フォードvsフェラーリ

“打倒フェラーリ”を誓いル・マン24を制する二人の男の物語

2019年製作  アメリカ  153分

監督

ジェームズ・マンゴールド

キャスト

マット・デイモン  クリスチャン・ベール  ジョン・バーンサル  カトリーナ・バルフ  トレイシー・レッツ  ジョシュ・ルーカス  レイ・マッキノン

撮影ロケーション・情景

自動車レース  レーサー  自動車整備工場  フォード フェラーリ  アメリカ企業

レース参加に否定的だったヘンリー・フォード二世にル・マン24時間レースの参戦を説得したリー・アイアコッカという人の仕事っぷり

YouTubeで解説しています

映画の予告編はこちらから 

フォードvsフェラーリのあらすじ

過去の功績を引きずるシェルビーと“気難しくて変わり者”のマイルズ

かつてレーシングドライバーとして活躍していたキャロル・シェルビー(マット・デイモン)は1959年のル・マン24時間レースで優勝し栄光を輝かせていたが持病である心臓病が悪化しレースドライバーの引退を余儀なくされ「シェルビー・アメリカン」という工房を営み理想のスポーツカー造りに精をだす日々を送っていた。

「シェルビー・アメリカン」はたくさんのセレブを顧客にもち、経営に携わるシェルビーもカーデザイナーとしても順風満帆な人生を送っていた。しかしそんなシェルビーは過去のレーサーとしての輝かしい日々が忘れられずにいた。

ある日シェルビーがとあるレースの観戦に出掛けるとそこにケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)がレース参戦にきていた。

マイルズはかつてイギリスでレーサーとして活躍していたが第二次世界大戦の終結と共に家族を従えアメリカに移住し自動車整備工場を営みながら時折好きなレースに参戦していた。レーサーであるマイルズの整備技術は一般人からするとコアな仕上がりとなることが多くマイルズ自身が変わり者という性格も相まって工場経営は決して順調とは言えなかった。しかし車に対する愛情とこだわりは人一倍あり、息子や妻からは敬服され幸せな家庭を築いている男であった。

レース観戦をしにきたシェルビーのところにブルモス・ポルシェの責任者Dヴォスがやってきてポルシェのレースドライバーを探している事を告げる。シェルビーは61年のUSOC王者でパイクスピークでも優勝を遂げたマイルズを推薦した。しかし周りの取り巻きらはマイルズは気難しいから関わらない方がいいとDヴォスに忠告する。シェルビーは「そんなことはない」とマイルズをかばうが隣でレース主催者と問答している男がいた。マイルズである。マイルズは主催者側からトランクが閉まらない事を指摘されレース出場の失格を告げられ主催者側とトラぶっている所だった。シェルビーが間に入り和解させようとするが短気なマイルズは興奮し、トランクを無理やり叩いて閉めようとしレースの出場権を得ようとした。

そんなマイルズの様子を見ていたシェルビーは彼に「ブルモス・ポルシェが君を欲しがっていたが扱いづらいと言っていた」と忠告する。マイルズはそんな事関係ないと言わんばかりの態度でシェルビーの忠告を無視した。シェルビーはマイルズに「プロは皆車を持ってる。スポンサーなしでは車は手に入らない」とマイルズに丸くなるよう挑発するが、マイルズは聞く耳を持たず、それどころか怒ってシェルビーにスパナを投げつけた。

ほどなくしてレースがスタート。コブラのハンドルを握るマイルズは持ち前の度胸と巧みな運転技術で先頭を走っていたガーニーのコルベットを抜き土壇場の大逆転で優勝を果たす。レースを静観していたシェルビーは改めてマイルズの凄さを目の当たりにし、彼に敬意を抱くシェルビーは投げつけられたスパナを持ち帰りオフィスに飾った。

レース再戦に情熱を燃やすマイルズであったが・・・

しかしその一方、マイルズの留守中、工場に2人の男がやってきた。国税庁である。マイルズは税金を滞納していて整備工場を差し押さえられてしまう。妻モリーに今後の行く末を問われたマイルズはレースを諦め堅実に働くことを約束する。

レース参加に否定的なフォードにル・マン24時間レースの参戦を説得したリー・アイアコッカ

1962年アメリカの巨大自動車メーカーフォード・モーターの販売促進チームはこれからの自動車需要の拡散と若者におけるトレンドを視野に入れ、魅力的で速い自動車を製造するために自動車レースの参戦を提言した。しかし会長であるヘンリー・フォード二世及び経営陣たちはレースへの参戦には否定的だった。参戦を提言した販売促進チームの過去3年間の販売不振が尾を引いており、彼らが提唱する内容に信憑性が感じられなかったからである。しかし販売促進チームを率いるリー(ジョン・バーンサル)は伝統的レース「ル・マン24時間」で過去4回もの優勝を成し遂げたイタリアの自動車メーカーフェラーリを引合いにだし「彼らに学ぶべきだ」と言って経営陣に食い下がった。

そしてフォードの経営陣たちを説得したリーは早速フェラーリ本社へ赴く。この頃のフェラーリは自動車づくりの歴史に燦然と輝く一方、経営的には破産寸前だった。フェラーリの工場を隅々まで視察したリーは思い切った行動に出る。何とエンツォフェラーリに買収を直訴したのだ。エンツォはリーに「少し考える時間を」と結論を避けた。

フォードを酷評したエンツォ・フェラーリ

数日M&Aの内容を検討していたエンツォだったがレース部門の支配権をフェラーリ側に与えるとしながらも「フォードがレース部門を退く意向を示した時にはそれに従う」というフォード側の条件に対し、レース至上主義であるエンツォは技術者としての誇り、イタリア人としての誇りを傷付けられたと憤慨し土壇場になってリーの話をはね付けたばかりか、フォード社、そして会長ヘンリー・フォード二世の人格までも酷評した。

リーがアメリカに戻ると「フィアット社フェラーリを買収」という新聞の見出しが世間を賑わせた。実はエンツォははなからフォードとの合併は本気ではなく、裏でフィアットに高値で買わせるためにフォードをダシに使ったのである。

買収に失敗したリーたちをヘンリー二世が呼び出し、エンツォがどんなことを言っていたのか詳細に報告させた。リーはエンツォが酷評したとおりの言葉でそのままヘンリー二世に伝えるとヘンリー二世は憤慨し「最高のエンジニアを集めろ」とリーたちに指示した。ヘンリー二世が“打倒フェラーリ”を決意した瞬間である。同時にヘンリー二世は最高のドライバーも集めるようリーに加えた。レースで勝利するためには優秀なドライバーが必要になる事を熟知していたリーにとっては目論み通りであった。

“打倒フェラーリ”のために欠かせない存在となるマイルズ

更にリーはレースで勝利するためには優秀な監督が必要という事も心得ていたため以前から仕事上関わりを持っていたシェルビーに「唯一、ル・マンで優勝を果たした米国人」として白羽の矢をたてた。シェルビーはこれを快諾した。早速シェルビーはマシン開発に欠かせないテストドライバーとしてマイルズに声をかけた。

マイルズは「フェラーリを負かす?冗談はやめてくれ」と冷ややかだったがそれでもシェルビーはマイルズに拘り「次の日曜日、マスタングの発表会でレース計画の発表があるから来い」とマイルズを誘った。

