ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

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アメリカ同時多発テロで父を亡くした少年の苦悩と“調査探検ゲーム”の旅

2011年製作  アメリカ  129分

監督

スティーブン・ダルドリー

 

キャスト

トム・ハンクス  サンドラ・ブロック  トーマス・ホーン  マックス・フォン・シドー   ヴィオラ・デイヴィス  ジョン・グッドマン   ジェフリー・ライト

 

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク  9.11アメリカ同時多発テロ  アパート 家族の絆

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのあらすじ

 

宝石店を営むトーマス・シェル (トム・ハンクス)は妻リンダ(サンドラ・ブロック)と息子オスカー(トーマス・ホーン)と一緒にニューヨークに暮らしていた。トーマスは日頃からオスカーにマンハッタンの隣には6つ目の行政区があったと不可思議な事を言い、その行政区を探すため「調査探検」と称するゲーム遊びをオスカーと共に興じていた。

なぜならオスカーにはアスペルガー症候群というコミュニケーション障害がありゲーム遊びをする事で人とのコミュニケーション能力を育ませようとしたためである。

 

オスカーは大好きなトーマスと一緒に楽しめるこの“調査探検ゲーム”を気に入っていたが、ある日トーマス一家に思いもよらぬ不運が襲いかかる。2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロである。

事件の当日、学校を早めに帰されたオスカーは自宅に着くと留守番電話の再生ボタンを押した。そこにはトーマスの声が録音されておりトーマスがテロに巻き込まれた事を知る。オスカーにとってこの留守番電話に収められた肉声が父の最後の声となる。

そして9.11テロから1年が過ぎてもオスカーは留守番電話に入っていたトーマスの声が常に頭から離れずにいた。そんなオスカーはある日、以前から聞いていたトーマスのある言葉を思い出す。それは「太陽が爆発してもタイムラグにより8分間は世界は変わらず明るいままでいられる」という言葉だった。テロがあった日、トーマスからの留守電メッセージも同じ8分間であったことから、留守電ではあるが、その8分間交わした父との想い出が消し去られてしまうのではという猛烈な懸念に掻き立てられ、父との絆を維持しようとトーマスの遺品を探し始める。

オスカーは事件以来誰も開けていなかったトーマスのクローゼットを開け、中を弄っていると、しまってあった花瓶を誤って落とし破壊させてしまう。オスカーが花瓶の破片を片付けようとすると、傍にオレンジ色の封筒が落ちていた。封筒の裏には「ブラック」という文字が記されていて、中を見ると鍵が入っていた。

 

 

オスカーはそれらと父トーマスとの因果を解くために近所の鍵屋に行って鍵の手掛かりを探り、アパートの管理人に嘘を言って借りた電話帳から「ブラック」と印された名前を手当たり次第ピックアップした。「ブラック」に付随する該当者は472名に及んだ。

準備万端整えたオスカーはその鍵の持ち主であろう「ブラック」という人物を探し当てるために“調査探検ゲーム”の時に父から培った綿密な計画を立て人物探しの旅に出る。

 

 

 

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのレビュー・感想

 

子供を想う父と母、それぞれのもつ役割の難しさを痛感

恥ずかしながらアスペルガー症候群という病を初めて知りましたが、でもオスカーの行動力、貪欲な探究心には賢さと凛々しさを感じますね。特に父トーマスの子育てというか教育の素晴らしさに脱帽です。

今のご時世、子供たちは遊びと言えばゲームやスマホに没頭する事が多い中、オスカーが夢中になっていた、いわゆる体験型の遊びって絶対必要だなぁって感じます。結局子供の育成って、教育や環境次第って事になっちゃうんでしょうが、それと同時に、父と母、それぞれのもつ役割の難しさというのも考えさせられました。

大好きな面影だけを残し天国に行ってしまった父と、その父の想い出を執拗に追い求めようとする息子を心配する母親。どちらもオスカーを大切に思う親であるはずなのに「あのビルにいたのはパパではなくママならよかった」と言わせてしまった母リンダの気持ちはさぞかし惨めだった事でしょう。

 

些細な事から誤解を与え、子供の心を傷つけてしまうという正に子育ての難しさみたいなものを同じ子を持つ親として感じちゃいますね。

 

改めて感じる9.11の冷酷さと悲惨さ

そして衝撃的だったのは事件直後にトーマスが家に何度も電話をかけ、誰も電話に出ない中での“伝言メッセージ”かと思っていたら、実は最後の電話の時にオスカーは家にいて、それを傍で聞いていたという事実。それが物語の終盤で分る。更にオスカーがいると分かっていたトーマスがオスカーに自閉症を克服して欲しくて電話に出るよう必死にオスカーに呼びかけていた事も。

そして通話の途中トーマスの声が突然途切れるのと同時にワールドトレードセンターが崩れ落ちていく様子を捉えたニュース映像がオスカーが見守るテレビに映しだされるシーンがとても残酷でリアル。改めて9.11の冷酷さと悲惨さを感じますね。

 

そしてこの映画は脚本が素晴らしいんです。『フォレスト・ガンプ/一期一会』などを手掛けたエリック・ロスという人が書いたみたいですが、感慨深いセリフがいっぱい出てきます。特にオスカーが留守電で聞いたトーマスの最期の肉声を思い出し、父との絆を消すまいとする心の情景を「太陽が爆発した後の8分間・・・」というシナリオで例示するのですが、何を学んだらこんな上手い文章を思いつくのだろうと心酔しちゃいます。まあ、優秀な脚本家さんだから当然といえば当然なのでしょうが・・・

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ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

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ニューヨークの住宅事情が垣間見れるほのぼのとした作品

2014年製作  アメリカ  92分

監督

リチャード・ロンクレイン

 

キャスト

モーガン・フリーマン  ダイアン・キートン  シンシア・ニクソン

 

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク  ブルックリン  アパート

 

ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますのあらすじ

 

アレックス・カーヴァー(モーガン・フリーマン)は画家をしながら愛する妻ルース(ダイアン・キートン)とブルックリンにあるアパートで暮らしてきたがエレベーターのないアパートで毎日5階まで行き来する事に負担を感じ始めていたカーヴァー夫妻はアパートの売却を考え始めていた。40年前、越してきたばかりのブルックリンは当時彼らの友人たちからも「ド田舎」と揶揄されるようなローカルな街であったが、近年は近代文明を象徴するアップルストアやオーガニック食品の店などが次々とオープンしおしゃれな人々がぶらつく街として名を馳せるようになり、カーヴァー夫妻の所有するアパートは100万ドルの値が着くのではといわれるほどになっていた。

 

ある日アレックスが愛犬ドロシーの散歩を終え部屋に帰るとアパートを売却するための内覧会を控えた妻ルースがその準備に追われていた。アパートの売却には不動産屋であるルースの姪リリー(シンシア・ニクソン)が絡んでいた。

ルースはアパートの売却に積極的であったが一方のアレックスは長年住み慣れた我が家を手放す事に少しためらいを感じていたため内覧会についても「物が盗まれる」「部屋を他人がいじりまわすのが気に入らない」などといって乗り気ではなかった。そんなアレックスをルースが宥めていると廊下で具合が悪そうなドロシーが寝そべっていた。ルースがドロシーを抱きかかえるとドロシーはキュンキュンと鳴きながら震えていたためアレックスたちは急遽ドロシーを動物病院へ連れて行く事に。この時も5階から階段でドロシーを抱きかかえて降りるルースは容易ではなくエレベーターのない事を改めてアレックスに嘆いた。二人はドロシーを抱えタクシーに乗り込むが丁度その頃マンハッタンでタンクローリーが立ち往生する事故が起こり周辺道路は渋滞となっていた。

 

 

