メッセージ・イン・ア・ボトル

脚本、音楽、映像、どれをとっても美しい秀作

1999年製作  アメリカ  131分

監督

ルイス・マンドーキ

キャスト

ケビン・コスナー  ロビン・ライト・ペン  ポール・ニューマン  ジョン・サヴェージ   ロビー・コルトレーン

撮影ロケーション・情景

新聞社 シカゴ マサチューセッツ 海岸 ノースカロライナ 帆船

メッセージ・イン・ア・ボトルのあらすじ

海岸の砂浜で見つけた謎めいた手紙

シカゴの新聞社で熱心な記者として働くテリーサ(ロビン・ライト・ペン)は離婚し息子ジェイソンと二人暮らし。そんなある日休みを取ったテリーサはマサチューセッツのケープコッドで休暇を楽しんでいた。

テリーサが海岸を散歩していると砂浜に埋もれた瓶を見つける。瓶のコルクを抜き中を覗くと、そこには細長く巻かれた手紙が入っていた。“愛するキャサリン”と題された手紙を読んでいくと、ある男性がキャサリンという女性への想いを綴る手紙で、文脈から察するところキャサリンという女性は既に亡くなっている事が窺えた。

休暇を終えてシカゴに戻るテリーサだったが、帰えりの飛行機の中でもその手紙を書いた主のことが気になって仕方がない。手紙を書いた人物の誠実さに心を打たれたテリーサは新聞社に戻ると仲間の記者たちにその手紙を読んで聞かせた。

テリーサの上司であるコラムニストのチャーリー(ロビー・コルトレーン)はその記事をテリーサに内緒でコラムに載せたが、プライベートな手紙を新聞に載せた事は倫理に反するとしチャーリーに抗議した。しかしその記事への世間からの反響は大きく読者からのたくさんの投書が届いた。投書の中身は賛否あったが、その中に同じような手紙を拾ったという読者からの投書があり、その手紙が同封されていた。それによりテリーサは2通の手紙を手にすることになる。

謎めいた手紙に、いても経ってもいられないテリーサは手紙の主に会ってみようと決め、あちらこちらにコネを使い、手紙を書いた主の手掛かりを探そうとする。そこにある情報が入り瓶に使われていたコルクの濡れ具合からして海に浸かっていたのは2年ぐらいであるという事が分かった。更に便箋に印字されている帆船のロゴや使われたタイプライターの機種などの情報を集め、手紙を書いた主がギャレット・ブレイクという男で、ノースカロライナ州アウターバンクス“フォスターレイン18番地”に住んでいる事を突き止める。

アウターバンクスへと向かうテリーサ

テリーサは早速アウターバンクスへと向かった。アウターバンクスについたテリーサはギャレットの家を訪れる。そこには老いた彼の父ドッジ(ポール・ニューマン)がいて、ギャレットは近くの港にいる事を教えた。港に行ってみると帆船を修理するギャレットがいた。二言三言会話を交わす二人だったがギャレットがテリーサに「船に乗ってみるか」と誘った。それから二人は次第に心を通い合わせていくがテリーサは瓶の手紙の事に結局触れらないまま、親密な関係を持ち始めていく。

メッセージ・イン・ア・ボトルのレビュー・感想

派手さはひとつもないが脚本、音楽、映像、どれもが素晴らしいと感じる映画

手紙の主にいくら興味があったとはいえ、のっけから素性の解らない男と一緒の船に乗るという危険な行為は、普通あり得ないし、少し不自然な感じがします。それとテリーサが手紙を拾ったいきさつを、もっと早い場面でギャレットに告げるべきと感じる所はありますが、“真相明かし”を少しずらす方が物語としてはドラマチックになるので仕方ないのでしょう。

最後の嵐のシーンはギャレットが心を開くようになり、テリーサとの人生を歩もうとしていた矢先の事だけに悲しすぎます。テリーサもさることながらギャレットを支え続けてきた父ドッジも、さぞかし無念だったろうと思う。

この映画は大半、テリーサとギャレットの恋愛を描いていますが、もう一つの側面に父と子の絆がテーマに描かれていますね。この二人の関係が実にいい。ギャレットがシカゴに行く時、最寄りのバス停まで父ドッジが車で送るシーンがあるのですが、緊張している息子を父がからかう場面は凄く洒落ていて、アメリカっぽいなあって感じます。

総評として派手さはひとつもないですが、脚本、音楽、映像、どれもが素晴らしいと素直に感じる映画です。

ランダム・ハーツ

純粋でピュアな大人の恋愛映画

1999年製作  アメリカ  133分

監督

シドニー・ポラック

キャスト

ハリソン・フォード  クリスティン・スコット・トーマス  チャールズ・S・ダットン  ボニー・ハント  デニス・ヘイスバート  シドニー・ポラック  リチャード・ジェンキンス   ディラン・ベイカー  ポール・ギルフォイル  ピーター・コヨーテ  スザンナ・トンプソン  ビル・コッブス  ケイト・マーラ

撮影ロケーション・情景

ワシントンD.C. ワシントン郊外  アメリカンポリス  アメリカの葬儀  空港  航空機事故 選挙活動  アメリカの葬儀  マイアミ  チェサピーク湾  Lincoln