発表会の当日。マイルズは息子ピーターを連れ会場を訪れた。フォードの目玉として展示されたマスタングを見るなりマイルズは「秘書が乗る車だ」と揶揄した。息子ピーターがマスタングを触り中を覗いていると副社長のレオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)が「触らないでほしい」とピーターに注意した。そしてマイルズが父親だと分かると「塗装が汚れるので触らせないでほしい」と口うるさく念を押された。注意した相手がフォードの副社長だと分るとマイルズはお返しとばかりに「ムスタングの外見は素晴らしいが中身がなってない」とレオに忠告する。さらにマイルズは「直列6気筒エンジンと3速ギアは廃止すべし」「ホイールベースの短縮で軽量化するべし」などと散々酷評したあげく「そうなっても自分はシボレーを選ぶよ」とレオをこき下ろした。

発表会ではレース計画に際しシェルビーのスピーチが予定されていた。シェルビーは世界一速い車づくりへの情熱、そしてル・マン24時間レースでの優勝の可能性について熱弁するも、自動車レースに見切りをつけていたマイルズはスピーチの途中帰ってしまった。

それでもマイルズを諦めきれないシェルビーはマイルズの自宅にまで押しかけ「30分だけ付き合ってくれ」とマイルズに懇請し、イギリスから空輸されてきたばかりのフォード・GT40の試乗につき合わせた。GT40のハンドルを握ったマイルズは試乗後シェルビーから感想を問われると、ギア比の高さ、ステアリングの甘さなどいくつもの解決すべき問題点をシェルビーに進言するがGT40の圧倒的な速さに魅せられ満更でもない様子だった。

翌日マイルズは昨晩シェルビーと一緒だったことを妻モリーに問われた。またレースにのめり込むのではと危惧するモリーに対しマイルズが真相をはぐらかそうとすると突然モリーは「嘘は許せない。あなたの本音が知りたい」と怒りだした。マイルズはその言葉が心に刺さりシェルビーを通じてきていたフォードからのオファーについて話しはじめた。マイルズはモリーにオファーの内容を説明し、それでも「まだ迷っている」と告げると、モリーは「馬鹿じゃないの?」と言ってマイルズの背中を押した。

モリーの後押しもあり、気持ちが吹っ切れたマイルズはシェルビーと手を組みレース界に舞い戻る決心をする。

マイルズを快く思わないフォードの経営陣

しかしそれもつかの間、フォードの経営陣たちはル・マンのレーシングドライバーとしてマイルズを快く思っていなかった。特に副社長のレオはことのほかマイルズを嫌っており「マイルズではフォードの信頼が崩れる」といってマイルズをレーサーとして受け入れようとしなかった。そんなレオに対してシェルビーは「マシンを最も理解する男」といってレオを諭すがレオは聞く耳を持たなかった。

ル・マンでのドライバーとしての参戦ができない事を告げられたマイルズはアメリカの工場に留まり、妻モリーと共にラジオでレース中継を聴くことになる。

結局GT40はル・マンで善戦するもマイルズが指摘していたギアボックスの弱さが的中しフォードは出場全車がリタイヤするという惨敗を喫してしまった。フォード本社を訪ねレース結果をヘンリーに報告しに来たシェルビーはレースの惨敗振りに怒り心頭のヘンリー二世から開口一番「赤っ恥をかかされてもお前らがクビを切られない理由があったら言ってみろ」と叱責される。それに対しシェルビーは現場から会長への意思伝達が何人もの役職者を介す事で複雑になり、それによってよからぬ横槍が入りよい結果をも阻害するというフォードの委員会組織を批判しヘンリー二世に直訴した。

ヘンリー二世はシェルビーの意見を聞き入れ、以降、レースのプロジェクトチームはヘンリー二世の直轄下に置き、指揮系統を明確にすることで彼に再度レースを任せた。ヘンリー二世が後ろ盾となったシェルビーは意気揚々となって再びマイルズを訪ねた。

フォードvsフェラーリのレビュー・感想

36歳の若さでアメリカ巨大企業フォードの副社長に上り詰めたリー・アイアコッカの訴求力が凄い

主人公であるキャロル・シェルビーとケン・マイルズの関係が素晴らしく、もちろん感銘を受けたけれど、一方で先見の明をもち自動車の販売戦略に異論を呈したリー・アイアコッカも凄くいい仕事をしていて陰ながら光っていたなぁというのが僕の率直な感想です。

どんなに上手い言葉で経営陣を説得しようとしても過去の実績の不甲斐さを指摘されればとたんにショボ~ンとなってしまうのが常だけれど、フォードの経営陣にレース参戦を提言し納得させたリー・アイアコッカの言葉には重みがあり凄い説得力がありましたね。さすが36歳という若さでアメリカの巨大企業フォードの副社長に上り詰めただけの事はあります。

脚本もビジネス戦士を漂わせた素晴らしい出来栄えで単にレースの勝ち負けで終わらない凄く重みのある映画に仕上がっているという感じです。ただ、もう少し企業間(フォードとフェラーリ)の戦略の描写というか細かなエピソードみたいなものをもう少し加味してもらうと嬉しかったですね。

自動車ってただ速く走ればいいってものではない事くらいは薄々わかってはいるけれど、いい車を決定づける要素って思った以上に沢山あるんだなという事を凄く痛感させられました。エンツォフェラーリの車作りに対する情熱とマインドがまた凄い。さすがフェラーリ。

自動車って所詮は工業製品。車の質を徹底的に追及すればフェラーリみたいな企業は量産は難しいだろうし、大量生産を誇るフォードがフェラーリの真髄にどのあたりまで迫ろうとしていたのか、ル・マンを制した唯一のアメリカ車という冠がその後どのような影響をもたらしたのかという素朴な疑問が少々残りましたが、とにかくシェルビーとマイルズの友情が素晴らしく、そしてたくましく育つ息子ピーターの姿に感動です。

カジノ

70年代ラスベガスのカジノの裏事情を克明に描いた映画

1995年製作  アメリカ  178分

監督

マーティン・スコセッシ

キャスト

ロバート・デ・ニーロ  シャロン・ストーン  ジョー・ペシ  ジェームズ・ウッズ  ドン・リックルズ  アラン・キング  ケヴィン・ポラック  フランク・ヴィンセント

撮影ロケーション・情景

70年代ラスベガス カジノ マフィア

カジノのあらすじ

“タンジール”の実質的なボスとなるギャンブルの神様

1970年代ラスベガス。当時ラスベガスを裏で支配していたのはトラック運転手年金協会を牛耳っていたマフィアの首領、リモ・ガッジである。彼は年金局長アンディ・ストーン(アラン・キング)と組み、巨大カジノ「タンジール」を建設しようとしていた。そこでカジノの経営責任者に白羽の矢を立てたのがカジノを知り尽くし“ギャンブルの神様”と称されたサム・ロススティーン、通称“エース”( ロバート・デ・ニーロ)である。

ある日、年金局長のストーンがエースに会い、その件を打診するがエースは過去に何度も賭博で検挙された経験があり、賭博免許など取れるはずがないと乗り気ではなかった。

しかしストーンは申請手続きをするだけで営業できるようにするといい、エースの経営方針には誰も口を出させない事も約束した。そうしてエースはタンジールの実質的なボスとして就任する。

運営責任者としてのエースの監視の目は鋭かった。カジノに出入りするイカサマ師を絶対に見逃さず徹底的に痛めつけカジノの大きな損失を防いだ。

その後もエースは絶大な手腕を発揮しタンジールの売り上げを飛躍的に伸ばしていく。

 

カジノのレビュー・感想

個人的な話になりますが、1996年、海外出張で初めてラスベガスへ行った時に感じた、魅惑的で煌びやかな、あの余韻に浸りたくて、このDVDを購入しました。この映画、実話という設定なんですが、映画に描かれるシチエーションが70年代という事で、今のラスベガスとは雰囲気が大分違う印象でしたが、当時のカジノの裏事情がよく解り、面白かったです。