やっとの思いで病院に着くと獣医からドロシーが椎間板ヘルニアの疑いがある事を宣告されCT検査を勧められる。その時アレックスは検査費用を獣医に尋ねるが「みっともない質問はしないで」とルースに制された。CT検査費用が1,000ドルかかると聞いたアレックスは躊躇するがルースは迷わず検査を承諾した。検査のためドロシーを一晩病院に預ける事になった夫妻は仕方なく帰るが、帰りの途中でも治療費の事で愚痴るアレックスとドロシーの安否を気遣うルースは口論になった。

家に着いてもルースはインターネットで犬の椎間板について調べドロシーを案じてやまなかった。

内覧会に備えルースは部屋の隅々を掃除していた。しかし先ほどのタンクローリーの事故は単なる事故ではなくテロ事件であったため街の混乱は収まらず、掃除に精を出すルースに「内覧会には誰も来ない」とアレックスは呑気に構えていた。そもそもアレックスは自身が描いた作品をリリーから「ガラクタ」と揶揄されていたため気に入らず、今回の不動産売却にそのリリーが絡んでいたのでなおさらだった。

 

 

しかしそんなアレックスも自分のアトリエを整理している内に自分がルースに対して何を残してあげられるかを自問自答するようになり、今回のアパートの売却もルースの好きなようにさせようと考えるようになる。そんな矢先、ルースの元に獣医から電話が入った。ドロシーが落ち着いたので明日朝一番で手術をしたいとの連絡である。手術は1万ドルかかるため獣医は施術の意思をルースに確認するが、あまりの大金に驚いたルースはアレックスに電話を換わり判断を委ねた。電話を換わったアレックスは「ドロシーの命が助かるなら何でもしてくれ」と獣医に答えた。

内覧会の当日、早速一組の夫婦が内覧に訪れた。夫婦は些事にこだわりケチを付けながら部屋を見歩いた。そしてアトリエで絵を描くアレックスの部屋に行くと「こんな質素な暮らしをするのも悪くない」と皮肉った。一組目の家族が帰り二組目の家族が内覧しに来た。家族の娘がアレックスのアトリエにやってきて「どうして家を売るの」と尋ねる。アレックスは「言い質問だ」といったがその真意を答えられなかった。皆、勝手気ままにアパートを批評したがアレックスのアトリエだけは「眺めがいい」と誰もが誉めてくれた。

 

 

翌日不動産屋のリリーから昨日訪れた一組の家族がオファーしてきたと告げられる。価格は85万ドルという。価格の下落はテロ事件がいささか関係していた。85万ドルのオファーに売ろうか否か焦るルースにアレックスは「安すぎる。テロ事件が収まれば元の値に戻る」と待ったをかけた。カーヴァー家に着いたリリーは87万5000ドルで交渉しているから今すぐ返事を欲しいと迫った。更に他からも88万5000ドルのオファーが入った。拝金主義が見え見えで、商売っ気をあらわに売却を急がせるリリーの態度にカーヴァー夫妻はいささか嫌気を感じ始めていた。

 

 

 

 

ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますのレビュー・感想

 

派手なアクションシーンもなくストーリーとしても比較的シンプルな内容ですが相変わらずぶきっちょな生き方を演じるのがとても上手いモーガン・フリーマンと気取らない女性らしさを醸し出すダイアン・キートンの夫婦愛がいい。

映画そのものもさることながらアメリカニューヨークの不動産事情に興味のある人にとっても面白い映画だと思う。ただ街並みや情景はニューヨークといってもマンハッタンではなくちょっとばかり寂しいブルックリンが大半のロケーションとなっているのであしからず。

ストーリー的には老いを感じ始めた夫婦がエレベーターのないアパート暮らしに不自由さを感じはじめ、アパートを売却し新天地で暮らす計画を立てるという話。

ただ、そのアパートに40年以上暮らしたという事は建設されたのはそれ以上前。それでもそのアパート物件の評価額が100万ドル(約1億円)っていうから不動産価値のレベルが違う。

アパートというと日本では「コーポ」的な1~2DKくらいの狭苦しい部屋を想像するでしょうが、アメリカの場合、アパートというと日本でいうマンションクラスを指し、賃貸となるとニューヨークの隣町ニュージャージー辺りでも1LDKクラス30万/月が最低家賃だそうで、それこそ日本だったら都内のタワーマンションに住めるくらい高価なのだそうです。(以前ニューヨークに旅行に行った時ツアコンの人が力説してました)

劇中でもカーヴァー夫妻が新しいアパートを探しに出かけるシーンがあり、部屋を覗くと天井が高いせいか「狭い」とされるお部屋も日本の「それ」とはレベルが違う事に驚かされます。

 

エンディングに流れるマンハッタンの景色も壮大で大都会ニューヨークを見せつけられた感じです。

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ボヘミアン・ラプソディ

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伝説のロックバンドクイーンの奇跡を綴る物語

2018年製作  イギリス・アメリカ  134分

監督

ブライアン・シンガー

 

キャスト

ラミ・マレック  ルーシー・ボイントン  グウィリム・リー  ベン・ハーディ  ジョゼフ・マゼロ  エイダン・ギレン  アレン・リーチ  トム・ホランダー

 

撮影ロケーション・情景

HIV  ロンドン コンサート  ロックバンド  大邸宅  バイセクシャル ロールス・ロイス  アメリカ中西部

 

 

ボヘミアン・ラプソディのあらすじ

 

1970年代初頭のロンドン。ペルシャ系移民族出身のファルーク・バルサラ(ラミ・マレック)は、ヒースロー空港で働く傍ら、音楽の夢を捨てきれずスマイルというバンドのライブに足を運んでいた。その日ライブを終えたスマイルのボーカルがバンドの将来性を懸念してバンドのメンバーに脱退を申し出る。丁度その様子を見ていたバルサラは自分こそスマイルにふさわしいボーカルである事を猛アピールしその場でメンバーたちに歌声を披露しスマイルの新しいボーカリストとして加入する事になる。このバルサラこそ、後のクイーンを支えるフレディマーキュリーである。

 

 

バルサラはゾロアスター教徒の環境下の家庭で育ち厳格な父とそりがあわず、自分のルーツをたどりフレディという名前に改姓する。

その頃フレディはお洒落な人気ブティック「BIBA」の店員メアリー・オースティン(ルーシー・ボイントン)と知り合い恋へと進展させていく。

新たにベーシストとしてジョン・ディーコン(ジョゼフ・マゼロ)が加わりライブを再開するが観客がフレディに向かい“パキ野郎”とヤジをとばしたがフレディは目もくれず「Keep Yourself Alive」を歌いきった。そのライブの最中にマイクスタンドの台座から先端部分が外れるというハプニングがあったがフレディはそれを気に入り、フレディのマイクスタイルとしてその後定着する。

 

 

それから一年後、スマイルは女王陛下を崇めバンド名をクイーンに変更する。そしてそれを機にフレディはメンバーにワゴン車を売却してアルバムの自主制作をしようと持ちかける。フレディは録音に関しても細かな拘りをもち、アルバム作りのクオリティさを追及した。フレディは常に音楽の可能性を心に秘め、常に傍にいるメアリーに対して「楽をさせてやる」が口癖だった。フレディとメアリーは互いの家族に紹介するほどの仲になっていた。そこでメアリーはフレディの家族から彼の素性を聞かされる。彼の父母はバルサラからマーキュリーに改姓したのは芸名のためと思っていたのだが、フレディはそうでなくパスポートも含め正式に改名した事を告げる。厳格な両親はそんなフレディに失望し「名を変え別人になっても無駄だぞ」と叱った。

 