ランダム・ハーツのあらすじ

ワシントン郊外に暮らすダッチ・ヴァン・デン・ブロック(ハリソン・フォード )はワシントン市警の巡査部長で妻ペイトン(スザンナ・トンプソン)と平凡でありながらも幸せな生活を送っていた。週末のある金曜日ダッチはその晩、ペイトンと食事をしようと約束し仕事に向かう。ダッチは仕事の合間に電気店に寄り天気予報付のラジオを買った。ペイトンの父へのプレゼントである。

するとその電気店に陳列してあるテレビから、マイアミ行きのサザン航空437便の墜落事故のニュースが流れた。その事をさほど気にも留めなかったダッチはそのまま職場へと向かう。職場に着き現場に向おうとすると、ペイトンから食事のキャンセルの電話が入った事を同僚から聞かされた。妻の帰りが遅くなると察したダッチはまっすぐ家に帰らず、行きつけの店で一杯やっていた。するとそこでもサザン航空の墜落事故のニュースが流れていた。

ダッチは家に電話し妻からのメッセージが入っていないか確かめると、そこにはマイアミでのカタログ撮影でトラブルになり、急遽マイアミに行かなければならなくなったというペイトンからのメッセージが入っていた。妻の身を案じたダッチは航空会社に連絡をし、墜落機にペイトンが搭乗していたか否かを確認するが、その便にペイトンの名前は見当たらないと告げられると、ダッチは「きっと別の便に乗ったんだろう」とホッとして胸をなでおろした。

しかし他のマイアミ行きの便のスケジュールを聞くと、どれもペイトンが出かけた時間とはつじつまの合わない時間帯だったため不審に思ったダッチは、妻の職場へと向かい上司に状況を確認した。するとカタログ撮影はシーズンオフのため現在行われておらず、ペイトンのマイアミ行きは社の出張ではないと知らされる。

ペイトンが帰らぬまま数日が経った。するとダッチのところへ墜落したサザン航空の職員が訪ねてきた。職員は改めてペイトン・ヴァン・デン・ブロックという人の搭乗記録はなかったと告げるが、ダッチは職場に嘘をついてまで出かけた事に妻の不貞を感じ始めていた。ダッチは職員に乗客名簿の提示を求めた。規則で見せられないと一度断られるが、執拗に迫るダッチに職員は根負けし搭乗者名簿を手渡すと現場で妻の遺体の確認をするようダッチに求めた。

一方、ダッチ同様に遺体の身元確認を促された人物がいた。墜落した航空機に搭乗していたカレン・チャンドラー(ピーター・コヨーテ)の妻ケイ・チャンドラー(クリスティン・スコット・トーマス)である。ケイは下院議員で次期選挙に向けて再選活動中であり多忙な日々を送っていた。ケイはサザン航空の職員に対し、夫はマイアミなど行かずニューヨークに出張に出かけていると事実を否定するが、搭乗者名簿で夫カレンの名前が確認されたと告げられると素直に遺体確認に応じた。遺体の安置所となる海軍基地には納体袋に収められた遺体が所狭しと並ぶ。モニター越しに遺体を確認するダッチとケイ。

ダッチはそれから墜落事故犠牲者リストをもとに妻の隣りの席に座っていたカレン・チャンドラーの存在を知り、ペイトンとの関係を解明しようとカレンの妻ケイを訪ねた。

ランダム・ハーツのレビュー・感想

この作品の主人公がハリソン・フォード。彼が生まれたのが1942年で1999年の映画だから撮影当時彼は57歳。還暦直前の歳で純粋な男の恋心を演じきれるのはハリソンくらいではないでしょうか。特にあの目力というか、眼光の鋭さというか、物凄い純粋さを感じてしまいます。

ちなみに同世代の俳優さんにロバート・デ・ニーロやマイケル・ダグラスがいるけれど、大人の恋、純粋な恋愛を演じさせたらハリソンはぴったりとハマりますね。僕はこの3人を良く比較してしまうのですが、同じ刑事役をやるにしてもロバート・デ・ニーロとハリソン・フォードでは全くタイプが違って映るし、マイケル・ダグラスは刑事役というよりビジネスマンや投資家みたいな役の方が似合うし、とにかく青年ぽさ、純粋さという点ならハリソンが群を抜いていますね。

でも、それぞれ違う個性があるからこそ、俳優さんという職業が成り立っているのでしょうが。

 

まあ、俳優同士の比較なんて、一流ギタリスト同士を比較して、どっちが上手い?なんて言っている次元と一緒で、あまり意味ありませんが。・・(笑)

作品での感想ですが、不倫をテーマにした作品はたくさんあるけれど、同じ航空機に偽名を使って搭乗し、事故に遭って不倫がばれるという設定は意外にありそうでなかったと思うし、逆にそれが妙に現実めいていて、物語の展開としては面白かったです。クリスティン・スコット・トーマスも20年も前だから色気もあるし魅力的ですね。

ただ普通に考えて、不倫していた妻や夫の配偶者同士が恋愛関係に発展するというのはちょっと考えにくいですが、堅物同志の二人だからこそ、その意外性のある展開にこのストーリーとしての面白さがあるのでしょう。

それと、ダッチの職業が警察官という設定のためか、暴力シーンや銃撃戦のようなシーンがいくつかでてきますが、少し残念なのは、あれらのシーンは退屈さを感じさせるのでカットしてもよかったのではないかと思います。この物語に銃や暴力は似合いません。