そして綺麗なコーラスで奏でられるオープニングは、ラスベガスの派手派手しい表の顔とは裏腹に、暗黒街的な、別な顔のラスベガスを象徴しているかのようで、かなりシュールな気持ちになります。

エースのように完璧に仕事をこなせば、そりゃボスからの信頼も厚いだろうし、その点は見習うべきところが凄くあるなぁって感じます。エースの用心棒として派遣されたのがニッキー役のジョー・ペシですが、これは演技なのか?と思わせるくらい凶暴で、役によくハマっていますね。仕事をする男なら、ある程度自分の存在を誇示しなくちゃいけないのだろうけど、ニッキーのように“出過ぎた杭”になっちゃうと、最後はやっぱり消されちゃうんですね。普通の会社でも殺されはしませんが、突然“梯子を外される”なんていうのがありますからね。

長編にもかかわらず少しも飽きさせない展開の上手さ

総合的な感想としては、約3時間という長編にもかかわらず、少しも飽きさせない展開の上手さというか、とても面白い映画です。ただ終盤、ニッキーが弟のドミニクと一緒にトウモロコシ畑でリンチされ、殺害されるシーンがありますが、これは残酷すぎて、観ていて吐き気がするほど後味が悪いです。まあ、そこが巨匠マーティン・スコセッシの“味付け”なんでしょうが。

念のため言っておきますが、煌びやかな現代のラスベガスの情景や想い出に浸りたいと思う人が観る映画ではないですよ。

イントゥ・ザ・ワイルド

“自由”という定義を改めて考えさせられる実話映画

2007年製作  アメリカ  148分

監督

ショーン・ペン

キャスト

エミール・ハーシュ  マーシャ・ゲイ・ハーデン  ウィリアム・ハート  ジェナ・マローン  キャサリン・キーナー  ヴィンス・ヴォーン  クリステン・スチュワート  ハル・ホルブルック  ザック・ガリフィアナキス

撮影ロケーション・情景

アラスカ アトランタ、 アリゾナ メキシコ 荒野・砂漠  バックパッカー(ヒッチハイカー)  サウスダコタ カヤック(川下り)コロラド川  ロサンゼルス ソルトン・シティ

イントゥ・ザ・ワイルドのあらすじ

ある晩ビリー・マッキャンドレス(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は息子クリストファー(エミール・ハーシュ)の夢にうなされ目を覚ます。ビリーは夫ウォルト(ウィリアム・ハート)に「クリスの声が聞こえた」と告げた。ビリーがクリスの夢にうなされたのはクリスが両親に反発し、家出をしてしまっていたからである。

クリスはアトランタのエモリー大学を優秀な成績で卒業したもの、「文明に毒されるのが嫌」という独特の思想をもち、残った学費2万4500ドルを全額寄付し自由気ままな放浪の旅にでる。

「文明に毒されない」という信条をもち一路アラスカへ

クリスはオンボロのダットサン・サニーに乗り、取り敢えず西へと向かった。途中クリスは車中で仮眠をとっているところを、大雨の影響による鉄砲水に突然見舞われ、あわや間一髪というところで難を逃れた。浸水した車は動かなくなり、クリスは「文明に毒されない」という信条通り、そこに車を捨て、所持金もすべてライターで燃やしヒッチハイクをしながら一路アラスカを目指し旅を続ける。

アラスカのフェアバンクスについたクリスは雪積もる森の中に捨てられていた一台の古びたバスを見つけ、そこで「荒野暮らし」を始めるが、そこにはクリスにとって思いもよらぬ壮絶な結末が待っていた。

イントゥ・ザ・ワイルドのレビュー・感想

ショーン・ペンが独特の感性で映画化した実話

クリストファー・マッキャンドレスという人の壮絶な人生をショーン・ペンの独特の感性で映画化した実話です。

冒頭から随所に、クリスの妹であるカリーンの兄への想いがナレーションで綴られています。クリスにしてみれば、いろんな考えがあっての家出なのでしょうが、兄妹の立場としてのカリーンのナレーションにはクリス自身の主張や権利が美化され過ぎているのではと感じてしまいます。

昔、誰かが言っていたのを思い出しました。「自由とは自分の両腕を思い存分振り回す事の出来る権利。ただし、その腕の中には誰も存在しない事」っていうのを・・。

自由になる事を夢みるのは悪い事ではないけれど、誰かに迷惑をかけるような自由なら、もはやそれは“自由”とは言えないと思う。その迷惑の矛先が親であるからなお悲しい。

自分も散々親には心配をかけてきましたが、自分が親になればそれがどういうことなのかよく解るはず。公衆電話で小銭が切れそうになった老人に、クリスが小銭を恵んでやるシーンがありますが、あんな風に他人には優しくできるのに、なぜか自分の親となると素直になれない。

終盤、父ウォルトがさ迷いながらクリスを探すのですが、どうにもならない現実に泣き崩れる場面があります。あの姿に親心の全てが集約されているように思います。結局は、クリス自身も孤独には勝てないと悟り、改心した矢先の最期であるだけに、本人もさることながら、ご両親の無念さは察するに余りある。

エンド・ロールが始まった直後にバスにもたれかかり写真に納まるクリストファーの実写が登場しますが、これはとても衝撃的。

彼の尊厳を汚すつもりはないけれど、写真に向って言ってやりたい。「何が自由だ!お前は大バカ者だ!」「お前の亡骸を引き取りに来たカリーンの気持ちを考えてみろ!」とね。

カンパニー・メン

失業の怖さ。“隣の芝生”が青く見えはじめた人に観てもらいたい映画

2011年製作  アメリカ  113分

監督

ジョン・ウェルズ

キャスト

ベン・アフレック  ケビン・コスナー  クリス・クーパー  トミー・リー・ジョーンズ  ローズマリー・デウィット  マリア・ベロ

撮影ロケーション・情景

ボストン インテグレイション企業  リストラ アメリカ郊外  ポルシェ 就活・起業

カンパニー・メンのあらすじ

GTX社解雇

ボストンに暮らすボビー・ウォーカー (ベン・アフレック)は年商120億ドル規模のインテグレイション企業GTXで販売部長として働いていた。ボビーは37歳という若さであるが年収は12万ドル。郊外には噴水付きの真っ白な豪邸を構え、愛車ポルシェで会社に通うというような華々しいし生活を送っていた。しかし2008年に起きたリーマン・ショックの影響でGTX社内の造船部門の業績が悪化し、大規模なリストラが敢行されボビーは解雇を言い渡されてしまう。

“リストラ空気”は瞬く間に社内に広がり、わが身を案じて戦々恐々とする雰囲気に社内は包まれていた。その中のひとりにフィル・ウッドワード (クリス・クーパー)がいた。フィルにはまだ学費のかかる子供が2人おり年齢的にも潰しのきく状況ではなかった。フィルは副社長であるジーン・マクラリー (トミー・リー・ジョーンズ)に「30年も勤めてクビニなるならここで銃を乱射してやる」と凄んだがボビーが解雇された事をジーンは知らされておらず、リストラは社長ジェームズ・サリンジャー -(クレイグ・T・ネルソン)の独断で行われたものだった。

翌日ジーンは社長ジェームズに「なぜ私に黙ってリストラを行ったんだ」と詰め寄った。ジェームズは「社員より株主に対して責任がある」と更なるリストラ敢行を示唆した。失業中のボビーは再就職支援センターに通い、職を探す日々を送っていたがボビーはすぐに再就職できるものと高を括っていて支援センターでのレクチャーにも本腰を入れなかった。