丁度その時フレディに一本の電話が入る。以前の彼らのレコーディングを見たEMIのエルトンジョンのマネージャーJリード(エイダン・ギレン)からで、実はフレディはこっそりリードに渡していたデモテープを聴いて彼らへオファーをしたのである。彼らは信じられないという様子で歓喜に満ちた。

数日後バンドのメンバーはリードに会う。リードは彼らを才能があると評価し、中でもフレディに特に興味を示した。リードが「他のバンドと違う所は?」とメンバーに聞くが誰も答えられないでいる中、フレディが口火を切り、自分たちの考えや音楽家としての役割を坦々と語った。リードはその場で今後のマネージャーとなるポール・プレンター (アレン・リーチ)を紹介した。リードは彼らに今後の可能性を示唆するが、フレディはそれでは満足しないと言い放った。

 

 

それから数日後クイーンはトップ・オブ・ザ・ポップスに出演するが放送局であるBBCの方針で収録済みの音楽をクチパクでやれと命令され理不尽さから抗議するも受け入れてもらえず仕方なしに承諾した。やがて音楽活動が軌道に乗り出すとフレディはメアリーにプロポーズする。フレディはこの時メアリーに指輪を渡すが「何があっても指輪を外さないでほしい」とメアリーに約束させた。そしてフレディとメアリーが愛を語っている最中、他のメンバーたちが部屋に入ってきて次なるツアーの決定を知らせた。アメリカツアーである。

彼らクイーンはアメリカでも大人気だった。米国ツアーから戻った彼らはEMIレコードの重役レイ・フォスター(マイク・マイヤーズ)らと会い、レイから彼らのヒット曲「キラー・クイーン」のような路線で新たな楽曲を作るよう指示するが、二番煎じの曲など作れないと彼らは反発した。そしてフレディはキラー・クイーンを越える曲がこれだと言わんばかりにその場でオペラをレイに聴かせ「オペラ座の夜」にしようと呈するがオペラなどヒットするはずがないとレイは難色を示すが周囲に押し切られ仕方なく承諾した。

 

 

1975年ロック・フィールド農場。マネージャーのポールはあらゆる雑念を取り払いレコーディングに集中できる場所としてこの農場を選んだ。フレディはここでボヘミアン・ラプソディを書き上げた。後日この曲のレコーデイングに入るがフレディはオペラパート(声分)を入れようとメンバーに提案した。

その後彼らは「オペラ座の夜」を完成させ得意満面にレイに聴かせボヘミアンをシングルカットすると申し述べた。しかしボヘミアン・ラプソディを聴いたレイは「6分もの時間を要する曲はラジオでかけてもらえない」と容認せず、3分以内の曲をシングルカットするようメンバーを諭しボヘミアン・ラプソディを酷評した。しかし彼らは譲らず猛反発し、レイの部屋を出て行った。

 

 

レイと訣別した彼らはキャピタルラジオに自ら出演交渉し番組に出演する。そこでボヘミアン・ラプソディが流されクイーンは絶大な人気を博していく。

やがて人気バンドとして世界を飛び回ることになるフレディは少しずつメアリーとの距離が開き始めると、自分はバイセクシャル(両性愛者)であることをメアリー打ち明けた。メアリーは以前からその事を薄々気付いて、フレディに「バイセクシャルではなくあなたはゲイよ」と指摘しフレディと距離を置くようになる。そしてメアリーは他の男性との交際を始める。

1980年フレディは髪をバッサリ切り口に髭を蓄えた。フレディを訪ねたロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)にフレディは「似合うか?」と聞くとロジャーは「余計ゲイっぽい」と冷ややかで、食事に誘うフレディを「家族がいるから」と断った。フレディは段々と孤独さを感じはじめていく。

フレディはそんな孤独感から抜け出そうとパーティー三昧の生活を送るが、その狂気ぶりに仲間は呆れた。そんな時期、フレディは執事として雇ったジム・ハットンに恋愛感情を抱くようになるがハットンは「本当の自分を見つけ出すことができたらまた会いましょう」と告げフレディの元を去った。

 

 

荒れた生活を送るフレディは練習にも頻繁に遅刻をするようになる。そんな中ギタリストのブライアン・メイ(グウィリム・リーブライアン)がリーダーシップを取り、観客が一緒になって歌えるような新しい曲を作ろうと提案する。

そしてそのスタイルが話題となり、ますます人気を博していくクイーンだったが、バンドとしての人気がいつまで続くか懸念を感じていたマネージャーポールの元にCBSからフレデへのソロデビューの話が持ち上がる。その契約金額は破格のものだった。ある晩ポールとリードが乗る車に同乗していたフレディはJリードからそのことを告げられたフレデだったがバンドを家族のように思うフレディはJリードからソロデビューの打診をされるがフレディは「バンドは家族だ」とリードの話を一蹴し「お前はクビだ」といって車から降ろした。そしてリードを勝手にクビにしたフレディはメンバーとの確執を強めていく。

 

1982年マスコミはフレディのセクシュアリティを暴こうと騒ぎ始める。容赦ないマスコミの質問に責め立てられるフレディは彼らと対立し精神的に追い詰められていく。半ば鬱になっていたフレディはツアーとレコーディングの繰り返しに嫌気がさし、400万ドルでCBSとのソロアルバムの単独契約した旨をメンバーに告げるとそれが引き金となりメンバーと完全に仲間割れしてしまう。フレディはソロ活動を始めるが周りの仲間たちとの感性が合わなかった。そんな中新たなマネージャーとなったジム・ビーチ(トム・ホランダー)はポールにチャリティーイベントである「ライヴエイド」の話をポールを通じフレディに伝えようとするが「彼は今忙しい」とポールは取り次がなかった。そんな事は知らないフレディはソロアルバム作成に没頭するが、上手くいかずその歯がゆさから逃れるためにドラッグや酒に溺れ始め徐々に彼の体に病の兆候が見え始める。

やがて連絡がつかないことを不審に思ったメアリーがフレディの元を訪れる。酒やドラックに溺れ荒れた生活を送るフレディはメアリーの訪問を喜び、ライヴエイドのオファーがあった事実をメアリーから聞かされた。バイセクシャルであるものの、メアリーに未練が残るフレディは彼女に「ずっと一緒にいて欲しい」と懇願するが、メアリーから妊娠したことを告げられるとフレディは衝撃を受けた。そしてフレディはその時「ひどいよ」という一言をメアリーに発してしまい彼女は傷つき部屋を出ていった。

雨の降りしきる中車に乗り込もうとするメアリーを追い、我に返ったフレディは「妊娠おめでとう」と言った。メアリーはフレディに「バンドのみんなはあなたの家族よ」と諭しお金のためだけにフレディに群がるポールたちを非難した。メアリーの言葉をきっかけに自分の利益のためにライヴエイドのオファーを隠していたポールに愛想を尽かせフレディはポールとの訣別を決意する。

 

 

数日後フレディはライヴエイドの件でジムに電話するが既に出演者が決まってしまった事を聞かされた。更にはバンドに復帰したいというフレディの熱望に対し、他のメンバーのフレディに対する心の奥底を聞かされた。クイーンに未練のあるフレディは諦められずジムに彼らとの話合いの場を作ってもらえるよう懇願した。数日後フレディはメンバーたちと会う事になる。フレディに対するわだかまりを隠しきれない彼らではあったがフレディは仲間たちに自身の身勝手さを素直に詫び、今後バンドがもたらす利益を平等に分配する事を彼らに約束し、バンドへの復帰を許された。