アデライン、100年目の恋

「過去恋愛の回想」などという簡単な言葉では片づけられない衝撃の展開

2015年製作  アメリカ  112分

監督

リー・トランド・クリーガー

キャスト

ブレイク・ライヴリー  ミキール・ハースマン  ハリソン・フォード  エレン・バースティン  キャシー・ベイカー  アマンダ・クルー  リンダ・ボイド  フルヴィオ・セセラ

撮影ロケーション・情景

サンフランシスコ ゴールデンゲートブリッジ イエローキャブ サーブ 過去恋愛の回想 イギリス郊外

アデライン、100年目の恋のあらすじ

1908年1月1日。サンフランシスコのとある小児病院でアデライン・ボウマン(ブレイク・ライヴリー)は生まれた。両親はフェイとミルトン。兄弟はいなかった。

アデラインが21歳になった1929年6月16日、彼女は母親とゴールデンゲートブリッジの建設工事の見物におとずれていた。その時、彼女の帽子が風で飛ばされ湾に流されそうになり、そこに偶然通りかかった若き技師クラレンスJブレスコットが帽子を拾い彼女に紳士的な気遣いをみせた。

それから87日後、二人はサンフランシスコの聖メアリー大聖堂で華やかな結婚式を挙げ、それから3年後、アデラインは女の子を出産した。赤子は彼女の父方の祖母の名前からフレミングと名付けられた。

1937年2月17日、ゴールデンゲートブリッジの工事が進められる中、足場の崩落事故が発生し作業員8人が命を落とした。アデラインの夫もその中の一人だった。

スリップ事故を機にアデラインに奇妙な現象が

夫の死から10か月後、アデラインは両親の海辺の別荘へ車を走らせていた。そこには5歳になった娘フレミングが待っていた。しかしその時、信じられない奇妙なことが起きる。それはまるで魔法のような出来事だった。温暖なカリフォルニアのソノマ郡に雪が降り、雪道に慣れていないアデラインはスリップ事故を起こしまい凍てつくような冷たい川に転落した。あまりの冷たさに彼女の身体は反射的に無酸素状態に陥った。

直ぐに呼吸は止まり、心拍も弱まった。2分もしないうちにアデラインの体温は30.5度まで急落した。そして彼女の心臓は鼓動を止めた。そしてしばらくすると稲妻が走り彼女の車を直撃。その稲妻は5億ボルトもの電気を放ち、6万アンペアという電流が流されたが、それは3つの効果をもたらす結果となった。

まず1つは電気エネルギーで彼女の心臓が復活した。そして2つ目に無酸素状態から解かれ、2分後には第一呼吸を引き起こした。そして3つ目は2035年にフォン・レーマン博士によって発見されるDNAの電子圧縮論のとおり、アデラインはこの時点から時間の経過による破壊作用を一切受けない受けない体となり、今後一切老いる事のない身体となる。

アデラインは年を経ても変わらぬ容貌の理由を「健康的な食事と運動、そして遺伝と運のお蔭」と周囲に説明していた。街で昔のクラスメイトと会っても、誰もがアデラインの変わらぬ若々しい姿に驚き、愛娘フレミングとは姉妹と間違えられるほどの美貌を保っていった。しかし1953年ある事件が起こった。

閑静な住宅街に住むアデラインは些細な交通違反で警官に呼び止められ運転免許証の提示を求められる。免許証に1908年生まれと記載されていた事でどう見ても45歳には見えない実年齢とのギャップに不信を抱いた警官は、免許証を取り上げ出生証明書を署に提出するよう求めた。

自分の正体が暴かれる事を察した彼女は直ちにサンフランシスコへ舞い戻り、身を隠すようにジェニー・ラーソンという偽名を使って医科大学の事務職に就いた。彼女は仕事上の立場を利用し、自分の体の状況について懸命に調べていった。一年間調べ上げた結果、ジェニーに突き付けられたのは彼女の体の異変は科学では説明のつかないという事実だった。

ある雨の降る夜、二人の男が「アデライン?」と声をかけた。FBIだった。彼女は「私はジェニー・ラーソン、人違いよ」と誤魔化すが、居住記録がないという理由から車に乗せられ連行される。本部へ連行するための飛行機が空港で待機していたが、捜査員2人が車を離れた隙に、彼女は車の後部座席を壊しトランクルームに抜け脱出した。彼女は裸足のまま必死に車から家へと逃げ帰った。「もうここにはいられない」と悟った彼女は手際よく荷物をまとめ、愛娘フレミングに別れを告げ逃亡を決心する。

そして彼女は二人の自由と安全のため誓った。その誓いとは、居場所を転々と移す事、名前も住所も容姿も10年毎に変える事、そしてこの事実を決して口外しない事だった。

逃亡生活から7週間後、彼女はジェニー・ラーソンの名前を捨て、今度はスーザン・フライシャーという名前を使いオレゴン州の農家に住まいを移した。以来彼女はたった一度の例外を除いて60年間誓いを守る事になる。

アデライン、100年目の恋のレビュー・感想

歳をとらないで永遠に若くいられるというのは女性からすれば一見羨ましい話。しかし今後一切老いる事のない現象がもし自分の体に起こり、いつまでも歳をとることが出来ないという立場に立たされた時の苦悩というものが、どんなに苦しいものかアデラインが悩む心の動きによく表れています。