ある日そんなボビーの元をジーンが訪ねる。ボビーは今までもジーンに目を掛けられ可愛がられていた。ボビーのリストラを阻止できなかったジーンは済まなそうな顔をし「私は反対(解雇に)したがどうにもならなかった」と言い、代わりにロックヒード社とレイシオン社の面接のコネを作ってやった。しかしボビーはそんなジーンの気遣いを蹴りその場を立ち去った。

ウォーカー家の財政難

家に帰ると妻マギー(ローズマリー・デウィット)が家計のやり繰りに頭を悩ませていた。ボビーの収入が途絶えてしまった今、住宅ローン、矯正歯科医への支払い、夏に予定している旅行代金、ポルシェのローンなど、家計は苦しかった。マギーは再び病院で看護師のパートの仕事を始める覚悟でいたが、ボビーは現実を直視しようとせず、妻の職場復帰には賛成しなかった。

それから数日後ボビーは3M社という企業の面接を受ける。しかし前職と同じ販売部長の役職ではGTX社で貰っていた年収の半分くらいになってしまうため、ボビーはマーケティング部門長を希望した。しかしマーケティング部門長のポストは適任者の応募が多くそこに就く事は難しいと担当者が難色を示されると、ボビーは「僕こそ適任者だ!」と尻を捲りその場から立ち去ってしまう。またもや再就職支援センターに通う事になるボビーであったがボビーの希望に合致する仕事は中々見つからない。

ある日ボビーは妻マギーの兄ジャック(ケビン・コスナー)邸のパーティーに招待された。ジャックは建築業を営み職人を数名使っていた。ジャックがボビーに「仕事は順調か?」と聞くとボビーは「順調だよ」と答え見栄を張った。しかしジャックはGTX社の業績不振にまつわる記事を新聞で読んでいてボビーの失業は薄々察していた。ウォーカー家の身を案じたジャックは「困ったら俺が雇ってやる」と助け舟を出すも、過去の栄光を忘れられないボビーは「釘を打つ自分は想像できない」と折角の好意を無下にした。

社長ジェームズと副社長ジーンとの確執

社長ジェームズと副社長ジーンを柱とするGTX社経営陣たちは会社の立て直しに必死だった。ジーンはジェームズに建設中の新社屋と医療部門の売却を勧めるがジェームズは聞く耳を持たず再びリストラを敢行する方針を示し、次なる解雇者のリストを作るよう人事担当者に指示した。ジェームズの独裁的な采配に我慢ならなくなったジーンは「リストラは間違っている」とジェームズに警告するもジェームズは考えを変えようとしなかった。そんな中次なるリストラの候補として挙がったのが部長のフィル・ウッドワード (クリス・クーパー)であった。

フィルにはまだ学費のかかる子供が2人いて、年齢的にも潰しのきく状況ではなかった。ボビーの解雇を発端に社内に“リストラ空気”が広がり始めた時から、フィルはわが身を案じ戦々恐々とする日々を送り、ジーンに「30年も勤めてクビニなるならここで銃を乱射してやる」と凄んだ男である。

フィルとジーンの解雇

ボビーが職探しを始めて3カ月が過ぎた時の事である。ボビーはある人物からの推薦で、とあるベンチャー企業の面接をうけた。年収9万ドル+賞与という好条件で北東部の販売部長としてのポストを掴みかけたが、結局他の応募者にその座を奪われ、数日後内定取り消しの連絡がもらった。がっくり肩を落とすボビー。彼は遂に愛車ポルシェを売却した。

そんな中第2弾となるリストラ計画は着々と進められ遂にフィルも解雇された。ジーンはフィルの解雇を通告した人事部のサリー(マリア・ベロ)を呼び出し解雇を取り消すようサリー詰め寄った。サリーはジーンの愛人である。ジーンはフィルがリストラの候補として挙がった時からサリーに根回しをしていたがサリーは私情を挟まずフィルの解雇を敢行した。そしてサリーは社長ジェームズから預かった1枚の書類をジーンに見せた。それはジーン自身への解雇通告書であった。ジェームズにとって反目したジーンはもはや目の上のたんこぶに過ぎなかったのである。

数日後ボビーが通う再就職支援センターへGTX社を解雇された者たちが次々とやってきた。もちろんその中にはフィルもいた。フィルもボビー同様インストラクターから再就職のためのレクチャーを受けるが、高飛車に接するインストラクターに堪えきれなかった。

義兄ジャックの支え

一方ボビーは、住宅ローンの支払いにも事を欠く状況になっていた。ボビーはどんなことがあっても家を手放す事だけはしたくないと思っていたが背に腹は代えられず家を売却しボビーの実家に移り住むことになる。更に「釘を打つ自分は想像できない」と一度は断った大工仕事を義兄ジャックを再び訪ね雇ってほしいと頼み込んだ。本当に来たかというような顔をしながらもジャックはボビーを受け入れた。右も左もわからない畑違いの仕事にボビーは戸惑いながらもひたむきに取り組もうとするが、義弟とはいえジャックはボビーに厳しかった。ここからボビーの過酷な肉体労働の日々が始まる。

ボビーは少しずつ大工仕事に慣れ働きぶりも様になってきたある日、ジャックから初給料を貰った。封筒の中身を見ると少し余分に入っていた。ボビーがジャックに「200ドル多い」というとジャックは「計算ミスかな?」ととぼけた。彼の優しさである。

一方役員を解任され解雇になったジーンはこの先の身の振り方について息子に相談したりもしたが息子は「コンサルタント会社を起業してアドバイスでも売ったら」とおちゃらかした。笑い飛ばすジーンであったが実際は妻が家の売却を考えるほど深刻であった。

ジーンは自分のこともさることながらフィルの事も気遣っていた。心配したジーンはフィルを慰めようと彼に会いに行くがフィルは相当参っており、就職支援センターへも行かず昼間から外で酒に溺れる日々を送っていた。解雇が近所にバレぬよう妻から6時まで家に帰るなと言われていたからである。

ある日ボビーの元にシカゴのヘッドハンターからオファーが舞い込む。輸送業務の販売部長のポストである。ボストンからシカゴへは850マイルも離れているが今の生活から1日も早く抜け出したかったボビーは二つ返事で承諾した。意気揚々と面接を受けにシカゴに飛んだボビーであったがアポの日にちを1週間間違えていた。遠方のため出直せないので待たせて欲しいと告げるがダラスに出張中なので来週まで帰らないといわれた。肩すかしを喰らったボビーはシカゴの街で途方に暮れた。

フィルの自殺

フィルはある人物のツテである企業の海外担当の重役ポストに就こうと根回しをしていた。しかし海外出張の多いポストのため30歳以下の若者でないと難しいと断られ、「君を推薦したら会社で笑いものになる」とまで言われた。フィルは自分の不甲斐なさに失望した。

収入を閉ざされたままのフィルは娘の授業料や住宅ローンの支払いに迫られ自暴自棄に陥っていた。どうにでもなれとばかりに飲酒運転をし古巣のGTX社に汚い言葉を吐きながら石を投げつけるなどの悪態も着いた。そしてフィルは自宅のガレージで排ガス自殺をし命を絶った。

ボビーとジーンの新たな人生の始まり

ある日ジーンはGTX社に出向き社長ジェームズに声をかける。「元気にしてたか」と偽善者ぶるジェームズにジーンは「フィルの葬儀で会えると思った」とあげつらい、共に働いた仲間のクビを簡単に切る薄情さを訴えた。ジェームズが「慈善事業じゃない。仕方ない」というと、ジーンは「会社が傾きかけているのに未だ年収2200万ドルを得て保身に走るのはおかしい」と傲慢さを抗議したがジェームズは考えを変えなかった。ジーンはボビーを誘い海運事業の起業を決心する。フィルの死を無駄にしたくなかったからである。ジーンに誘われたボビーはこのままジャックの仕事を手伝おうか、ジーンについていくべきかジャックに相談した。ジーンからのオファーは報酬8万ドルでGTX社時代の半分である。ジャックはボビーに「その仕事に就け。君は大工に向かない」とボビーの背中を押した。そしてボビーとジーンの新たな人生が始まった。