4人が揃ったクイーンにジムはある人物のコネを使いライヴエイドに参加できるよう根回しをしていた。しかし何十万もの観衆の中、クイーンとして何年もブランクを作ってしまった彼らはライヴエイドへの参加に難色を示したが、出なかったことに必ず悔いが残ると呈するフレディの意見を尊重しライヴエイドへの参加を決意する。しかし体調が優れないフレディは日に日に不安に駆られ、自分はエイズではないのかと疑い始める。心配になり病院で検査をするとフレディはHIVに感染していることを聞かされる。愕然とするフレディ。ライヴエイドまであと一週間と迫ったある日、リハーサルを終えたフレディは仲間に自分がエイズに感染した事を告げる。

 

メンバーは衝撃を隠しきれなかったがライヴエイドを成功させパフォーマーとして自身の人生を終えたいという彼の想いを理解し尊重した。

そしてライヴエイドの当日を迎えた彼ら4人は約20分のパフォーマンスではあったが群衆を大熱狂させチャリティーイベントとして大きな功績を遺した。

 

 

 

ボヘミアン・ラプソディのレビュー・感想

 

この映画の感想となるとどうしても「映画の感想≒クイーンの感想」になってしまいがちなところがありますが、まずもってフレディを演じたラミ・マレックの役作りに大きな拍手を贈りたいですね。表情の作り方から目の動かし方、顎の閉め方に至るまで、素晴らしいの一言。

ただ、そうは言いながらも率直に感じるのは実はどんなに卓越した演技でも演者は本人を越えられないという事。この映画では特にそれを感じますね。これは最後のライヴエイドのシーンでラミ・マレックと本物のフレディが画面分割で投稿された動画を観るとよく解ります。もちろんそれはフレディの微妙な動作や部分的な模写の相違を指摘しているのではなく、そこには事実という動かしようのないリアリティさがあり、フレディというパフォーマーとしての圧倒的なセンスや感性は演技としては到底超える事はできないんだという事。これは本物に対する見方が各々ある以上仕方ない事だと思う。ブライアン・メイを演じたグウィリム・リーもブライアンと“瓜二つ”であるけれど、単に“似てるね”で終わってしまい、不思議とマレックとフレディのような比較をしようとは思わない。そこがフレディマーキュリーというパフォーマーとしての凄さだと思う。

それとこの映画を観終わって考えさせられたのがライヴエイドの時、フレディはHIVの感染を認識していたのだろうかという点。ライヴエイドの開催が1985年7月13日でHIV検査をフレディが受けたとマスコミが報じたのが1986年10月とある。ボヘミアン・ラプソディという曲を僕が初めて聞いたのはもう40年以上も前。でもこの曲に綴られた歌詞の意味をこの映画を機に初めて知りました。この曲には“Too late, my time has come~もう手遅れだ、最期の時が来た”や“Body’s aching all the time~体の痛みが消えない” “Goodbye, everybody, I’ve got to go~さよならみんな、もう行かなくては”等と綴られていてとても謎めいている。

もしあのライヴエイドで、フレディが自分の病を認識していて歌っていたとするなら、いったいどんな想いでこの曲を歌っていたのだろうかと思い巡らせてしまいフレディの偉大さを一層感じます。

人の人生には緊張を余儀なくされる事がいっぱいあって、ここぞという時に勇気を奮い立たせなければならない時が度々あるけれど、恐れ知らずの表情であのライヴエイドに立ったフレディの勇姿に僕はいつも勇気をもらっています。

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最強のふたり

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真の友情を綴ったフランスの実話

2011年製作  フランス  112分

監督

エリック・トレダノ

 

キャスト

フランソワ・クリュゼ  オマール・シー  アンヌ・ル・ニ  オドレイ・フルーロ

 

撮影ロケーション・情景

フランス パリ 大邸宅  身障者 パラグライダー  プライベートジェット

 

 

最強のふたりのあらすじ

 

パリに住む富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は過去パラグライダーで事故を起こし、頸髄損傷により首から下が麻痺し、自分の意思で身体を動かす事ができない障害者生活を強いられていた。ある日フィリップの介護人を雇うために行われていた面接に黒人青年ドリス(オマール・シー)がやってくる。しかしドリスの目的は雇用ではなく面接を受ける事で継続される失業保険を貰うためのものだった。そのためドリスはフィリップや秘書であるマガリー(オドレイ・フルーロ)らに敢えてぞんざいな態度で臨み、わざと不合格になるよう努めた。これで不合格になりそれを証明する書類が貰えると思ったドリスだったがフィリップは事もあろうに他の候補者には目もくれず、飾り気のないドリスを気に入り試用期間1ヶ月間という条件で彼を雇い入れる。

 

 

大邸宅であるフィリップ邸に、住み込みで働くことになったドリスは自分専用の個室を与えられ部屋には大きな風呂、トイレまで完備されるほどの豪華な部屋だった。複雑な家庭環境の中、スラム街での貧祖な暮らしをしてきたドリスは大きな喜びを示した。ドリスの働きぶりはフィリップにとって少々粗雑ではあったが、自分に対し哀れみの目で見ようとせず一人間として接してくれるドリスにフィリップは心を許していく。

 

 

ドリスは身体的な世話もさることながらフィリップの文通相手と会えるよう勝手にお膳立てをしたり、プライベートジェットで二人で旅行に出かけるなど、二人の友情は日に日に深まっていく。しかしそんなドリスにある日家庭的な問題が起こり事情を知ったフィリップはドリスの雇用を止め、ドリスを自宅に帰す決心をする。その後フィリップはドリスがいなくなった生活に心にポッカリ穴があいたようになり、虚しさを感じる日々を送ることになる。

 

 

 

 

最強のふたりのレビュー・感想

 

男の固い友情を描いたフランスの実話。フィリップとドリス以外の俳優陣たちはウィキにもページが存在していないくらい比較的マイナーな映画かもしれないけれど、こんな素晴らしい作品を買い付けてくれた配給会社に心からありがとうと言いたくなる心温まるいい映画です。

ドリスは飾り気のない天真爛漫な性格ですが、面接のときにドリスの人格を見抜いたフィリップの洞察力も鋭いし、素性や過去には囚われないフィリップの寛大さは男として見ていてかっこいい。

フィリップは大富豪だけれど、いくらお金があってもやっぱり埋められないものってあるんですね。“物”だけでは決して満たされないものをドリスがフィリップに与えてくれた。フィリップが無精ひげを生やしドリスが戻ってきた事を知った時の嬉しそうな顔がとても印象的。フィリップにとってドリスはさぞかしかけがえのない存在だったんでしょう。そして最後にこの映画の主人公であるフィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴの車椅子を押す介護人アブデル・ヤスミン・セローの姿が登場し「彼らは今でも深い絆で結ばれている」というテロップが流れるんですが、この映画が実話というだけにその映像には深い感動を覚えますね。

自分の利益に関係なく築ける真の友情って素晴らしいです。

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クロッシング・ガード

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子供に先立たれた親の気持ちをどう受け止めたらいいのかを深く考えさせられる映画

1995年製作  アメリカ  111分

監督

ショーン・ペン

 

キャスト

ジャック・ニコルソン  デヴィッド・モース   ロビン・ライト   アンジェリカ・ヒューストン   パイパー・ローリー   ロビー・ロバートソン   ジョン・サヴェージ

 

撮影ロケーション・情景

ロサンゼルス  刑務所  グループセラピー  セメタリー(霊園)

 

 

クロッシング・ガードのあらすじ

 

とあるグループセラピーに集う人々の中にひっそりと佇む男と女。男の名はフレディ・ゲイル(ジャック・ニコルソン)女の名はメアリー・マニング(アンジェリカ・ヒューストン)である。二人は6年前に交通事故に巻き込まれこの世を去ったエミリーの父と母。

エミリーは飲酒運転をしたジョン(デヴィッド・モース)の車にはねられ、わずか7年という短い生涯を閉じた。父親フレディは愛娘を失った絶望から立ち直れず、ジョンへの復讐だけを心に秘め喪失した日々を送っていた。一方ジョンは心の傷が癒えぬまま6年の刑期を終え3日後に出所する。