アデラインを演じたブレイク・ライヴリーという女優さん、過去に「ゴシップガール」や「HICK ルリ13歳の旅」で見たことはありましたが、正直、図抜けて美人とは感じたことがなかったですが、この作品でのライヴリーは超綺麗で魅力的ですね。

また、この作品はラブストーリーであり、ちょっぴりミステリアスな部分も持つ作品ですが、この非現実的な物語のあらすじをこのサイトに纏める際、初めは描かれる展開のままあらすじを書いていたのですが、過去のプロットと現在の様子とが激しく織り交ざっているので、このままあらすじを書いていってもたぶん物語として話が繋がらなくなってしまうだろうなって思ったため、実際の展開を全く無視して、時系列であらすじを纏めた次第です。

なので、このあらすじだけを読んでも、大して面白みのないような映画に思えてしまうかもしれませんが、実際は過去の回想と現在とを上手に織り交えて編集されていますので、とても面白いミステリアスな内容に仕上がっています。そう考えると、映画ってホント、作り方次第だなあって、つくずく考えさせられてしまいます。

中盤を過ぎ、ハリソンフォードが出てくるあたりから、単に「過去恋愛の回想」などという、単純な言葉では片づけられない衝撃の展開が待っています。

あなたに降る夢

寛大な心をもつ警官と心優しきウェイトレスの心温まる恋愛ドラマ

1994年製作  アメリカ  101分

監督

アンドリュー・バーグマン

キャスト

ニコラス・ケイジ  ブリジット・フォンダ  ロージー・ペレス  ウェンデル・ピアース  スタンリー・トゥッチ  リチャード・ジェンキンス

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク アメリカンポリス 宝くじ ホテル 破産

あなたに降る夢のあらすじ

宝くじのお告げ

ニューヨークで警官として働くチャーリー・ラング(ニコラス・ケイジ)はとても庶民的で人懐っこく困った人をみれば放っておけない正義感の強い人気者であった。ある日チャーリーが洗面台で髭をそっていると隣でシャワーを浴びる妻ミュリエル(ロージー・ペレス)から「明日宝くじを買ってきて」と頼まれる。ミュリエルは昨晩スロットマシーンでチェリーを3つ並べた夢を見て「これは宝くじが当たるお告げ」と信じ込んでいた。

チャーリーとイボンヌの出会い

翌日チャーリーは相棒のボー(ウェンデル・ピアース)と外回りをしている途中宝くじを買った。そして丁度昼時間であったため近くのレストランで昼食をとる事に。そこにはイボンヌ(ブリジット・フォンダ)がウェイトレスとして働いていた。イボンヌは元夫の金銭トラブルで破産宣告を受けていたが、そんな窮乏した状態でも客に優しく接し、一生懸命に働く美しい女性だった。チャーリーたちが注文を済ませコーヒーを飲んでいると急遽、緊急出動の無線が入った。

コーヒーしか口にしていないチャーリーはお勘定を済ませようとレジに向かうが、財布にお金が入ってなくチップを払えない状況にあった。それを聞いたイボンヌは「チップは結構よ」とチャーリーに言うがチャーリーは宝くじを買ったことを思い出し、宝くじが当たったら当選金の半分をチップとして渡し、当たらなくても明日チップを払いに来るとイボンヌに約束した。イボンヌは冗談半分に話を聞いていたがチャーリーは本気でそう思っていた。

奇跡の高額当選

その夜、テレビを観ていたミュリエルが突然大声をあげた。なんとチャーリーが買った宝くじが400万ドルという大金に当選したのである。大声で叫びながらミュリエルは喜んだがチャーリーは神妙な面持ちだった。イボンヌに当選金の半分を渡す約束を思い出したからである。

チャーリーはミュリエルにその事を打ち明けるとミュリエルは「200万のチップなんてありえない」と憤慨した。それでも生真面目なチャーリーは「約束したんだ」と当選金の半分200万ドルをイボンヌに渡すと言い張った。

翌日チャーリーは相棒のボーに約束を守るべきかチップだけを渡し当たらなかった事にするべきか相談した。するとボーは「君なら正しい事をする」と意味深な事を言い、それを聞いたチャーリーはイボンヌが働くレストランに向かった。イボンヌは「きのうはごめんなさい。人生最悪の日でイライラしていた」とチャーリーに詫びた。チャーリーはイボンヌから破産宣告を受けた話を聞くと、約束通り当選金の半分200万ドルを渡すとイボンヌに告げた。それを聞いたイボンヌは「からかわないで!」と最初不機嫌そうな顔をするが、それが事実だと知ると、喜びと驚きで有頂天になり店内にいるお客全員にアイスクリームを振る舞った。

ニューヨークで一躍時の人に

それから数日後マンハッタンで宝くじの当選授賞式が行われた。当選金の半分をウェイトレスに譲渡したことが話題になりそこにはイボンヌも招かれた。チャーリーはインタビューで見ず知らずの他人に200万ドルも譲渡した事を問われると「約束は約束です」と答え記者たちを驚かせた。この事が翌日の新聞のトップニュースとして取り上げられ、チャーリーとイボンヌは一躍ニューヨークで時の人となる。

億万長者の集い

一方、当選金額は半減したものの200万ドルという大金を手にしたミュリエルはブランド物を買い漁りチャーリーに相談もせず勝手にアパートをリフォームするなど浪費癖がエスカレートしていった。これが彼女の人生を次第に狂わせていく。