カンパニー・メンのレビュー・感想

“隣の芝生”が青く見えはじめた人に観てもらいたい映画

人は誰でも仕事に慣れるとその仕事に就いた喜びや有難さを忘れてしまうもの。そしていつしかそれがおごりとなってプライドが先行し自分を過大評価してしまう。しかし自分を評価するのはあくまでも他人。自分が思う「自分」と他人が思う「自分」は必ずしも合致しないという事をこの映画は教えてくれます。

もし今の職場で“隣の芝生”が青く見えはじめ、安易な理由で転職を考えている人がいるとしたなら、そういう人にぜひ見てもらいたい作品です。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

詐欺師から偽造摘発の権威に成り上がった男の実話を描いたスピルバーグの傑作

2002年製作  アメリカ  141分

監督

スティーヴン・スピルバーグ

キャスト

レオナルド・ディカプリオ トム・ハンクス クリストファー・ウォーケン エイミー・アダムス エリザベス・バンクス

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク アメリカの銀行 キャデラック パンアメリカン航空 両親離婚 小切手偽造 マイアミ アメリカの空港 FBI アストンマーチン フランス 脱走

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのあらすじ

1963年.フランク・W・アバグネイル, J(レオナルド・ディカプリオ)は父フランクとフランス人母ポーラと共にニューヨーク州郊外で暮らしていた。父フランクは文具店を営んでおりニュー・ロッシェルロータリークラブの永久会員でもあったが事業そのものはあまり上手くいっておらず資金繰りに苦慮していた。

ある日父フランクは息子のフランクジュニアを連れ紳士服店を訪れる。フランクジュニアに背広を着せ運転手をさせチェース・マンハッタン銀行に行くためである。これは運転手付のキャデラックで銀行を訪れ権威を誇示し、銀行からの融資を有利にするための作戦であった。しかし国税局とトラブルを起こしていた父フランクは銀行からの融資を断られてしまった。これにより経済的窮地に追い込まれ仕方なくキャデラックを売却する事にした。ディーラーで車を引き渡す際、ジュニアが「どうして車を持っていかれなきゃならないの?」と聞くと、父フランクは「持っていかれたんじゃない、売ったんだ。うまくやったよ。500ドルも得したぞ」と虚勢を張った。しかし

挙げ句の果てに一家は家屋敷を売り払い小さなアパートへ移らざるを得なくなった。情けなさに涙を流す妻ポーラに「少し狭いけれどいいアパートだ。お前の家事が減るよ」といって誑かした。このように父フランクは日頃から何かにつけ虚勢を張り人をたらし込む癖のある人物であった。

小切手との出会い

16歳の誕生日を迎えたある日ジュニアが自宅でパンケーキを焼いていると父フランクが帰ってきた。父が「何してる?」と聞くと「誕生日の夕食を作っている」とジュニアは答えた。「息子の誕生日にパンケーキじゃ祝えないだろう」とジョークをいいながら父フランクはプレゼントにジュニア名義の50枚綴りの小切手を渡した。自分の名前が書いてある小切手を嬉しそうに見つめながらジュニアは前途洋々の気分に浸っていた。この小切手との出会いが後に自身が引き起こす壮大な小切手詐欺事件の礎となる。

最初の詐取行為

住居を移転したことで学校も変わり、新たな学校でのある初登校の日、前学校の制服に愛着を持っていたジュニアはその制服を着てフランス語の授業に出席するが、場違いな格好をブラッドたち不良生徒らに冷やかされた。憤慨したジュニアは突如黒板の前に立ち自分の名前を大きく誇示し、「静かにしなさい。席に座りなさい」と制圧しその場を仕切った。なんとジュニアはその授業の代理教師に成りすまし自分をからかったブラッドを授業で吊し上げたのだ。途中で遥々やってきた本当の代理教師が現れるが、ジュニアは用無しと言わんばかりにその教師をあしらった。交通費をかけ、臨時教師をして報酬を稼ごうとした者に無駄足を踏ませたジュニアの最初の詐取行為である。

小切手の偽造

ある日ジュニアが家に帰ると家にはカズナーという弁護士が来ていた。父母の離婚を協議するためである。両親の離婚話に困惑し状況を把握しきれないジュニアにカズナー弁護士は父母のどちらに養育権をもたせたいかジュニアに署名を迫った。深い悲しみでそこにいたたまれなくなったジュニアは家を飛び出しニューロシェル駅からマンハッタンにあるグランド・セントラル駅まで向かおうとする。その際切符の購入は父から貰った小切手だった。ジュニアは残高のない自身の小切手を使いホテルを転々とするがその小切手はすぐに不渡りをだしホテルから追い出されてしまう。

この先どうしようとかと考えていたジュニアは小切手の偽造を思いつく。タイプで打った文字を切り貼りして名義を偽り最初の現金を手にする。この手口で様々な銀行を訪れるが「取引のない銀行の小切手は換金できない」と行員に断られる。それでも話をはぐらかせ、嘘八百の理由を並べ何とか現金をだまし取ろうとするが、そこに行員の上司が目の前に立塞がり換金は失敗に終わった。

パンナムパイロットの詐称

小切手の換金を拒否され続けるジュニアだったがある日街を歩いていると数人のCAを従えタクシーから降りるパンナムのパイロットを見かけた。ジュニアはその華やかでナイスガイな様子に一瞬で惹かれパンナムのパイロットになる事を決心し、父フランクにも手紙でその旨を記し、自分の健在ぶりを偽った。しかしそう簡単にパイロットに成れるはずもなく、ジュニアはこの時も詐取行為を犯すことになる。ジュニアは学校新聞の学生記者を装ってパンナム本社へ取材に訪れた。ジュニアはパイロットを取材し飛行ルート、勤務日程のスケジュール、社員証、連邦航空局発行のIDカードについてなど、徹底的に取材を行った。

その甲斐がありジュニアはパイロットから期限切れのIDカードを貰う。そしてジュニアはパンナムの制服購買部に電話をかけホテルに制服をなくされ次のフライトに支障をきたしているという嘘の電話をしパンナムの制服を手に入れる。ここでもジュニアは偽の小切手で決済しようとするが給与天引きになっているので必要ないと言われるとジュニアはほっとした様子でニンマリと笑みを浮かべた。以降、制服を身にまといパンナムのパイロットに成りすましたジュニアは意気揚々と街を歩き子供たちにサインを求められるほどの憧れの存在になっていった。心の高まりを抑えられないジュニアはこの時期再び父に手紙を書き「父さんが無くしたすべてを取り返してあげる」と告げた。

偽パイロットとしての初飛行

パンナムのパイロットに成りすましたジュニアはある日TWAのチェックカウンターで「デッドヘッド」(業務移動)という業界用語を耳にする。デッドヘッドとは航空会社のパイロットやCAなどが、業務における移動のために飛行機に乗客として搭乗する事で、知識がないため係員との会話がかみ合わないジュニアだったが係員の言うまま、マイアミ行きのTWAの便にデッドヘッドとして乗り込むことが出来た。ここでもパイロットと専門的な会話が交わされるがジュニアは当たり障りのない返答でその場を凌ぎジャンプシートに座った。