 

 

出所を迎えた当日、ジョンは迎えに来た父母の車に乗り刑務所を後にする。殺意に燃えジョンの出所を指折り数え待ち望んでいたフレディは、ジョンの眠るトレーラーハウスに忍び込みジョンとの対面を果たす。フレディはジョンに銃を向け引き金を引くが弾が入っておらず未遂に終わった。そんなフレディに対しジョンは沈着冷静な態度で語り始めた。自分の命に代えてでもエミリーを救ってやりたかったこと、一生許してはもらえないほどの罪を犯してしまったことの後悔をフレディに淡々と語り、復讐を考え直すようフレディを諭した。

フレディは「お前に俺の気持ちが解るはずがない」と啖呵を切り「3日後にまた来るから覚悟しておけ」と言い残しその場を去った。フレディは街で仲睦ましい親子を見かけると更にジョンに対し憎悪を深め、一方のジョンは良心の呵責に苛まれながら日々を送る。

そして72時間が経過しジョンを殺めようと心に決めていた3日目の夜、フレディは別れた元妻メアリーを呼び出し何かを告げようとしていた。フレディが口火を切る前にメアリーが話し始めた。それはフレディに対しての愛だった。フレディもそれを真摯に受け止めメアリーを讃えた。しかしフレディの言葉の端々にジョンへの復讐が示唆されたためメアリーはフレディを窘めるが、フレディは突然豹変しメアリーに罵声をあびせた。愛想をつかしたメアリーは席を立ち店を出た。

 

 

フレディはそこから車を運転しジョンのところに向おうとするが蛇行運転をしたことでパトカーに止められる。フレディは酒に酔っていた。警官がフレディを逮捕しようとした一瞬をついてフレディは逃亡した。警察のヘリコプターのサーチライトを掻い潜り、フレディはジョンの家の敷地に潜り込んだ。しかしそこには銃を構えたジョンがフレディに銃口を向け待っていた。

フレディがすかさず銃を構えるとジョンは銃を捨て走り出す。ジョンを追うフレディ。そこから二人の壮絶な追跡劇が始まるが、ジョンはフレディをどこかに誘おうとするかのように執拗に走り続けた。

丘を駆け上がるとジョンは立ち止まり突然その場にひざまずいた。  一体どうした事かと言わんばかりの顔をするフレディ。何とジョンがひざまずくその場所はエミリーが眠る墓だった。

フレディはエミリーを失った当時、絶望から意固地になりエミリーの葬式すら顔を出しておらず状況を把握していなかった。

ひざまずくジョンは墓下に眠るエミリーに向って泣きながら「パパが来たよ。パパを救ってやって欲しい」と告げる。墓の場所、墓石の色、何一つ知ろうとしなかったフレディはその瞬間我に返り、そっとジョンに手を差し延べ涙を流した。

 

 

 

 

クロッシング・ガードのレビュー・感想

 

このクロッシング・ガードという作品は誰が観るのかによって大分感想が違ってくるように思いますね。決して差別発言として取らないで欲しいのですが、子供や家族を持った事がない人と、既に家族があり、同じような娘を持つ父親が観た場合とではおのずと感じ方も違ってくるはず。子供に先立たれたフレディの気持ちというのは実際に当事者になってみなければ解らない部分はいっぱいあるんだろうと思う。

加害者を殺めたところでエミリーは帰ってこないし、そんなことはエミリーだって望まないはず。しかしそうは解っていながらも子供の仇を打ちたいと思うフレディの気持ちはよく解ります。

この映画の観どころはやはりジョンがフレディを霊園に誘い「パパが来たよ。パパを救ってやって欲しい」と告げる場面ですね。フレディも苦しんでいたけれどジョンも同じように苦しんでいた。このフレディを自分に置き換えて考えてみるとジョンの苦悩もさることながら自分のこれまでの愚かさを痛切に感じ、同じ娘を持つ立場の僕としては涙が止まりませんでしたね。

 

エミリーの眠る場所すら知らないでいたフレディがエミリーの墓石を見て「墓石の色はピンクだったのか」と少しばかりの安堵を見せるるシーンはとても印象的です。人は死というものを受け入れられないうちはホント、何をしでかすかわからない。でも自分なりに死というものを受け入れる事ができた時に、本来の自分の素直さを取り戻せるんだということを教えられたような気がします。もし自分の子供が同じような状況になったとしたなら親としてどう受け止めたらいいのか深く考えさせられる映画です。

 

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幸せがおカネで買えるワケ

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成功者の“見てくれ”だけを真似ても、決して成功者にはなれない

2009年製作  アメリカ  96分

監督

デリック・ボルテ

 

キャスト

デミ・ムーア  デイヴィッド・ドゥカヴニー  アンバー・ハード  ベン・ホーリングスワース  ゲイリー・コール  グレン・ヘドリー  ローレン・ハットン

 

撮影ロケーション・情景

アメリカ郊外 大豪邸 マルチ商法 アウディ

 

 

幸せがおカネで買えるワケのあらすじ

とある高級住宅街に越してきたジョーンズ一家。 彼らは高価な調度品に修飾された大邸宅に住み、高級車を乗り回し、化粧品や家電、レジャー用品に至るまで身の回りにあるもの全てが高級思考。そんな彼らがここに越してきた理由はただひとつ。このエリアに住む人々の平均所得が10万ドルを超えている事にあった。

一家は住宅から車、日用品に至るまでありとあらゆる製品を販売する企業の販売員で、自分たちの華麗な生活ぶりに憧れを抱かせ、バンドワゴン効果(集団帰属欲)を利用し、自社製品の販売促進を狙うのが目的だった。当然、家族というのはダミーであり全員組織に雇われた販売ユニット仲間である。

 

彼らの狙い目通り、近隣の人々は彼らに憧れを抱き、同様のライフスタイルを送ろうと一家の薦める商品を躊躇なく購入していく。

隣に住むすサイモンズ家の妻サマー(グレン・ヘドリー)はロバスチャン化粧品の販売員をしており夫ラリー(ゲイリー・コール)と二人暮らし。ジョーンズ一家が隣りに越してきた縁で自分のセールスにつなげようと早速ジョーンズ家に引っ越し祝いを持参し挨拶に出向いた。もちろん引っ越し祝いの品はロバスチャン化粧品の新作サンプルである。ジョーンズ一家もカモがきたとばかりに一家総出で出迎え、仲のいい家族を演じた。部屋に通してもらったサマーとラリーだったがサマーはロバスチャン化粧品を売りつけようと美貌の秘訣や肌管理の極意を力説するが、同様に化粧品を扱うジョーンズ一家の面々は“猪口才な”と言わんばかりのシラケ顔で彼女の話を聞き流した。

 

ジョーンズ家の佇まいの豪華さに目を見張るサマーに、スティーヴの偽妻ケイト(デミ・ムーア)は部屋を見てみる?とサマーを案内した。サマーは早速インテリアに興味を持ち憧れを抱き始めていた。

サマーたちも帰り就寝に就こうとスティーヴが寝室に入る。綺麗にベッドメイクされたフカフカのベッドの前に来ると幾重にも並べられていたクッションを床に投げつけ床に入った。寝室もご多分に漏れず見込み客のためのデコレーションであり、実用的でなかったからである。

翌朝一家はきょう一日のスケジュールを確認し合った。娘役ジェニファー(アンバー・ハード)と息子役ミック(ベン・ホーリングスワース)たちは、きょうが高校への初登校。スティーヴはゴルフ、ケイトは美容室とスケジュールを入れていくが、これらはすべて見込み客を作るための行為である。娘ジェニファーは初登校に遅刻。しかしクラスメイトたちとは直ぐに打ち解けた。