ある日チャーリーたちは宝くじミリオネアクラブが主宰する「億万長者の集い」に招かれる。華やかな豪華クルーズ船でのパーティーである。当然そこにはイボンヌも招かれていた。チャーリーはイボンヌが船つき場でタクシーの運転手と釣り銭の事で揉めているのを目撃する。チャーリーはイボンヌに「お釣りは結構です(金持ちだから)というんだ」といって笑った。そうこうしている内にクルーズ船が出港してしまい、船に乗り損ねたチャーリーとイボンヌは二人きりのディナーを楽しみ互いの身の上話しに花を咲かせた。

チャーリーとミュリエルの泥沼離婚劇

チャーリーを残し一人クルーズ船のパーティーで楽しむ妻ミュリエルは参加していた詐欺まがいの投資コンサルタント ジャック・グロス(シーモア・カッセル)に投資の手ほどきを受けていた。お金に欲をかくミュリエルはグロスにとって格好の餌であった。チャーリーとの生活より成金に走るミュリエルは当選金をイボンヌにくれたことに我慢できずチャーリーに離婚を迫る。

一方イボンヌは当選金の半分をもらったことを元夫に知られ金の無心をされる。チャーリーとイボンヌは共に家を出て、居場所を求ホテルへ移そうとするが奇遇にも二人は同じホテルで遭遇する。二人は意気投合し自然と結ばれた。

数日後チャーリーはミュリエルとの離婚協議のため、とあるオフィスを訪れていた。ミュリエルに雇われた敏腕弁護士は、当選金の既得権は全てミュリエルにあると主張した。そんな主張にチャーリーは「金はいらない。いざこざは嫌だ」といい、相手の要望をそっくりのんだ。しかしミュリエルの要求はそれだけではなかった。なんと、イボンヌに渡した200万ドルも返還するよう要求したのだ。これにはさすがのチャーリーも酷すぎると抗弁した。数日後裁判が行われた。ミュリエルの弁護士はチャーリーとイボンヌが不倫関係にあったと結論付け、陪審員への心証を悪くしたチャーリーは敗訴した。

それにより、もらった200万ドルを返還するはめになったイボンヌは開業したばかりのレストランも人手に渡る事となり、居たたまれなくなった彼女は裁判所を飛び出した。チャーリーはイボンヌを追うがチャーリーを不幸にしてしまった事に自責の念に駆られるイボンヌはチャーリーに「もう会わないほうがいい」と提言するがチャーリーのイボンヌに対する愛は変わらなかった。

それぞれの人生

無一文になっても二人の心は豊かさに溢れ、誰に対しても優しく接した。そんなある日、ホームレスが腹をすかせ二人に物乞いをすると、イボンヌたちは暖かいスープをふるまってやった。実はそのホームレスに扮した人物こそ、チャーリーたちを取材していたニューヨークポストの記者カメラマンであった。チャーリーとイボンヌの優しさを目の当たりにした記者は「ふたりの苦悩の日々」というコラムを掲載した。これにより二人の苦悩と優しさがニューヨーク市民に拡散され、二人には基金財団を通じニューヨーク市民から集めたチップが毎日のように届けられた。その総額はなんと60万ドルにも達していた。

その後チャーリーは怪我の為休職していた警官に復職しイボンヌは店を取り戻した。

一方ミュリエルは投資コンサルタントグロスと結婚するが、グロスはミュリエルの全財産を奪って逃亡した。

あなたに降る夢のレビュー・感想

大金を持った事のない人が大金を掴むとこうなっちゃうって事をミュリエルの結末がよく物語っているという感じですね。

結局最後に幸運を掴んだのは善人警官のチャーリーと心優しきイボンヌで、金に目が眩んだミュリエルは不幸のどん底にって事なんでしょう。

よく「お金がすべてじゃない」とか「愛があってもお金がなければ生きて行けない」とか色々言われますが、今回の場合は最後に愛が勝ったって事かな。

宝くじで高額当てるのも凄いけれど、その半分を単なる口約束であげちゃうところもまた凄い。でも、もっと凄いのがこの話が実話であるという事。多少なりとも脚色されているんでしょうけれど、宝くじに当たった事、イボンヌに半分上げた事、ミュリエルがグロスに騙されたことは事実なんでしょうから。

この映画25年以上前に作られたわけだから、実際の出来事はもう少し前になるんだろうけど、チャーリーにしてもイボンヌにしてもミュリエルにしても、この世のどこかにいる (亡くなっていたらごめんなさい)んだろうと思うと、それぞれが今、何を思い、どんな暮らしをしているのかがとても興味ありますね。

イボンヌみたいな美人さんじゃなくてもお金あげたの?ってな事も聞いてみたい(笑)

総合的に心温まるいい映画です。自分はチャーリーのような寛大さはないですが、でも、人に優しく、真面目にコツコツやっていれば、いつかきっといいことが起こるかもと素直に思いたくなる映画です。

リービング・ラスベガス

ラスベガスという街をシチュエーションとしているあたりが妙に調和がとれていて面白い

1995年製作  アメリカ  111分

監督

マイク・フィギス

キャスト

ニコラス・ケイジ エリザベス・シュー ジュリアン・サンズ キャリー・ローウェル

撮影ロケーション・情景

ラスベガス ラスベガス・ブルーバード(フラミンゴラスベガス附近) カジノ ネバダ山脈 ロサンゼルス アメリカのbar BMW5シリーズ

リービング・ラスベガスのあらすじ

ベン・サンダーソン(ニコラス・ケイジ)は家庭を持ち、ロサンゼルスで暮らしていたが重度のアルコール依存症が原因で妻子と別れ、勤めていたハリウッドの映画制作会社も解雇されてしまう。