飛行機が離陸を終えジュニアが落ち着かない様子で機内を歩き回っていると美人で気さくそうなCAマーシに声をかけた。ジュニアはポケットから隠し持っていたペンダントをとりだし、マーシに「これ落とした?キミのじゃない?」とマーシの背後にまわりペンダントを彼女の首に飾付け彼女を口説いた。このペンダントをチラつかせる行為は過去にも銀行で女行員に小切手を換金させる際にも行っておりジュニアの常套手段であった。これは昔、父フランクが交渉事をする際に人の懐に入り込むための手段として使っていたテクニックである。

女性銀行員ルーシーから得た知恵

この頃になるとジュニアは女性を口説くのも上手になっていた。マイアミに滞在していたジュニアはある日、小切手換金のため銀行を訪れた。カウンター席にいた美人行員ルーシー (エリザベス・バンクス)のところへ行き小切手換金の依頼と同時にパンナムの副操縦士を笠に露骨にデートを申し込んだ。世間慣れしていないルーシーはジュニアの誘いにあっさり乗ってしまう。ルーシーを手中に収めたジュニアは行員であるルーシーに小切手換金の流れやシステムについて色々と聞きだし情報を集めた。そして小切手には決済銀行を示す2ケタのルーティングナンバーが記されている事を知りこのルーティングナンバーを遠く離れた銀行の番号に書き換える事で遠隔決済となるため不渡り発覚までに時間を稼げることを知った。これはこれから本格的に小切手詐欺を企てるジュニアにとって、とても有益でかつ重要な情報だった。ジュニアはその悪知恵を働かせ偽小切手を切りまくり荒稼ぎをしていた。

父との久しぶりの再会

多額のお金を手にしたジュニアはある日父フランクを高級レストランに招待した。立派に成長しパイロットになったジュニアを父フランクは抱き誉め称えた。テーブルに着くとジュニアは父にテーブルマナーをも諭し富者らしく振る舞った。そしてジュニアは久しぶりに会う父にプレゼントを用意していた。父がプレゼントのリボンを外し中をそっと開けるとそこには新車の鍵が入っていた。父にキャデラック・コンバーチブルをプレゼントしたのである。ジュニアは「外に停めてあるから帰りに乗って行って母さんとドライブでもすれば」と暖かい言葉をかけた。過去に父フランクが資金繰りの為、泣く泣くキャデラックを売却した事をジュニアは忘れていなかったからだ。しかし父フランクはそんな息子の折角の好意を「キャデラックに乗っている所を国税局に見られたらまずい」と断った。父を心配するジュニアだったが、未だに国税局とトラぶり、妻ポーラとも寄りを戻せていない様子にジュニアは少し落胆した。

FBI捜査官カール・ハンラティとの出会い

そんな一方で、FBIはジュニアの犯す数々の事件捜査を着々と進めていた。捜査の柱となっていたのはFBI捜査官カール・ハンラティ(トム・ハンクス)であった。ハンラティは捜査のため偽小切手が換金された経緯を手掛かりにロサンゼルスに来ていた。

ジュニアが利用したであろうホテルに訪れたハンラティは証拠品である偽小切手を押収するが従業員からジュニアがまだこのホテルに滞在している事を聞かされた。彼の部屋に忍び寄り、早る気持ちを抑えられないハンラティは銃を片手にFBIだと叫び部屋に突入した。パウダールームから出てきたジュニアに銃を構えるハンラティだったがジュニアは自分はシークレットサービスのバリー・アレンであると名乗り、既にシークレットサービスによりジュニアは連行されたと偽った。信用しないハンラティだったがジュニアはハンラティに外を観て確認するよう促した。そこには犯人を車に乗せ護送しようとするシークレットサービスの姿があった。しかしそれは事件とは全く関係のない一般市民が盲目の人を車に乗せようと誘導していただけで、その様子をジュニアは犯人護送に見せかけたのだった。

その場を上手くかわしたジュニアだったが実態を気づかれぬうちに早くこの場から立ち去りたかった。ジュニアは「証拠品を車に運ぶからメイドに部屋をかき回されないよう見張っていてほしい」とハンラティに告げ部屋を出た。ハンラティは最初に部屋に乗り込んだ際、ジュニアに身分証の提示させたが“犯人護送”の様子に気をとられていたため中身を確認せぬままでいた。ジュニアが部屋を出ている間ハンラティは預かっていたジュニアの身分証のホックを開け何気に中を覗き込んだ。すると中から出てきたのは身分証ではなくファストフードのクーポン券だった。とっさに窓外を見るとジュニアはハンラティをあざ笑うかのように小走りに逃げ去っていった。ハンラティの完敗である。

空のジェームズ・ボンド

相変わらず偽パイロットとして世界中を飛び回るジュニアだったがある日自分の犯している“空泥棒”が各航空会社で騒動となっていて“空のジェームズ・ボンド”と称され新聞沙汰にまでなっている事を知る。ジュニアはこのジェームズ・ボンドという響きがとても気に入りショーン・コネリーがシリーズで来ていたスーツのコピーを3着仕立てアストンマーチンまで購入し浮名を流していた。

あるクリスマスの夜、ハンラティはFBIの建物にひとり残り捜査を続けていると一本の電話が入った。ジュニアからである。ジュニアはロサンゼルスでシークレットサービスを偽装しハンラティを誑し込んだことを詫びる。そしてハンラティが「謝る必要はない。会って話そう」というとジュニアはスタイヴサンホテルの3113室にいる事をあっさり教えた。しかしハンラティは前回ジュニアに騙されていたため、その居場所を信用しなかった。しかし実際にジュニアはそこに滞在していたのである。

“バリー・アレン”の解明

ある日、ハンラティはとある喫茶店であるデータを検証していた。それはバリーアレンの名がいくつも記されたリストだった。するとそこにコーヒーを注ぎに来たウエイターがバリーアレンといくつも書かれたリストを見て「コレクターですか?」と尋ねた。

バリーアレンとはアメリカのヒーローコミック「フラッシュ」に出てくる主人公の変身する前の名前である。ハンラティは犯人が漫画を読む少年層で、ゆえに今まで指紋も前科も記録がなかった事に気付く。さらにジュニアが「ヤンキース」を度々口にしていたことも忘れていなかった。ハンラティはすぐに部下に連絡しニューヨーク市警から未成年者の家出人リストを入手するよう指示をした。ハンラティはニューヨーク市警から取り寄せたリストをもとにシラミつぶしに聞き込み調査を行っていた。そしてリストの53番目にあったジュニアの母ポーラの居所を突き止めた。そして息子ジュニアが数々の悪戯を行っている事実をポーラに明かし確固たる証拠をつかむため息子の写真を提示させた。やはりここに写っていたのはハンラティがロスで取り逃がした自称シークレットサービスの“バリー・アレン”だった。それでも母ポーラは事の重大性に気付いておらず、息子の犯した罪をもみ消そうと財布に手をかけるが、ジュニアが犯した小切手偽造の被害額はパートで働くポーラにとってとても弁済できる額ではなく、既に130万ドルという膨大な金額に膨らんでいた。

医師の詐称

ジュニアはしばらく“空泥棒”を休止しフランク・コナーズという偽名を使って医師に扮した。ある病院を訪れ新米看護師ブレンダ(エイミー・アダムス)に言葉巧みに近づき病院勤務へのコネを作る。運よく面接にまでこぎつけたフランクはここでも学歴や職歴などの経歴詐称をし、緊急病棟の主任として採用され6名のインターンと20人いる看護師の管理役を任された。この看護師の中にはブレンダもいてやがて二人は男女の関係を持つようになる。

