ハドソン川の奇跡

コンピューター頭脳VSサリー機長の経験知

2016年製作  アメリカ  96分

監督

クリント・イーストウッド

キャスト

トム・ハンクス アーロン・エッカート ローラ・リニー マイク・オマリー

撮影ロケーション・情景

ニューヨークマンハッタン ハドソン川 USエアウェイズ 航空機事故 国家運輸安全委員会

ハドソン川の奇跡のあらすじ

とあるホテルの一室で悪夢にうなされ目を覚ます男がいた。その男はアメリカ合衆国の航空会社USエアウェイズの機長チェスリー・サレンバーガー(通称サリー)(トム・ハンクス)であった。

彼が見たその夢とは自身の操縦する航空機がコントロールを失い、マンハッタンの街中に墜落してしまうという恐ろしい夢だった。彼がなぜこんな夢を見たのかというと、遡る事数日前の2009 年1月15日USエアウェイズ1549便を操縦していたサリーと副操縦士のジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカート)はニューヨークのマンハッタン上空でバードストライクに遭い全エンジン停止という非常事態に見舞われた。

必死に機体の立て直しをするサリーとスカイルズだったが上手くいかず、苦渋の決断を迫られたサリーは機体をハドソン川に不時着水させた。その結果、幸いにも一人の犠牲者を出すこともなく乗組員全員を無事救助させる事に成功した。後にこの奇跡的な出来事は「ハドソン川の奇跡」として全世界に伝えられ、機長サリーと副操縦士スカイルズたちはたちまち国民的英雄と称えられた。

しかし、一方では国家運輸安全委員会 (NTSB)が不時着水ではなく「墜落」とい観点で事故調査を行っており「ラガーディァ空港に引き返す」と交信していたサリーらに対し、なぜハドソン川に不時着水させたのか、空港へ引き返し着陸させる事は可能だったはずとの見解を示し彼らを厳しく追及していた。不時着水の決断を行った機長サリーは自身の下した判断の葛藤に苦しみ、夢に魘されるほど精神的に追い詰められていたからである。

サリーとスカイルズは事故調査が済むまでホテルでの待機を命じられ、家族と会う事も許されなかった。そして国家運輸安全委員会がこの「事故」の検証を行ってきた終盤、サリーとスカイルズは公聴会によばれコンピューターと操縦士両方によるシュミレーションが行われた。

結果、どちらのシュミレーションでもラガーディア空港・テターボロ空港のどちらの空港にも無事に着陸できることが証明され、ハドソン川に不時着水させるというリスクを冒す必要はなかったと結論付けられてしまう。ところがサリーはこのシュミレーションに対しある重要な点が見落とされていると指摘。それは「人間心理がもたらす人的要因が考慮されていない」という点であった。まさに経験豊富なベテランパイロットならではの目のつけ所である。

それによりシミュレーションは仕切り直しされ、今度は人的要因を加味したシュミレーションがおこなわれた。その結果、国家運輸安全委員たちの度肝を抜く恐ろしい結果が示された。

ハドソン川の奇跡のレビュー・感想

コンピューター頭脳VSサリー機長の経験知

この映画の観どころはやはり国家運輸安全委員会による公聴会の席上で、コンピューターシュミレーションに理路整然と立ち向かうサリー機長の姿でしょう。

社会人として働いていれば時には失敗やしくじりを起こし、大打撃を被ることがあります。クライアントからのクレームも然りです。しかしその失敗がなぜ起きたのか、同じ過ちを二度と繰り返さないようにするにはどうすればいいのか、その都度検証や議論がなされ改善が図られていくわけですが、特にこの航空業界の場合、機関による事故調査の進め方は非常に科学的で他の産業のそれとは一線を画しているように強く感じます。まあ、それくらいはやってもらわないと些細なミスひとつで多くの人命を一瞬で奪う事になるわけですから当たり前といえば当たり前なのでしょうが。

近年はあらゆる面でコンピューターを使い、答えを出させ、物事を解決しようとする風潮が強いですが、コンピューターに情報を促すのはあくまでも「人」です。(基本的に)

データが間違っていたり、それに不足が生じたりすればコンピューターとて正しい答えを見いだしてはくれないという事をこの映画は教えてくれます。

それにしてもあの状況の中、沈着冷静な対応と、高大な判断を下したサリー機長の頭脳と経験知には只々頭が下がります。何にしろ、これが作り話ではなく実際にあった実話なのですから。

また、この手の実話映画では、本編最後に主人公当人の映像がよく描写されたりしますが、この映画もご多分に漏れず、チェスリー・サレンバーガー機長(サリー)が最後に登場します。それを見た瞬間、「貴方か!こんな凄い事をやったのは!」と思わず叫びたくなりましたね。

またこの映画の監督がクリント・イーストウッドなんですが、この監督、人の感情や気持ちを視覚化する描写テクニックはいつもながら上手いですね。

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