自暴自棄に陥っていたベンは自宅を整理し、家族の写真も焼き捨て、わずかな退職金を手に愛車BMWに乗り眠らぬ街ラスベガスへと向かう。ラスベガスで財力尽きるまで酒を飲み続け、そこで死のうと決めていたからだ。

ラスベガスに着くと安いモーテルを借り、そこを棲家とするベンであったが、相変わらず酒に溺れ、酒瓶片手に夜な夜なラスベガスの街をぶらついていた。そしてある晩、ベンは酒に酔いながら車を運転していて道路を渡ろうとする女性を跳ねそうになる。その女性は高級娼婦のサラ(エリザベス・シュー)だった。サラは「車は赤信号で止まるのよ」とベンを戒めその場を立ち去るが、ベンは注意された事など意に介さず、モンローウオークさながらに歩くサラの後ろ姿にニンマリしてしまう。

その後ベンは毎日酒を片手に車でラスベガスの街を徘徊するのだが、客探しに街をふらついていたサラを偶然見かけ声をかける。相当酔っていたベンは人目もはばからず「俺の部屋に1時間いてくれたら500ドル払う」と自分のモーテルにサラを誘い込んだ。

ところがベンは性的サービスよりも話し相手になってもらう事を望み、延長料金を払ってまでサラとの会話を一晩楽しんだ。しかし、高いお金を払って行為に及ぼうとしないベンの事をサラは不思議に思いベンから事実を聞くことになる。

「ラスベガスには酒で死ぬために来た」と話すベンに対しサラは最初「いったい何日かかるの?お酒で死ぬのに」とあざ笑っていたが、ベンとの関係を続けていくうちに互いに惹かれあい、「お酒を止めろと絶対に言わない」事をサラに約束させベンはサラとの同棲生活を始める。ベンはアル中、サラは娼婦という互いの立場を重々承知しながら暮らしていくはずの二人だったが、愛情が深まるにつれベンのサラへの嫉妬と、ベンの健康を案じはじめたサラの違約的な発言が元で少しずつ二人の関係が壊れ始めていく。

リービング・ラスベガスのレビュー・感想

複雑怪奇な展開など特にない単純なストーリー

エンターテイメントシティ、ラスベガスを舞台に撮影された映画ですが1995年の作品という事でオープニングで登場するストリップ(ラスベガス・ブルーバードというメイン通り)の上空からの風景は今よりだいぶ淋しい感があります。

僕は個人的にこのラスベガスが好きなので何度も繰り返し観ている映画ですが、ストーリー的にはアル中と娼婦のラブロマンスという事だけで特に複雑怪奇な展開などなく単純なストーリーです。

主演男優賞のニコラス・ケイジ さすがに上手い

ただこのベンというアル中を演じるニコラス・ケイジはアカデミー賞主演男優賞を獲得しただけの事はあり、凄くリアルな演技をしてくれます。特にアルコール依存の中毒症状や孤独感に苛まれるシーンの演じ方はさすがに上手いですね。

サラとレストランで食事をする場面があるのですがアル中なので食欲がなく、料理を口元まで持っていこうとしても躊躇して止めてしまいます。それでも酒だけを飲み食事に付き合うふりをするベンの様子からは、かなり病状が悪化している事がナチュラルに伝わってきます。

人生山あり谷ありで、時には誰でも自暴自棄になる事もあるでしょう。一時の感情から判断を誤る事もあるでしょう。しかし生きてさえいればその先には必ず未来が待っています。もっと自分を大切にすべきです。サラがベンとの約束を破り「お願い、お酒をやめてお医者さんに行って」と説得するあたりは男性として観ていて嬉しいし、二人が真っ当な形で暮らしていける事を願うけれど、ベンの健康が既に共なわない状況になってしまった事が非常に残念。

物語のシチュエーションをラスベガスに設定したのがGood!

また、ラスベガスへは個人的に何度か訪れていますが、家族で楽しめるエンターテイメント性を持っている反面、夜ともなればホテル売春を斡旋する輩たちのチラシがあちらこちらで撒かれているという現実を考えると、まさに二面性をもつ街。この映画がハッピーエンドで終わらないという内容であるせいか、このラスベガスという街をシチュエーションとして設定しているあたりは妙に調和がとれていて面白いです。

プロヴァンスの贈りもの

プロバンスの圧倒的な美しさとほのぼのとしたラッセル・クロウの恋心

2006年製作  アメリカ  118分

監督

リドリー・スコット

キャスト

ラッセル・クロウ マリオン・コティヤール フレディ・ハイモア アルバート・フィニー トム・ホランダー

撮影ロケーション・情景

イギリスロンドン 金融トレーダー フランス南部プロヴァンス ワイナリー

プロヴァンスの贈りもののあらすじ

ロンドンで敏腕金融トレーダーとして働くマックス・スキナー(ラッセル・クロウ)は「休暇はトレーダーの恥」を信条とし、仕事一筋の人生を送っていた。ある日仕事から帰ったマックスが郵便物に目を通していると、疎遠になっていたプロヴァンスのヘンリーおじさんの死を知らせる手紙が届いていた。差出人はヘンリーおじさんの財産を管理するオーゼという公証人からで、遺言を20年以上書き換えていなかったため唯一の肉親であるマックスに相続を委ねたいという内容であった。