フランクはある日自転車事故で搬送され脚から血を流す少年の外科手術に立ち会うよう指示される。経験も知識も全くないフランクはそのおぞましい光景に耐えられなくなり、仲間の医師に大ぼらな指示をだしその場を逃げ出した。

ブレンダとの結婚話

その頃ハンラティは聞き込み調査の為ジュニアの父アバグネイル・シニアの元を訪れていた。ハンラティは息子の居場所を聞き出そうとするが父は「海兵隊に入り今はベトナムあたりにいる」と嘘の証言をした。息子を“売る”ことは出来なかったのである。しかしハンラティは帰り際、テーブルにあった息子ジュニアからの手紙を目にした。封筒には差出人である息子ジュニアの住所が記されており、ジョージア州アトランタのランドーバー通りにあるリバーベントアパートに住んでいる事を突き止めた。そしてその4時間後ハンラティは仲間たちと合流しジュニアのアパートに乗り込んだ。しかしそこにはジュニアはいなかった。ジュニアはブレンダと別の場所で過ごしていたからだ。ブレンダにはある悩みがあった。ブレンダは過去に父ロジャーのゴルフ仲間といい関係になり子供を身ごもり中絶した経験があった。淫らな娘に激怒した父はブレンダを勘当した。ブレンダはジュニアと結婚するためすぐにでも家族にジュニアを紹介したいと思っているが家族に顔向けできないと涙を流した。

そんなブレンダにジュニアは「一緒に行って僕が結婚の許可をもらうよ」と言ってブレンダを慰めた。

ブレンダの家族との対面

数日後ジュニアはブレンダと共にニュー・オリンズにあるブレンダの実家を訪れた。

ジュニアはブレンダの両親に「医者を辞め弁護士稼業に戻ろうかと思っている」と嘘を並べ立てた。ブレンダの父は司法事務所を営む法律家であったためジュニアに「どこの大学で法律を学んだの」と尋ねるとジュニアは「バークレー」と答えた。バークレーはカリフォルニア大学バークレー校の事で父ロジャーもバークレー校の出身者であった。ロジャーがジュニアにバークレー校の近況を尋ねるとジュニアは適当な嘘で受答え話をはぐらかした。ロジャーはそんな立派な肩書をもつ人物が自分の娘を嫁にしたいというのは何か裏があると疑いジュニアを問い正した。素性がバレタと思ったジュニアは「自分は医者でも、法律家でも、パイロットでもないただの凡人です」と白状してしまった。ここで万事休すかと思われたが純粋に娘に惚れ込んだジュニアの人間性を認め法律家として働けるよう根回しもしてやった。

ヨーロッパへの逃走

一応はまっとうな職に就き堅気の人生を歩みたいと思い始めていたジュニアは再びハンラティに電話をし「足を洗いたい。追われる身ではない普通の人生を歩みたい」と告げた。ハンラティは「ふざけるな。必ずお前を捕まえる」と一蹴した。

ほどなくしてジュニアとブレンダは結婚式の日を迎えた。式の最中にハンラティは義父となるロジャーを呼び出し真相を明かした。ハンラティの存在を知ったジュニアはブレンダの手を取り「2日後10時にマイアミ空港で落ち合おう」と告げ、式場の窓から飛び降り逃走した。

2日が経ち約束通りに二人はマイアミ空港で落ち合った。しかしそこにはハンラティ率いるFBI捜査員たちもジュニアが現れるのを虎視眈々と狙っていた。捜査員たちの気配を感じたジュニアはブレンダが来ている事を知りながらも車から降りず空港を後にした。

ジュニアは再びパンナムのパイロットに成りすまし、見習いCAに機上訓練をさせるという口実でヨーロッパへ向かう事になる。この頃にはマイアミ空港には常にハンラティら捜査員たちがジュニアに“高飛び”をさせまいと張り込んでいたが、ジュニアは捜査員を攪乱させマイアミ空港を後にした。そうとも知らないハンラティらはジュニアの車を取り囲み手を上げ車から降りるよう警告する。しかし車から降りてきたのはジュニアから100ドルで買収されたジュニアの替え玉だった。またしてもジュニアを取り逃がしたハンラティが空を見上げると、ジュニアを乗せたパンナム機が華々しく空を駆け抜けて行った。

フランスでの逃亡生活

それから7か月、ハンラティはジュニアが世界各国で小切手を乱用している情報を掴む。しかし今回は偽装小切手ではなくパンナム社の本物の小切手に精巧な印刷を施したものだった。最後の換金がスペインのマドリッドであったためハンラティらはスペインに飛びある印刷所を訪ねる。そこでハンラティは小切手を見てもらいインクや印刷機の種類からフランスのモントリシャールで印刷されたことを突き止める。

1967年のクリスマス・イブ、ハンラティはモントリシャールにある印刷所を訪ねる。するとそこには機械をフル稼働させ小切手偽装に精をだすジュニアの姿があった。ハンラティは「もう逃げられない。自分で手錠をはめ自首しろ」とジュニアを説得した。隣の教会から讃美歌が流れる中、手錠に繋がれたジュニアはハンラティに連れられ外に出た。そこに地元警察が到着しジュニアは引き渡される。その時ハンラティは「ジュニアは自ら手錠を掛け自首した」と地元警察に釘を刺した。

アメリカへの身柄引き渡し

それから2年後一旦アメリカに戻ったハンラティはFBIにジュニアの身柄を引き渡すため彼が投獄されているマルセイユを訪れアメリカへ連れ戻す手はずを整えた。アメリカに向かう飛行機にジュニア乗せたハンラティであったが、ジュニアは一筋縄ではいかず、アメリカの空港に着陸しようとする直前に機内のトイレから脱走した。

脱走後ジュニアはある雪の降る晩、母が恋しくなり家をこっそり覗き見しにいった。そしてその時張り込んでいたハンラティらに押さえられジュニアは逮捕された。後に裁判でジュニアはアトランタ重罪犯刑務所での12年の禁固刑を言い渡された。

服役中ジュニアの元へハンラティが面会に来た。漫画本を差し入れてやるなどし彼の話し相手にもなってやった。たわいのない会話を二人がしているとジュニアはハンラティのブリーフケースに目が留まった。「どこに行くの」とジュニアが聞くと、ハンラティは小切手偽造犯を捕まえるためにミネソタに行くと答えた。ジュニアが「その小切手見せて」といいハンラティはジュニアにそれを渡した。小切手を一目見たジュニアはその犯人が銀行の窓口係であることを瞬時に見抜いた。長年偽装小切手に手を染めていたジュニアならではの勘であった。この事がきっかけになりジュニアは小切手絡みの事件が起きるたびに重宝がられた。そしてハンラティはジュニアに司法取引をもちかけ晴れてジュニアはFBIの金融犯罪科で働くことになる。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのレビュー・感想

ストーリーがあまりにも奇想天外すぎて断片的にあらすじを書いても話が繋がらなくなってしまうような感じがして、超ネタバレのこのような長いあらすじを書いてしまいました。

感想ですがまずストーリーの展開のさせ方がとても上手いと思います。普通、こんな長いストーリーをこのあらすじのようにただ時系列で並べてしまっては面白みも半減するのでしょうが、あえて物語を時系列で進めず、現在と過去を織り交ぜながら1つのストーリーとしてつなぎ合わせているので観ていて飽きないし面白いです。そのあたりはさすがスピルバーグって感じです。そして何よりこの話が実話であるという事にジュニアという人の桁外れの凄さを感じます。