スティーヴがゴルフの練習をしているとお隣さんのラリーが通りがかる。一緒にコースを回ろうとラリーはスティーヴを誘った。誘いを受けたスティーヴはいずれラリーにニューモデルのクラブセットを売り込もうと先を目論んでいた。

一方ケイトは美容室でオーナーのビリーと会話が弾み、ビリーは彼女の容姿端麗さや、一流品を持ち歩く振舞いに直ぐに興味を持った。ビリーはランチパーティーを開いてあげるとケイトにお膳立てをし、ケイトはそこで大がかりなセールスを企んだ。このようにジョーンズ一家のセールスが始まり、彼らは次々と売り上げを伸ばして行く。

ところが、スティーヴに洗脳され次第に浪費がエスカレートしていった隣人ラリーは、ついに経済的困窮に追い込まれ自宅プールで浸水自殺を図る。自責の念に駆られたスティーヴはそこで自分たちの素性を世間に暴露した。スティーヴの裏切りにより司法からの捜査を恐れたスティーヴ以外の3人は次なる街へと逃亡を謀る。

 

 

幸せがおカネで買えるワケのレビュー・感想

 

平均所得が10万ドルを超える高級住宅地という事で設定されているとはいえ、ジョーンズ一家のみならず近隣の豪華な邸宅が連なる風景には日本では考えられないほどの浮世離れした風情を感じます。あんな豪邸に住めるなんて羨ましい限りです。

日本で引っ越しとなると、面倒で煩わしいだけですが、輸送はもとより、家具や調度品のセッティングに至るまで全て業者にやってもらうシーンには、まさに“金があれば何でもできる”という感じですね。

確かにセールスには心理学的なところがあって、洗脳はつきものですが、自宅にお客を招き、ホームパーティをして一度に多くの商品をセールスするというビジネスモデルは、アメリカではある程度メジャーなんでしょうが、サマーがマルチ商法的なビジネスに洗脳され、成功という言葉を呪文のように唱える様子は、アメリカ発祥の某ネットワークビジネスを連想させますね。

ラリーは結局あんな悲惨な結果になってしまいましたが、成功者の“見てくれ”だけを真似ても、決して成功者にはなれないという至極単純な事を、もっと普通に知っていて欲しかったですね。

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ターミナル

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人の情や心の繊細さを見事に描いた素晴らしい映画

2004年製作  アメリカ  129分

監督

スティーヴン・スピルバーグ

キャスト

トム・ハンクス  キャサリン・ゼタ=ジョーンズ      スタンリー・トゥッチ  ゾーイ・サルダナ  クマール・パラーナ  ディエゴ・ルナ  バリー・シャバカ・ヘンリー

 

撮影ロケーション・情景

ニューヨーク 空港  jazz・ナイトクラブ

 

 

 

ターミナルのあらすじ

 

ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港での入国審査で、要注意者として入国拒否をされ足止めを食う一人の男がいた。クラコウジア人のビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)である。彼の母国クラコウジアは彼が空港を飛び立った直後に軍事クーデターが起こり、クラコウジア政府が事実上消滅してしまい彼の持っているパスポート、ビザはすべて無効となってしまっていたからである。それによりビクターは事実上無国籍者となってしまい、クラコウジアの新たな政府が国交を結ぶまでアメリカに入国する事も母国に引き返す事も出来ない状況に陥ってしまった。

ビクターは税関国境保護局主任のフランク・ディクソン (スタンリー・トゥッチ)に呼び出され、この問題が解決されるまで国際線のトランジェット用ラウンジで過ごす様ディクソンに指示された。ビクターに手渡されたのは食堂で使えるクーポン券、そして15分使えるテレホンカードに保護局職員からの呼び出しの為のポケベルだった。この日からビクターは空港内での生活を始める事になる。

ターミナルから出る事の出来ないビクターはバスローブでラウンジ内をうろついたり、トイレの洗面台を風呂代わりにするなど、なりふり構わずな生活を送っていた。ビクターを監視する保護局主任のディクソンは税関国境保護局の次期局長を狙う男で、もし空港内で問題が起きれば自分の出世に影響する事を懸念し、ビクターに敢えて警備体制の盲点を教え、彼が自ら逃亡を謀るよう嗾けた。しかし真っ正直なビクターは律儀にも空港内に留まる事を止めなかった。

最初に彼を苦しめたのは空腹である。保護局から貰ったわずかなクーポン券も底をついてしまった。ある日ビクターが腹をすかせフードコートに立ち尽くしていると、ひとりの女性が手荷物カートを返しに来た。その様子を見ていたビクターはカートを1台返却すると25セントが戻る事を知った。するとビクターはラウンジ内に散乱するあらゆるカートをかき集め、やっとの想いでハンバーガーを1つゲットした。

ある晩ビクターが改装中の建物内を歩いていると、タグ車に乗ったエンリケ・クルズ(ディエゴ・ルナ)が「話がある」とビクターに声をかけた。エンリケは入国審査官ドロレス・トーレス(ゾーイ・サルダナ)に恋心を抱いており、、彼女の情報をくれたら食事を提供するとビクターにもちかけた。ビクターは当初から入国できない理由を理解できていなかったため、何度もドロレスのもとに入国申請を出しに足を運んでいたからである。

ビクターは早速ドロレスのところに向い彼女からありとある情報を聞きだした。彼女の男性遍歴や元カレと別れた原因など、色々な情報を聞きだしエリンケに伝えた。ビクターはその見返りとしてエリンケからこっそり機内食を分け与えてもらう。

味をしめたビクターはさらに情報を聞き出そうとドロレスの所に足を運ぶが、執拗なビクターの行動に、誰の指示による“サグリ”なのか解明しようとビクターに詰め寄った。

しかし丁度そこでビクターのポケベルが突然鳴った。ビクターが急いでディクソンのいる保護局の事務所に行くと、なぜか豪華なハンバーガーがビクターのために用意されていた。しかし彼の空腹は満たされていたため食べなかった。ディクソンはビクターに「空港から出られるいい方法がある」と切り出した。祖国に戻る事を恐れる外国人は法で保護する事ができ、緊急国外退去措置の対象となって移民局裁判ができるので、その手続きをお膳立てしてやるというものだった。しかも裁判が終わるまでの間、ニューヨークへも自由に行き来できるという。しかし、あまりにも擁護を求める数が多いため、実際には法廷に呼び出されるまでに半年かかるというものだった。

そこでディクソンはビクターに「この質問に適切な回答する事ができれば今夜にでも空港から出られる」と前置きし、「母国に戻るのに恐怖心があるか?」という質問をした。ビクターがそれに「イエス」と答えれば緊急国外退去措置の対象となりビクターを空港から退去させることができるからだ。ビクターが空港から出ていきトラブルを回避できれば次期局長のイスを狙いやすいと考えたからである。しかしビクターは「ノー」と答えた。

 

 

 

ターミナルのレビュー・感想

 

物語のシチュエーションが全て空港内という設定のためか、この映画を絵面(えづら)で観ようとするとたぶんつまらなくて寝てしまうかも知れませんね。

僕がこの映画を初めて観たのがニューヨークに向かう飛行機の中で、眠さのあまり映画に集中できず、面白いとは思わなかったというのが僕の最初の印象でした。

しかしこの映画の監督はというと、あのスティーヴン・スピルバーグ様。伊達に映画を作っちゃいません。ちゃんと観れば、人の情や人間の心の繊細さを見事に描いている素晴らしい作品である事がよく解ります。以来、この映画は何度も観ました。

