストリップクラブで働くダンサーのキャシディ(マリサ・トメイ)に会いに行く事だった。ランディは毎日のようにプロレス巡業から帰るとキャシディに会うため店を訪れていた。

そんなランディがある日巡業先の試合中心臓発作を起こし倒れてしまう。原因はランディが過去、長期にわたり使用していたステロイド剤だった。手術を担当した主治医からは「もうプロレスは無理、すぐに止めるべき」と勧告されてしまう。ランディはそのことを真っ先にキャシディに伝えに行くが、キャシディは「疎遠になっている一人娘ステファニーに会ってそのことを伝えるべき」と窘めた。

ステファニーに会う事を決めたランディは日頃から肌身離さず持ち歩いる幼少のころのステファニーの写真の裏に書いてある連絡先を元に電話をかけるが一向に繋がらず、ついにランディはアポなしで彼女の家を訪れた。

ようやくステファニーに会う事ができたランディであったが、案の定彼女は冷ややかで今まで家族を大切にしなかった父ランディをすぐには許すことは出来なかったが、ランディは父親らしさを取り戻すためにステファニーにプレゼントを贈るなどして、徐々に二人の関係に修復が見え始めた。ランディは昔親子で訪れた思い出の場所へステファニーと共にでかけ楽しい時間を過ごすが、自責の念にかられていたランディは自分の犯した過去の過ちをステファニーに詫び涙を流す。

レスラーのレビュー・感想

はじめは何となくプロレスラーのスポ根もの?って思って正直あまり期待していなかったんですが、観ると全く違っていて、自分の人生、生き方、家族とのつながりを描く物語で、すごくいい映画を観たなぁって思いました。僕は普段、アカデミー賞何たらというものは全く気に留めず映画を観るんですが、後々調べてみると、この作品、ヴェネツィア映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ主演男優賞を獲っていて「なるほど、いい映画なわけだ」って思いましたね。

ランディ扮するミッキーロークですがナインハーフの頃の超イケメンだった面影は全くありません。顔を整形して失敗したという話ですが、初めは観ていてとても痛々しい感じでした。でも一回りも二回りも体は肥大化していますが、元ボクサーという事もあり、この年齢でこの身体、よく鍛え上げられているなあと感心します。

疎遠になっていた父と娘。長い間寂しい思いをしたステファニーの心の隙間はすぐには埋められないのでしょうが、思い出の場所でダンスを踊る父と娘、父が娘の肩を抱きかかえながら仲良く散歩するシーンはとても幸せな気持ちになるし、この時間がずっと流れていてほしい、二人を引き裂かないでほしいと観ていて願わずにはいられません。

もしも、娘さんと何らかの理由で疎遠になってしまっていて、気持ちにわだかまりがあるお父さんがいたとするなら、ぜひこの映画を観てください。僕はその点ではこの映画に救われました。

そして、何といってもランディの生き方がカッコいい。歳を老いても身体を張って頑張るオヤジって、観ていて勇気もらえます。

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