ジュニアの犯す行為は大胆不敵であっぱれのひと言。でも頭脳明晰でありながら時には人間らしい弱さも見せる。少年という事もあるせいかジュニアを少しも憎めません。またハンラティもベテラン刑事だけれどどこか頼りなくお人よしのところがあってこの二人を見ているとさながらルパンと銭形を思い出します。

映画のオープニングもこの作品のテーマらしくクレジット が奇想天外で音楽も謎めいていて面白いですね。

また最後に主人公であるフランク・ウィリアム・アバグネイル, ジュニアのその後の活躍や近況がテロップで流れるんですが、銀行詐欺と偽造摘発の権威になった彼に心から拍手を送りたいです。いつもながらこの手の実話映画の最後に出てくる“追伸テロップ”には、本編とはまた違ったところで感慨深いものを感じます。

ハドソン川の奇跡

コンピューター頭脳VSサリー機長の経験知

2016年製作  アメリカ  96分

監督

クリント・イーストウッド

キャスト

トム・ハンクス アーロン・エッカート ローラ・リニー マイク・オマリー

撮影ロケーション・情景

ニューヨークマンハッタン ハドソン川 USエアウェイズ 航空機事故 国家運輸安全委員会

ハドソン川の奇跡のあらすじ

とあるホテルの一室で悪夢にうなされ目を覚ます男がいた。その男はアメリカ合衆国の航空会社USエアウェイズの機長チェスリー・サレンバーガー(通称サリー)(トム・ハンクス)であった。

彼が見たその夢とは自身の操縦する航空機がコントロールを失い、マンハッタンの街中に墜落してしまうという恐ろしい夢だった。彼がなぜこんな夢を見たのかというと、遡る事数日前の2009 年1月15日USエアウェイズ1549便を操縦していたサリーと副操縦士のジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカート)はニューヨークのマンハッタン上空でバードストライクに遭い全エンジン停止という非常事態に見舞われた。

必死に機体の立て直しをするサリーとスカイルズだったが上手くいかず、苦渋の決断を迫られたサリーは機体をハドソン川に不時着水させた。その結果、幸いにも一人の犠牲者を出すこともなく乗組員全員を無事救助させる事に成功した。後にこの奇跡的な出来事は「ハドソン川の奇跡」として全世界に伝えられ、機長サリーと副操縦士スカイルズたちはたちまち国民的英雄と称えられた。

しかし、一方では国家運輸安全委員会 (NTSB)が不時着水ではなく「墜落」とい観点で事故調査を行っており「ラガーディァ空港に引き返す」と交信していたサリーらに対し、なぜハドソン川に不時着水させたのか、空港へ引き返し着陸させる事は可能だったはずとの見解を示し彼らを厳しく追及していた。不時着水の決断を行った機長サリーは自身の下した判断の葛藤に苦しみ、夢に魘されるほど精神的に追い詰められていたからである。

サリーとスカイルズは事故調査が済むまでホテルでの待機を命じられ、家族と会う事も許されなかった。そして国家運輸安全委員会がこの「事故」の検証を行ってきた終盤、サリーとスカイルズは公聴会によばれコンピューターと操縦士両方によるシュミレーションが行われた。

結果、どちらのシュミレーションでもラガーディア空港・テターボロ空港のどちらの空港にも無事に着陸できることが証明され、ハドソン川に不時着水させるというリスクを冒す必要はなかったと結論付けられてしまう。ところがサリーはこのシュミレーションに対しある重要な点が見落とされていると指摘。それは「人間心理がもたらす人的要因が考慮されていない」という点であった。まさに経験豊富なベテランパイロットならではの目のつけ所である。

それによりシミュレーションは仕切り直しされ、今度は人的要因を加味したシュミレーションがおこなわれた。その結果、国家運輸安全委員たちの度肝を抜く恐ろしい結果が示された。

ハドソン川の奇跡のレビュー・感想

コンピューター頭脳VSサリー機長の経験知

この映画の観どころはやはり国家運輸安全委員会による公聴会の席上で、コンピューターシュミレーションに理路整然と立ち向かうサリー機長の姿でしょう。

社会人として働いていれば時には失敗やしくじりを起こし、大打撃を被ることがあります。クライアントからのクレームも然りです。しかしその失敗がなぜ起きたのか、同じ過ちを二度と繰り返さないようにするにはどうすればいいのか、その都度検証や議論がなされ改善が図られていくわけですが、特にこの航空業界の場合、機関による事故調査の進め方は非常に科学的で他の産業のそれとは一線を画しているように強く感じます。まあ、それくらいはやってもらわないと些細なミスひとつで多くの人命を一瞬で奪う事になるわけですから当たり前といえば当たり前なのでしょうが。

近年はあらゆる面でコンピューターを使い、答えを出させ、物事を解決しようとする風潮が強いですが、コンピューターに情報を促すのはあくまでも「人」です。(基本的に)

データが間違っていたり、それに不足が生じたりすればコンピューターとて正しい答えを見いだしてはくれないという事をこの映画は教えてくれます。

それにしてもあの状況の中、沈着冷静な対応と、高大な判断を下したサリー機長の頭脳と経験知には只々頭が下がります。何にしろ、これが作り話ではなく実際にあった実話なのですから。

また、この手の実話映画では、本編最後に主人公当人の映像がよく描写されたりしますが、この映画もご多分に漏れず、チェスリー・サレンバーガー機長(サリー)が最後に登場します。それを見た瞬間、「貴方か!こんな凄い事をやったのは!」と思わず叫びたくなりましたね。

またこの映画の監督がクリント・イーストウッドなんですが、この監督、人の感情や気持ちを視覚化する描写テクニックはいつもながら上手いですね。

ショーシャンクの空に

誰も想像つかぬであろう綿密な脱獄計画

1994年製作 アメリカ 143分

監督

フランク・ダラボン

キャスト

ティム・ロビンス モーガン・フリーマン ウィリアム・サドラー ボブ・ガントン

撮影ロケーション・情景

1940~1960年代アメリカメイン州 バクストン (オレゴン州) オハイオ州立少年院(ショーシャンク刑務所全景)

ショーシャンクの空にのあらすじ

ティム・ロビンス演じる銀行の若き副頭取、アンディ・デュフレーンは、妻と間男を殺したという冤罪でショーシャンク刑務所に収監されてしまいます。そこで出会ったのが刑務所内での“調達係 ”のレッド(モーガン・フリーマン)。

アンディはレッドに鉱物採集の趣味を復活させたいと言い、ロックハンマーを調達してもらいます。しかし鉱物採集というのは詭弁で、無実の罪で投獄されたアンディはそのハンマーを使って脱獄を計る事を決意します。

ショーシャンクの空にのレビュー・感想

千里の道も一歩から

この映画の観どころは、何んといっても誰も想像がつかないであろう綿密な脱獄計画です。目標を決め、行動を積み重ね、少しずつではありますが成功に向かって突き進む様相はまさに男のロマンを感じます。それと同時に希望を持つことの大切さ尊さをこの映画は教えてくれます。(やることは非合法ですが)

日々わずかな進歩であっても、着実に努力を重ね、いつか必ず成し遂げてみせるという自信と強さがアンディの表情によく表れています。世の中には目標をもっているけれど中々結果が出ないと嘆く人、何らかの壁に立ち塞がれ行動を躊躇してしまっている人もいるかもしれません。そんな人にぜひ、観て頂きたい秀作です。

二人の男の友情

殺人(冤罪ではありますが)→ 刑務所 → 脱獄というシナリオなので冒頭から毛嫌いし観るのをやめてしまう人もいるかもしれませんが、最後にアンディとの約束をレッドが果たしに行くシーンは二人の固い友情と優しさに満ち溢れ、爽快な気分で観終えることができる映画です。