ヘンリーおじさんはプロヴァンスに古い農家とぶどう畑を所有していたが、ロンドンでの生活を基盤とするビジネスマンのマックスにとって古い農家とぶどう畑の相続には興味のない話であった。しかし、お節介な秘書にフランス行きの根回しをされ仕方なくマックスはフランスへと向かう。

真っ先に公証人オーゼを訪ねたマックスはヘンリーおじさんが自分にブドウ農園を継承してもらいたいと希望していた事をオーゼから聞くが、「ワイン生産者になる気はない」と断った。オーゼはワインづくりはデユフロに任せて週末だけプロヴァンスで過ごしたらどうかと提案するがマックスは「一刻も早く売却したい」と拒んだ。デユフロとはマックスが幼少の頃からぶどう畑をヘンリーより任され、手塩にかけてぶどうを育ててきた人物である。

そんなデユフロはぶどう畑を売却しようとしているマックスに「俺の生き甲斐を奪うのか!」と説得するがお金にしか興味のないマックスは聞く耳をもたなかった。そしてマックスはロンドンへ帰るまでに農家とぶどう畑の物件の情報をとってくるようにと不動産業者から指示されていたため、家屋や庭園の写真を撮ろうと隅々を歩き回るが、此処彼処に幼少の頃の懐かしい思い出が蘇り、売却の決心が徐々に揺らいでいく。そしてマックスはある女性と巡り合い徐々に本来の人間らしさを取り戻していく。

プロヴァンスの贈りもののレビュー・感想

アメリカ制作の映画としてはあまり馴染みのないフランスプロバンスが舞台となっています。敏腕ビジネスマンの遺産相続という金銭欲的な話ではありますが、プロバンスの圧倒的な美しさと主人公の恋心が相まってか、ほのぼのとした気持ちで観れるいい映画です。

この映画の中にロンドンに暮らす主人公が幼少の頃過ごしたプロバンスを訪れ、あちこち歩き回っているうちに幼少の頃を思い出し、なつかしがる場面が多々出てくるのですが、あれ身にしみてよく分かりますね。

田舎暮らしが嫌で故郷を離れていくという人も多いと聞きますが、僕もたまに実家に帰り、娘と自転車で周ったりすると、「ここで○○していたよなぁ」なんて色々な事を思い出しますね。まるで昨日の出来事のように。

「田舎が嫌い」と離れて行ってしまっても懐かしい思いでは決して消える事はないんですね。そういった事をこの作品は思い出させてくれます。

それとラッツセルクロウが超かっこいいですね。「スポッツウッド・クラブ」の時のような青っぽさもないし、昨今のような「ぶよぶよ感」もない。この映画の撮影が2006年だから当時42歳。正に心身ともに成熟したいい面構えです。

ちなみに過去、知人の結婚式に行く機会があって、その日出掛ける前にこの映画をたまたま観ていたのですが、いざ出かけようとフォーマルに着替えると、ラッツセルクロウのかっこ良さが映り込んでしまったのか、意気揚々と出かけたことを思い出します。まあ欧米人(ラッセルはニュージーランド出身)の身長と顔の小ささで等身比率が違いますから似ても似つきませんが(笑)

天使のくれた時間

過去恋愛の回想をミステリアスに描いた“もしも世界”

2000年製作 アメリカ 125分

監督

ブレット・ラトナー

キャスト

ニコラス・ケイジ ティア・レオーニ ドン・チードル ジェレミー・ピヴェン ケイト・ウォルシュ

撮影ロケーション・情景

ニューヨークウォール街 会社社長 クリスマス フェラーリオーナー タワーマンション アメリカのデパート タイヤショップ 空港

天使のくれた時間のあらすじ

1987年 バークレー銀行の研修を受けるためにパンアメリカン航空ロンドン行き2便を搭乗ゲートで待つジャック(ニコラス・ケイジ)を見送りに来ていた彼の恋人ケイト(ティア・レオーニ)は「いやな予感がする ロンドンには行かないで」と彼のロンドン行を止める。しかし彼は「将来の二人の幸せのためだ」と彼女の言葉を振り切りロンドンに旅立ってしまう。

それから13年後、ジャックはニューヨークウォール街で大手金融会社の社長として成功し、マンハッタンのタワーマンションの最上階に住むなど、何不自由無い人生を歩んでいた。そんなジャックはクリスマスイブの夜、仕事帰りに立ち寄ったコンビニで宝くじの換金に難癖をつけ店員に銃を突きつける黒人青年キャッシュ(ドン・チードル)に遭遇する。ジャックは何とかその場を収め、キャッシュを外に連れ出し「まともな人生を歩め」とキャッシュを救おうと諭す。「ちゃんと働けば欲しいものが何でも手に入るぞ」というジャックの言葉にキャッシュは「なら、お前は何が必要なんだ」と切り替えし、「僕は何でも持っている」とジャックは言い放ち家路に向かう。

タワーマンションに帰ったジャックは眠りに就くが翌朝目が覚めるとそこには13年前に別れたはずのケイトと2人の子供の姿があった。そしてそれは自分の送っているゴージャスな生活とはかけ離れた何とも庶民的な世界だった。

