“自由”という定義を改めて考えさせられる実話映画
2007年製作 アメリカ 148分
監督
ショーン・ペン
キャスト
エミール・ハーシュ マーシャ・ゲイ・ハーデン ウィリアム・ハート ジェナ・マローン キャサリン・キーナー ヴィンス・ヴォーン クリステン・スチュワート ハル・ホルブルック ザック・ガリフィアナキス
撮影ロケーション・情景
アラスカ アトランタ、 アリゾナ メキシコ 荒野・砂漠 バックパッカー(ヒッチハイカー) サウスダコタ カヤック(川下り)コロラド川 ロサンゼルス ソルトン・シティ
イントゥ・ザ・ワイルドのあらすじ
ある晩ビリー・マッキャンドレス(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は息子クリストファー(エミール・ハーシュ)の夢にうなされ目を覚ます。ビリーは夫ウォルト(ウィリアム・ハート)に「クリスの声が聞こえた」と告げた。ビリーがクリスの夢にうなされたのはクリスが両親に反発し家出をしてしまっていたからである。
クリスはアトランタのエモリー大学を優秀な成績で卒業したもの、「文明に毒されるのが嫌」という独特の思想をもち、残った学費2万4500ドルを全額寄付し自由気ままな放浪の旅にでる。
クリスはオンボロのダットサンサニーに乗り、取り敢えず西へと向かった。途中クリスは車中で仮眠をとっているところを、大雨の影響による鉄砲水に突然見舞われ、あわや間一髪というところで難を逃れた。浸水した車は動かなくなり、クリスは「文明に毒されない」という信条通りそこに車を捨て、所持金もすべてライターで燃やしヒッチハイクをしながら一路アラスカを目指し旅を続ける。
アラスカのフェアバンクスについたクリスは雪積もる森の中に捨てられていた一台の古びたバスを見つけ、そこで「荒野暮らし」を始めるが、そこにはクリスにとって思いもよらぬ壮絶な結末が待っていた。
イントゥ・ザ・ワイルドのレビュー・感想
クリストファー・マッキャンドレスという人の壮絶な人生をショーン・ペンの独特の感性で映画化した実話です。
冒頭から随所に、クリスの妹であるカリーンの兄への想いがナレーションで綴られるのですが、そりゃあクリスにもいろんな主張や考えがあっての家出なんだろうけど、兄妹の立場としてのカリーンのナレーションにはクリス自身の主張や権利が美化され過ぎているのではと感じてしまいます。
昔、誰かが言っていました。「自由とは自分の両腕を思い存分振り回す事の出来る権利。ただし、その腕の中には誰も存在しない事」って。
自由になる事を夢みるのは別に悪い事ではないけれど、誰かに迷惑をかけるような自由なら、もはやそれは“自由”とは言えないと思う。その迷惑の矛先が親であるからなお悲しいです。
自分も散々親に心配をかけてきた方ですが、自分が親になればそれがよく解るはず。公衆電話で小銭が切れそうになった老人にクリスが小銭を恵んでやるシーンがありましたが、あんな風に他人には優しくできるのに、なぜか自分の親となると素直になれないんですよね。
終盤、父ウォルトがクリスを探しさ迷い歩いて、どうにもならない現実に泣き崩れる場面がありますが、あの姿に親心の全てが集約されているように思います。結局、彼自身も孤独には勝てないと悟り、改心した矢先の最期であるだけに、本人もさることながら、ご両親の無念さを察します。
バスにもたれかかり写真に納まるクリストファーの実際の写真が最後に登場しますが、これはとても衝撃的。
彼の尊厳を汚すつもりはないけれど、写真に向って言ってやりたい。「何が自由だ!お前は大バカ者だ!」と。「お前の亡骸を引き取りに来たカリーンの気持ちにもなってみろ!」とね。