旅行にせよ、片言の英語のスキルしか持っていない状態で海外に行くと、自分の意図する事が全く通じず、嫌な思いをする事が多いですよね。だから英語なんてほとんど喋れないのに、それを隠そうとして虚勢を張ってしまうという経験が僕にもありましたけど、英語がまともに話せないとどうなるかという描写が上手く表現されていて「そうそう」と思わずうなずいてしまう場面が多々ありました。

ビクターが税関国境保護局の事務所で聴取されるシーンで、担当官がパスポートと航空券の提示を求めようと片手を差し出す場面で、ビクターが握手を求められたものと勘違いし、手を差し出してしまうシーンがあるのですが、英語を理解しているふりをして虚勢を張るとこういう事になるという、人の心を描くのが非常に細かいですね。

冒頭この映画を「絵面」で観てはいけないと言ったのはそういう意味なんです。

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マイレージ、マイライフ

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マイラーに人生をかける独身男のコミカルドラマ

2009年製作  アメリカ  109分

監督

ジェイソン・ライトマン

キャスト

ジョージ・クルーニー  アナ・ケンドリック ヴェラ・ファーミガ  ジェイソン・ベイトマン  メラニー・リンスキー  ダニー・マクブライド  ザック・ガリフィアナキス  J・K・シモンズ

 

撮影ロケーション・情景

解雇通告 出張  空港  自己啓発セミナー  マイラー  アメリカン航空  ネブラスカ州オマハ  ヒルトンホテル  マイアミ  デトロイト  ミルウォーキー  シカゴ

 

 

マイレージ、マイライフのあらすじ

CTC社で働くライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は1年の大半を出張で過ごし全米中を飛び回るという超多忙な独身サラリーマン。彼の仕事は企業がリストラを行う際、相手の逆上を恐れ社員の首を切れない雇用主に代わり解雇を言い渡す事である。

月に数日しか自宅に帰らない彼は「空港が我が家」と公言して憚らず、この仕事をとても気に入っていた。移動は全て会社経費でビジネスクラス。ライアンはそんな特権を利用しマイレージを貯めアメリカン航空の1000万マイルの史上最年少達成者となる事を目標にしていた。

そんなある日、出張先のダラスのホテルでくつろいでいると、彼同様のマイラーアレックス(ヴェラ・ファーミガ)が隣席に座っていた。ライアンとアレックスはマイル貯めの極意について語り合っているうちに意気投合し男女の関係になる。

それから数日後、出張中だったライアンは社長グレゴリー(ジェイソン・ベイトマン)から急遽召集をかけられる。グレゴリーはアメリカ経済が史上最悪の不況にある中、自分のビジネスに更なる拍車がかかる事を見込んで、新たなビジネスモデルを画策していた。それはコーネル大学から才女として招かれたナタリー・キーナー(アナ・ケンドリック)の発案によるもので、年間250日以上を越える出張をチャットによる遠隔解雇システムに切り替える事で、経費を85%削減するという画期的な案件であった。

これにより解雇を言い渡すためわざわざ全米を飛び回る必要がなくなり、より多くのエリアで短時間で解雇通告を行う事が可能になるというもの。航空機を使う出張の恩恵でマイレージを貯めていたライアンにとって、これはお節介な発案であった。

この遠隔解雇システムの導入を決めていた社長グレゴリーに対し、ライアンは「この仕事の現実を分かっていない」と抗議した。するとそこにナタリーがやってきた。「私のアイデアいかがです?」と意気揚々とするナタリーにライアンは「チャットで俺をクビニしてみろ」とけしかけた。ナタリーの解雇シュミレーションにライアンは理路整然と反論し、ナタリーの解雇通告を論破した。甲斐なく落ち込むナタリーに対してライアンは「心理作戦を要する解雇通告の仕事はチャットでは不可能。本当にこの仕事を分かっているのか」とナタリーに駄目出しした。

その様子を見ていた社長グレゴリーは「出張を続けたいならナタリーを連れて実地教育をしろ」とライアンに命じ、ライアンは数日後ナタリーを連れてセントルイスへと向かう。

マイレージ、マイライフのレビュー・感想

 

オープニングで出てくる全米各地の風景を写した映像が面白く、この映画のテーマを簡潔に表現している感じでとてもマッチしてますね。

マイル貯めもあれだけ徹底すれば面白いんだろうとも思うし、この映画を観てマイル貯めに走る人が増えそう。

でもマイラーに人生をかけて最後に何が残ったのかといえば、それは単に“孤独”という寂しい二文字。ライアンはマイルそのものを貯める事が目的で、貯まったマイルを自分のためにどう使おうかという楽しみ方を知らなかったのが彼の悲劇ですね(最後は妹夫婦にプレゼントしましたが)

そしてライアンは結婚や家族というものに全く価値を見いだしていなかったけれど、ライアンがクビを切ってきた人たちの背景にはいつも家族がいて、アレックスにしても自分と同じ独身主義者だと思っていたら彼女にも家族がいて、さすがのライアンもこの時ばかりは孤独という寂しさに心をヘシ折れちゃったわけです。やっぱり人間て一人では生きていけない動物なんですね。

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アンフィニッシュ・ライフ

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アメリカの大自然を満喫できる素晴らしいロケーション

2005年製作  アメリカ  104分

監督

ラッセ・ハルストレム

キャスト

ジェニファー・ロペス  ロバート・レッドフォード  モーガン・フリーマン  ジョシュ・ルーカス  ダミアン・ルイス  カムリン・マンハイム  リンダ・ボイド

 

撮影ロケーション・情景

アメリカの片田舎  ワイオミング州  trailways bus アメリカ山脈 熊 牧場 保安官

 

 

アンフィニッシュ・ライフのあらすじ

 

日頃から恋人ゲイリー(ダミアン・ルイス)からDVを受けていたジーン(ジェニファー・ロペス)はゲイリーの凶暴さに堪えきれず一人娘グリフを連れて家を飛び出した。

宛てもないまま車を走らせるジーンであったが途中エンジンが故障し車は全く動かなくなった。

 

そこに通りがかったバイクの青年の助けを借りサウスダコタ州スーフォールズまで乗せてもらう。スーフォールズで降ろされた二人は地図を広げこの先どこに行こうか悩んでいたがジーンはワイオミングへ行くことをグリフに告げた。ワイオミングは今は亡きグリフの父グリフィンの生まれ故郷であり、グリフィンの父アイナー・ギルキソン(ロバート・レッドフォード)が牧場を営んでいたからである。

 

しかしジーンはギルキソン家とは疎遠になっていてグリフには祖父アイリーの存在を知らせていなかった。牧場に着くとジーンはアイナーに「あなたの孫よ」とグリフを紹介した。しかしアイナーは「何しに来た」と言わんばかりに二人を歓迎しなかった。アイナーは愛息子グリフィンを交通事故で亡くしておりその時運転していたジーンに怒りの矛先を向けしこりを残していたからである。歓迎されていないことを分かっていたジーンであったが、お金も底をつき切羽詰まったジーンは1ヶ月だけという約束でアイナーに頼み込み牧場で暮らす事になる。

 

アイナーの家には友人ミッチ・ブラッドリー(モーガン・フリーマン)が居候として一緒に暮らしていた。ミッチは一年前アイナーの仔牛を襲っている凶暴なヒグマを追い払おうとして大怪我を負ってしまい不自由な身体になってしまっていた。ある朝アイナーからミッチのところに朝食を届けるよう頼まれたグリフはミッチの痛々しい姿に初めは直視できないほどでいたが、ミッチはやさしかったためすぐに打ち解けることが出来た。

一方アイナーは、可愛い孫娘ができたというのに息子グリフィンの死を未だにジーンのせいにし恨んでおり中々二人に心を開こうとしなかった。

 

アンフィニッシュ・ライフのレビュー・感想

 