天使のくれた時間のレビュー・感想

過去恋愛の回想

ネタバレになってしまいますが、ジャックが目を覚ました世界とは、もし自分がロンドン研修に行かず、あのままケイトと結婚していたらどんな生活を送っていたのかという一抹の懸念が「もしも世界」として夢となり描写されたもの。その点から言えば本来の社長として成功しているジャックの姿と、庶民的ではあるが家族に囲まれそこそこ幸せな人生を送る「もしもジャック」の生活感のギャップがリアルで凄く分かりやすいです。

誰でも一度は過去の恋愛を回想し、「あのまま続いていたら・・・」と「もしも世界」に想いを巡らせる人も多いでしょう。その先の答えは誰にもわからない、そんな答えの曖昧さにときめきを感じる部分もあれば、逆に未知の怖さを感じる部分もある。そこが人生のミステリアスなところなんでしょうね。

しかしどんな選択をしたとしても、「自分の選んだ今の人生を後悔しないよう最善を尽くす」これに尽きると思います。過去の恋愛の回想は悪い事ではないけれど、それを引きずる事は悪だと思います。何のメリットも生まれませんからね。

この映画は本当の幸福とは何か?家族とは何か?恋愛とは何か?をセオリーとしてではなく、あくまでも映画を観た人たち各々が自分で答えを見いだせるよう投げかけてくれます。

ティア・レオーニがキュート

そして、見どころのもう一つはケイト(ティア・レオーニ)が半端なくキュートでセクシーな事。はなから美人の女優さんですがメイクアップアーティストさんの仕事ぶりの凄さを感じます。若き時代を演じるケイト、家事育児に追われる母親としての顔を持つケイト、そして独身のやり手弁護士で上品なキャリヤウーマンを演じるケイト。これをリアルに醸しだしているあたりが上手ですね。

マディソン郡の橋

イーストウッド監督の感性と素晴らしい脚本が主人公の心の奥底をきめ細やかに描く

1995年製作 アメリカ 134分

監督

クリント・イーストウッド

キャスト

クリント・イーストウッド  メリル・ストリープ

撮影ロケーション・情景

1960年代アメリカアイオワ州マディソン郡  アイオワ州の片田舎

マディソン郡の橋のあらすじ

母フランチェスカ・ジョンソン(メリル・ストリープ)の死去に伴い、遺言信託の手続きをするために実家を訪れた長男のマイケル(ヴィクター・スレザック)と長女キャロリン(アニー・コーリー)はフランチェスカが「死後、遺体は火葬にし、遺灰をローズマン橋に撒いてほしい」と遺言を残している事を知る。そして遺品の中にあった母の日記とその母への想いを綴ったナショ・ジオ(ナショナルジオグラフィック)のカメラマン、ロバート(クリント・イーストウッド)の手紙をみつけ当時の二人の激しい恋を知る事に。

1965年、子牛の品評会に出かけた夫リチャードと子供たちは4日間家を留守にし、ジョンソン家はフランチェスカ一人に。そこへローズマン橋を撮影しに来たカメラマン、ロバートが道に迷い、ジョンソン家を通りがかった時に庭にいたフランチェスカに道を尋ねる。家事もひと段落し、暇を持て余していたフランチェスカは、口頭での道案内ではラチが開かないと判断し、ロバートの車の助手席に座り橋まで案内をする。

道中、フランチェスカに煙草をすすめたり、野の花をつんで手向けたりする優しいロバートの人柄にフランチェスカは好感を抱き夕食に招待する。そこでフランチェスカは、まじめではあるが何の変哲もない夫リチャードとは何か違うものを感じ始めていた。

マディソン郡の橋のレビュー・感想

監督クリント・イーストウッドの感性と視点

数十億ドルを使うような派手なセットはひとつもなく、製作費もわずか2,200万ドル、製作期間が42日間というタイトな状況下で作られた映画ではありますが、監督であるイーストウッドの感性と素晴らしい脚本が主人公の心の奥底をきめ細やかに描いています。

二人が過ごすことのできる最後の4日目の夜二人は結ばれますが、これまで過ごした二人の心の視点が鮮明に描かれているせいか、不思議と不貞さを感じません。

そして「一緒に町を出よう」というロバートの言葉にフランチェスカの心は葛藤しますが「今の気持ちは長続きしない」「夫を捨てたら夫はひとりでは生きてゆけない」「16歳の娘のこれからの人生に悪い影響を与えてしまう」という言葉で理性を保とうとします。

家族を捨てることができないと言い放ったフランチェスカに「これは生涯に一度の確かな愛だ」という言葉を残しロバートは去っていくのですが、終盤、夫リチャードと買い物に来たフランチェスカを、ロバートが雨に打たれながら立ち尽くすように見つめるシーンがあります。

それにはフランチェスカへの心のけじめをつけようとするロバートの切なさと、同様に揺れ動くフランチェスカのロバートへの想いがヒシヒシと伝わってきます。しかし、それが叶わぬ現実であるというフランチェスカの心の葛藤が、夫の運転する車のドアノブに手をかけ開けようとするも、躊躇してしまうというシーンに見事に表れています。

不倫に正当性を唱えるつもりはありませんが、たとえ不貞ではあっても誰かを真剣に愛したことのある人ならば、この4日間の時の流れの無常さに同情を感じる人もいるのではないでしょうか。