ワイオミングの大自然の中での撮影という事もあって、とにかく映像が綺麗。周辺にはスーパーやコンビニなどはもちろん皆無で、日々の生活をするうえでは不便な場所なんでしょうが、アメリカの片田舎に憧れる私にとって移り住むとは言わないまでも一日・二日ここで暮らしてみてもいいかなぁって思ってしまうほどの素晴らしいロケーションです。

ロバート・レッドフォードもこの時80歳近い年齢ですが、さすがはアメリカ人。ジーンズ姿がよく似合い歳を感じさせません。

ロバート・レッドフォードが演じるアイナーは子供に先立たれ未練な気持ちを引きずる父親を演じますが、アイナーがレストランでウエートレスに粗暴を振るう不良たちにフォークを突きつけ「人生は一瞬で変わるぜ」と言ったセリフがアイナーの今の気持ちをうまく表現していていいセリフだなあと思いました。そしてその後、「分かったか?!」と言って若造の帽子を払い飛ばすシーンがありますが、その立ち回りが演技とは思えないほどリアルで観ていて気持ちいいです。

モーガン・フリーマンはこの映画では主役ではないけれど、なんていうか、いつも冷静に客観的な目をもって主人公を戒飭する役が多いのですが、こういう役をやらせるとやっぱりフリーマンは上手で説得力がありますね。熊にあれほどの大怪我をさせられても「本能だから仕方がない」と言わんばかりに熊をどこかで許している所が実に寛大で器が大きい。

ロバート・レッドフォードが演じるアイナーにしても息子を嫁に殺されたと思い込んでいてジーンを中々許そうとしないんですが、それでも一生懸命に自分を変えようと努力している。誰かを責める事は簡単ですが、“許す” 術を養うことも人生ではすごく大事だなあって思います。

また特典映像に「静止画集」と称した95枚の撮影風景が盛り込まれています。先述したように映像(画像)がとても綺麗でアメリカの大自然を満喫できます。

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ラスト・ムービースター

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ヘタな恋愛ドラマを観るよりも本当の愛が何かということを理解させてくれる

2017年製作  アメリカ  103分

監督

アダム・リフキン

キャスト

バート・レイノルズ  アリエル・ウィンター  ニッキー・ブロンスキー  チェビー・チェイス

 

撮影ロケーション・情景

ハリウッド メルセデスベンツ  ロサンゼルス国際空港  ナッシュビル モーテルデラックスホテル 老人ホーム  トランザム  加齢・年輪  過去恋愛の回想

 

 

ラスト・ムービースターのあらすじ

 

かつて大人気を博したハリウッドの稀代スター、ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)は昔の勢いも鳴りを潜め、ハリウッドにある大邸宅に愛犬スクワントとひっそりと暮らしていた。

ある日スクワントを獣医師の元に連れて行ったヴィックは高齢スクワントの腎臓障害を聞かされ安楽死を勧められる。長年連れ添ったスクワントとの別れは辛かったが体に毒素がたまり苦しむスクワントの事を考えると安楽死を受け入れるしかなかった。

自宅に帰りスクワントのペットクッションを見つめながら心寂しく酒を飲むヴィック。

 

それから数日たったある日、ヴィックの元に国際ナッシュビル映画祭での特別功労賞の招待状が届く。過去の受賞者としてロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、クリント・イーストウッドなど錚々たる名優たちの名前が列記されていたが、映画の街ではないナッシュビルでの開催にヴィックは胡散臭さに難色を示したが俳優仲間のソニー(チェビー・チェイス)に強く勧められ渋々ナッシュビルへ向かう事を決心する。

出発の日、空港で搭乗手続きをしようとファーストクラスのカウンターに並んでいたヴィックはカウンタ職員に隣の列に移るよう指示された。映画祭から同封されていたエアチケットはエコノミーのチケットだったのである。かつての大スターヴィックにとってエコノミーでの移動は惨めそのものだった。

ナッシュビル空港に到着し、ターミナルの出口で主催者の迎えを待っていると一台の白いリムジンが横付けされた。これで少しはデラックスな気分に浸れると期待したヴィックだったがそのリムジンは既に別のお客が乗車していて肩透かしを食らう。するとそこに1台のポンコツセダンが止まり運転席から若い女性が降りてきた。ヴィックを迎えに来たリル(アリエル・ウィンター)である。

 

彼女はインチキ映画祭主催者ダグの妹で、リルはヘソだしのショートパンツに鼻ピアスという奇抜な風貌だった。

リルはヴィックを強引に車に乗せホテルに向かうがリルの運転は非常に乱暴でハンドルを握りながらケータイでメールを打ち対向車と衝突しそうになる。かつて数々のカーチェイスを演じてきたヴィックでもさすがに気が気ではなかった。やっとの思いでヴィックはホテルに着いたが一流ホテルを用意すると聞かされていたヴィックは目を疑った。そこはハイウエイ沿いにある一流ホテルとはかけ離れたしがないしがないモーテルだった。騙された事を確信したヴィックは「話が違う。すぐ空港に引き返せ」とリルに詰め寄るが「私は運転手を頼まれただけ」と取り合おうとしない。

散々な思いをしたヴィックは友人ソニーに電話をかけ愚痴をこぼすがソニーからは「せっかくの映画祭だ。デ・ニーロやイーストウッドのように楽しんで来い」といわれそのまま居残る事にした。疑心暗鬼のままリルに連れられ映画祭会場に着くとそこは“マクドゥーガルズ”というバーだった。中には“ようこそヴィック・エドワーズ”という垂れ幕が下がっており主催者ダグらはヴィックを歓迎したが、ここは案じたとおり映画祭とは名ばかりの単なるヴィックのファンクラブの集まりであった。

 

しかしヴィックはいかさまの映画祭とは分っていながらも自分をファンだといって讃えてくれる若者たちに精いっぱいの愛想を振りまき次第に彼らちと打ち解けていく。

 

 

ラスト・ムービースターのレビュー・感想

 

バート・レイノルズ最後の主演作品

「ラスト・ムービースター」というタイトルのとおり、この映画収録の約1年後にバート・レイノルズは亡くなってしまいました。渾身の力で演じきった彼の最後の主演作品なので非常に感慨深いものを感じます。このストーリーはかつての大スターが紆余曲折しながら人生を歩んできた彼自身のセルフパロディとして描かれています。

僕自身、バート・レイノルズといえば真っ先に浮かぶのが「トランザム7000VS激突パトカー軍団」や「キャノンボール」などのカーアクション。本編の中でヴィックがリルにノックスビルに向かわせようと無理強いし、キレたリルが過激にハンドル操作をするシーンがあるのですが、リルの顔が突然「トランザム7000・・」のバンディットの顔に切り替わり荒々しい運転をするバンディットにヴィックがスピードを落とすよう窘める場面があるんですが、このカットを作ってくれた事が凄くうれしいというか懐かしくなっちゃいます。(同じ人物でもこんなに変わってしまうものかと)・・・

 

またヴィックがリルを連れ一流ホテルに泊まろうとしたときフロントの女性にシビアな対応され「クリント・イーストウッドが来ても追い返すのか?」と言い返すシーンがあるのですが「クリント・イーストウッド」を引合いにだしたセリフが別のシーンでも何度か出てくるのでイーストウッドを結構意識していたんでしょうか。

 

愛が何かということを理解させてくれる作品

終盤、ヴィックが別れた妻シュルマンを訪ね、彼女を大切にしなかったことや、家庭を顧みず壊してしまった傲慢さを詫びる場面があるのですが、この時のヴィックの姿がすごく自然で、ヘタな恋愛ドラマを観るよりも愛が何かということを理解させてくれるし、遥かにピュアで美しいですよ。凄く清らかな気持ちで観終える事のできる作品です。バート・レイノルズよ安らかに~

 

 

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